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ブル・ケルベロス
真ん中の首が、近づいて来るエベスを警戒して
『王!攻撃の許可を!』
と、指示をこう
しかし、王は
『待て!』
と返す
『えっ?でも、このままでは…』
(懐に入られる…)
と、いう警戒を解かず、王の指示を待つ
敵は懐に入り、
『我らの首を、一度に狩ろうとするのか?』
と、思った刹那
『撫で撫で…?だと』
真ん中の首は、自分の頭が撫でられている事に気づく
『⁉︎』
右の首は、敵が背中を撫でている事に気付き
その困惑に後退りしている現実に唖然とする
左の首は…
元から期待はしていなかったのだが
『ほ、頬ずりされてるだとー!』
最早、信じられるのは我が身のみ
この、無防備な首!
食らい付き、武功を挙げようと決心したその時…
真ん中の首は、戦意を喪失した
王から
『ど、どうしたのだ?』
という、声が聞こえる
真ん中の首は
『…泣いています』
と、力なく答えた
『えっ⁉︎」
という、王からの問いかけに
答える言葉がない
敵として対峙した娘が
泣いている
まるで、離れ離れになった
親兄弟と再会したかのように…




