流れてやるさ
外に出ると、郊外?自然豊かな景色の中に年代物の立派な建物がある
いかにも、幽閉されそうな離宮?
でも、平民になるのだから、これは多分ここで身包み引っぺがされて
ドレスから平民服へとお色直し?違うな、衣替え?衣装替え?
で、指示している厳つい西洋人風兄さんは、よく見ると育ちが良さそうで、どうやら騎士?そこそこ責任ある立場の人?『ところで、君は何されてる人?』とかこのタイミングで口にしたら、無礼打ち?
あと数人、そこそこ武装というか剣とか持った人がいた
この世界の職業なんて、一切分からん、見分けがつかんが
廃嫡だものな、見張られるさ
「中に入れ」
王子、廃嫡王子どこに行った?
ああ、いたいた
馬車から降りてきた
絵に描いたように、ぐすぐす、とぼとぼ歩いてくる
子どもの頃、やんちゃな年下の従兄弟が叱られて泣いていたのを思い出して手を繋いでみる
キュって握り返してきた
そうそう、あの時もこんな感じ、へそ曲がりでヘタレな奴ってこんな感じ
あれれ?周りがちょっと息をのむ感じがする…そうか、意外か
というより不作法か
「ここで待っていろ」
さてと、夢から覚めるにはまだ時間があるってかと、この時は思っていたのだが
違ったようだ
どこでどうなったのか、巻き込まれたようだ
まさか、元々の諸悪の根源は『後はよろしく、テヘペロ』って逃げたか?(このど畜○…ピー)
いやいや、確たる証拠もなく暴言吐いたらいかんぞ私
あまりの展開に、精神がついていかない
いきなり自分の精神的なものを、別の人の体に入れられるなんて
何だその悪魔の所業
誰だこんなことした奴
ちょっと冷静に考えると
このピカピカピンク頭の女の子の心当たりは、
姪っ子が読んでいた悪役令嬢が大逆転して、ヒロインザマァ的な小説があるという事くらいしか知らない
それが乙女ゲームの世界で、とか言われてもそんなゲームはやったことがない
あれか?あんまり動かないアニメみたいなCMで流れてた『俺の物になれよ』壁ドン?
一回膝を使って低く沈んでから、アッパー喰らわすぞ
「ねぇ…」
『ねぇ?ねぇ…』いかん、歌を口ずさみそうになる
「ねえ、エリザベス」
「エ、エリザベス⁉︎」声が裏返った、
エリザベスカラー(猫用)くらいしか思いつかないエリザ
あ、ビビらせてしまった、まずい
「君まで、君まで私をバカにするのか
さっきは、優しく手を差し伸べてくれたのに…」
泣きそうだ、廃嫡王子が泣きそう…いや、ずっと泣いてたが、わーんって泣きそうだ
あらあら、まあまあって奴だ
ああ、不憫だ
あなたの大好きな女の子は、今や中身が別物
面倒だ、頭撫でておこう
「よしよし」
廃嫡王子は目を見開いた
「あ、あ、あ、」
「はいはい、どうしたの?」
「あ、…うわぁーん!」
やっぱり泣いたか
号泣か
落ち着くまでしばらく泣かせとくか