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1より習い10を知り 10よりかえるもとのその1

ダリウスくん…真面目なんだね

黙り込むダリウスは、きっとあれだ

自分の正義と、今起きている事との折り合いがつかないんだろう

正義なんてものはとてもふわっとしてて、自分の中にも存在すれば誰かの中にも存在して

それが必ずしも同じ方向を向いていなくて、

例えば、大切な人を守ろうとして戦っても、敵だと信じて戦ってる相手も、等しく大切な人を守ろうとして戦っていたりする

自分の正義を貫くのは結構だけれど、その為に相手に悪役を任せようとしてもなぁ…

願望や空想の中だけなら可能だろうけれど、相手も自分の正義で手一杯だから、そんな都合よく付き合ってはくれないと思うぞ

私は断る


ダリウスは考え込んでいる

若さゆえ?馬鹿さゆえ?…下手の考え休むに似たり?

それでも、考えるよなぁ…ゆっくり考えてくれ、1人でね



そんな事より、次に考えるのは寝る所

シュラフがあれば何とかなるのだけれど、


「フェルト様」

「何だ?」

「寝る場所に関しては、どうお考えですか?」 

と、尋ねる

「好きに寝ろ、という事になっていたのだが…お前はどうしたい?

希望があれば、言ってみてもいいぞ…?」

「私としては、とりあえず寝袋みたいな物があれば嬉しいのですが、どうなってます?」

「寝室が必要か?」

いや、そんな事は言ってないが、これはフェルトさんが仕事モードですな

待遇的な奴

「寝室か〜…あるに越した事はありませんが…個室となると、想像してしまうのが牢屋なんですよねー…独房?

私は少し、お仕事の続きをしたいと思っているのですが…」

「お前に仕事を与えた覚えはないぞ」

「私は、フェルト様の指示に従い、数式を教えましたし、課題を出しました

そして、これはフェルト様の指示ではありませんが、出した限りは解説をしたいと思います」

フェルトさんは、ニヤリと笑う

「言い訳はいいが、それではここで見せてみよ」

…『みよ』?フェルト様、地位的に高い人?

どうでもいいので、話をすすめる

「では…、どなたがよろしいですか?」

なぜ、そこで尻込む?ダリウス

なるほど、『今考え中です』か?他の事をな!

「フェルト様、お選びください」 


「私を、私の解答を!」

飛び出して来たのは、ハンスくん

そうだった!ハンスくん、あなたの解答を見ると約束してたね


『お前!やめろよ』

『そうだよ!恥をかくだけだ』

小さな声が聞こえてきたけど、無視

数式間違える事なんて恥じゃない

同じ所を何度も間違えて『テヘペロ』みたいな顔されたら、テコ入れは必要

その時はやる!

 

「よろしいでしょうか?フェルト様」

「いいだろう」

では、ハンスくんの解答を見る


『こ、これは』

興味深い解答だ

計算はできないわけではない

ちょこちょこ間違えているけれど、頑張りは伝わる

でも…

「何で中間式書かないの?」

「はい、計算するのは頭だから、書かなくて良いと言われました」

「誰に?誰だそんなこと言う奴は?」

ハンスくんの言葉に、心の声が漏れる、ダダ漏れ


「いや、書こうよ?

そこまで信用してはダメだよ、自分の頭

私は信用しない、だから書く」

そして、顔を背けた奴ら、お前たちだよ

「えーと、あなた方の解答も見せて頂けると助かるのですが…?」


『な、何と…』

嫌々ながら見せてくれた解答に、厄介な案件を発見…

計算は頑張っている、それは分かる、褒めてあげたい、嫌がるだろうけど

ただ、

「この計算とここ、どうして間違えたか、自覚はありますか?」

「そ、それは…ちょっと勘違いをしていただけだ…」

と、名前が分からないので、Aくんは言った

ほお、そうかね

「単なる推測ですが、勘違いは勘違いかもしれません

もしかして、自分で1と書いた数字を7と読んで、そのまま突き進んでいませんか?」

Aくん、

「そんな馬鹿な」

と言いながら、自分の解答を見直す

「…あっ…」

気がついた?

「ここも、そうではありませんか?1なのに7として計算してる可能性が高いですよ

7として計算したら…この答えになりますよね?」

「本当だ…」

Aくん、無意識だね

「これ、癖になっている可能性があります

癖は厄介ですよ、分かる分からないではなくて、自分で自分にトラップを仕掛けて突っ込んで行くわけですから…自覚しないと」

Aくん、やめてよ涙目

「能力があるのに、正答にたどり着けないのはとても、もったいない

悔しいのは自分ですよ、他人と比べて安心する話ではありません」

Aくんは

「…はい…」

と、小さく答えた、可愛い









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