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弾ける曲
それでも、鍵盤楽器をやっていた者の性だろうか?
『ドレミファソラシド』
と、音を立ててしまう
『…同じだ…、音も狂っていない…』
と、ほんの少しだけ感慨に耽る
「…エベス様!奏でる事ができるのですね?」
レッドは、ウルウルと見つめる
「いえ、弾けないですよ?」
と、エベスは普通に答える
「しかし!この様な物があった時!
一音の音を出してみるか、或いは、興味なさげに『これは、何だろう?』
と、思うのが普通ではないですか?」
『あぁ、失敗したかも』
と、エベスは思ったが
所詮、日本の歌謡曲を好んで弾いた奴であったと
ヤケクソになって、その当時でもドン引きされた曲を弾いてみる事にした
『うろ覚えだし、失敗する可能性が高いから
どうでもいいやー』
と、弾いた曲は…
コミックバンドなのか、アイドルなのか?
よく分からないグループが歌っていたもので、
エベスは、それしか弾けなかった
それだけである
『あのまま、此方に来る事がなければ、
座布団運んでたのを観てたんだよな、このグループの人…』
と、かつていた国の休日を思い出しながら、
とある曲を弾く、エベスであった




