けがなくて よかったね
鬘屋の主人は、いつものように助手2人を連れてやって来た
さて、サクサクことを進めたいところだが、そうもいかない状況である
なぜなら、コイツらがやって来たから
数時間前、勉学に励む部屋にフェルト様とやって来たのは、ハゲ2人
王宮からの使者であった
鬘の届く日にハゲ2人
目的はなんだろう?
皆、言葉もなく頷く
言うまでもない感じ
「これは、ヘンリー殿、いかがお過ごしですか?お元気そうですねえ」
これはこれは、嫌味ですか?お暇なのですね
『何しに来たんじゃ、ハゲ!分かっとるわ、鬘に用事か?』
とは思っていても言わない
それどころか、無の顔をしてやる
「えぇ、こちらでの暮らしは学ぶことが多く、励みになります」
ハリーくん、わざと?わざとハゲって言った?
朱に交われば赤くなっちゃう?悪影響受けてる?
赤くなったのはハゲの方だって?気にし過ぎだよ、気にするからハゲるんだよ?
「いや、それならば良い」
ハゲαは小太りで背が低めだ、ちょっと可愛い顔をしている
そのαがニコニコして答えた
『こういう人の良さそうなのが腹黒だと厄介だー』
「それより、何か良からぬ事を企んでいるのではないか?」
ハゲβは、うわー酷薄そうな顔!痩せ型で神経質そうな顔
色々考え過ぎて、胃の痛みとともに髪が抜け落ちそう
『胃酸が毛根溶かしてるの?お気の毒…』
そんなわけない
私の第一印象はどうでも良い
「良からぬ事ではありませんよ?きちんと勉学に励んでおります」
ハリーくん、ハゲかぶせてる
被せるのは鬘よ!お得意様になるかもしれないじゃない
「まあまあ…腹の探り合いは、ここ迄にして」
とハゲαが間に入る
「単刀直入に言おう
鬘を作っているそうだな?」
「はい、そうです」
答えたのはフェルト様だ
「エベスが…この女性の願いにより、彼女の切った髪を鬘にする事になりました」
ハゲα、βが私の顔をまじまじと見る
「誰かと思ったら、罪人らしくやっているではないか?」
ハゲβが、ニンマリと笑う
「随分、短く切られたものだな
大人しくしているということは、贖罪の意識はあるのだな」
ハゲαは、驚きの目を向けた
あぁ、うるさい
フェルト様が
「いえ、これはエベスが、自ら望んでやった事で…」
「ほぉ、早くもフェルト殿を陥落させたとは、見事な腕前…」
と、ハゲα(何感心してんねん)
「手段は選ばぬということか…何とも、はしたない女よのう」
と言ったのは、ハゲβ
何かこう、イライラしてくる
イライラしてくると、腹の底にじわっと
胃酸過多で、胃と十二指腸が溶け始めるような嫌な感じ
それが、何かの回路と繋がって…
「やかましいわー‼︎」
ドカーン!
α、βは腰を抜かし
フェルト様とハリーくんは、何とか踏み止まり
その場にいた者は対ショック体制を取っていた
「あら、すみません」
一瞬の変わり身で微笑む
「お怪我は、ございませんか?」
α、βは
「い、い、いや
だ、だ、大丈夫だ」
と、何とか答え
フェルト様とハリーくんは、私の頭上を指差して、困惑している
「何か?」
「ベス、魔力暴走だと思うけど…その髪は?」
えっ?
頭に手をやると、髪が伸びてる
上に…?
『えっ?何?これって、○ンさん?』
窓に映る姿
怒髪天をつく自分の髪は
ピンクの○ンさんになっていた
(注:髪だけ)