毒を食らわば皿まで
ダリウスは、ハリーくんに抱えられて退場
少し休ませるそうだ
ハゲαβは、隅の方で怯えていらっしゃる
フローレンスさんは
「座ってくださいね」
と、目の笑っていない笑顔で、以前髪を切った椅子に誘なう
「はい」
大人しく従います
「では、少しだけ手の内をお見せしましょう」
フローレンスさんは鬘屋の主人に目を向け、頷きあう
大切なノウハウの一端を、この場にいる人を納得させる為に見せてくれるというのだ
誰のせいだ?…私だ…
「魔力暴走は皆様もご存知のことと思いますが、要は体内の魔力を落ち着かせる事が大切です」
フローレンスさんは、優しく私の髪をブラシで梳かしながら話す
「魔力を落ち着かせつつ、このように髪に養分を行き渡らせ…」
『おぉ〜』と、地鳴りのようなため息が漏れる
男どもか?何に感動している?
「ベス様、見ますか?」
見せてくれた髪は、『明るめのピンクアッシュで、シリコン塗れか!って感じの艶々した髪』!
これで作った鬘で、愛されオヤジ誕生の予感?そんなわけない?
「こ、これは何と?」
怯えていたはずの、ハゲαβが近寄ってくる
「美しい」
それはどうも
でも、怖くて触れないみたいである
「フローレンスさん」
「何でしょう」
「お客様が、サンプルをお待ちです」
フローレンスさんは、にっこりと笑い
「少々お待ち願えますか?」
と、αβに告げた
「これも又、特殊な技法で作られたハサミです」
フローレンスさんは、ハサミの切先を突きつけるかのように見せる
αβだけではなく、フェルト様にも、ハリーくんにも
そして、その場にいた人たちにも
(って、護衛隊?数学教えてる子たち?罪人の見張り?)
ふわっと何かの柔らかい力を感じて
耳元で、フローレンスさんの
『声を上げないように』
という言葉を聞きながら、髪が切られる音がする
『…シャラン…』
とても、心地よい音だ
一筋の髪を指に挟んだフローレンスさんは
「これで、一応の処理はできております
あくまで、簡易的なものですが」
「おぉ、何と…」
βどうした?
「見事な手際だ」
αもどうした?何があった?
「フェルト殿、王宮に報告しても構わないのだな?」
何が起きてる?
「此方からも報告を上げますので、ご自由に」
嫌な顔だな、フェルト様
「ただ、公になると…お分かりでしょう?」
『人の口にとは立てられない』
という事を、今すごく感じる
ならば
「えっと、初回特権とかいう優先権?とか、人体実験とか?
そういう感じでは…ダメでしょうかね?」
と、私は発言した
固まるのかそこで?人体実験は失言だけど
何その顔?




