君子危うきに近寄らず
「フローレンス様何を想像されているのです」
ハリーくん目が座ってる
「いえ、何でもございません」
フローレンスさんも好戦的だ『喧嘩上等、いてまうぞコラ』だ
「何をもめておる」
呆れ顔のフェルト様と、仕事が進まないのを気にした鬘屋の主人がやって来た
ハリーくんもフローレンスさんも、途端に神妙な顔になる
「フローレンスさんとの契約のお話が、ご本人からありましたが、
私自身の無知ゆえ困惑しています
それゆえ、おふたりは、それぞれのお立場から助言をしてくれているのです」
言いたい事伝わってるな?
「なるほど…」
鬘屋の主人が答える
「そうか…、確かに今のままでは、色々と問題が起こりそうだ」
フェルト様も、色々とお考えがありそうだ、良からぬお考えかもしれんけど
「それでは、契約の話は一旦保留して
フローレンスを、エベス様の髪を整える担当として、しばらくお側に置くというのではいかがでしょうか?」
「なるほど…、では、王室の方には私が便宜を図ろう
エベスの態度によっては、更なる措置は考えられていた
逆もまた然りだ」
これもまた、勿体ぶっていますが、あれですよね
態度が悪ければ、修道院?極刑?のコースで
まあまあ使えそうなら、もうちょっとマシな扱いも考えてやるよ、
という事でしょう
「いつもの口調はどうしたのだ?」
いつの間にか、間合いを詰めて絡んでくるのはダリウス
「何の事でしょう?」
うんざりして答える
「男に媚びて、自分は無関係だと泣き縋ったりはしないのか?」
はー、そうですか、クソピンクの所業の事ね?
「いや、かつてのクソピンクが
『私は〜何も知らないのにぃ〜、おふたりがぁ〜揉めてぇ』とか何とか、抜かしてましたか?」
勘に触る女の子の口調を、適当に真似たら、ダリウスの勘にも触ったみたいだ
「そう!それだ!やはりお前はー」
「話を聞けー!」
髪を掴んでブン!っと振ったら、なんか飛んでったぞ?
チュドーン!
「く、見切れなかった、だと?」
被害甚大、何が起こった?
髪をブンと振ったら、ギュンと伸びて、チュドーン!
ダリウスにチュドーン?
「うわ、大丈夫?…ですか?ダリウス…様?」
驚きのあまり、しどろもどろ
「…言ってる先から問題発生か?」
と、フェルト様
「あぁ、もうこうなる前に、契約を…」
と、フローレンスさん
「契約の話は、一旦保留でしょう?」
ハリーくん、今その話じゃない
でも、今のは…
「ダリウス、煽ったお前が悪い」
フェルト様が言う
皆頷く
よく分からない人たちも、本日2度目の惨事に頷くしかなかった
『触らぬ髪に祟りなし』?
いや、鬘作りたいので、触って頂きたい




