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言い分はある
「はじめ…」
という刹那だった
鷹揚に構えた、王子のその間から
彼の身は消えた
それは、誰の目にも分からなかったので
彼が
「…と〜つ、ふた〜…」
と数えているのだと、気が付いた時には
彼は、王子の背後にいて
王子の刀を持ちつつ…逆手に持った木刀を、
王子の心臓の前に突きつけていた
『えっ?』
と、王子は言葉を漏らしたかったのだろうが、
それも又、今、出せる『フえっ』みたいな息になっていた
その音が、どういう意味か分かる人は
この中でも、
彼によって痛い思いをした者だけだった




