校舎の白蛇
「ねぇ!わかなー!」
バタバタという足音と共に、ショートカットで飴玉のようにまんまるな目をしたサアヤが此方へ近づいてきた。
「ちょっと、聞いて!また校舎に出たんだって!」
大きな目をさらに大きくさせて興奮気味な彼女は言った。
「え、何?幽霊でもでた?」と私は思ってもないことを口にした。
「もーー、違うよ!まっっっしろなヘビ!探しに行こうよ!」
はぁ、とため息が出た。サアヤは大のヘビ好き。しかも最近珍しい白蛇が出たという情報が出回っていて異様にテンションが高い。
「でもさ、毒持ってるかもだし…」
と言いかけた私の手を引っ張ってサアヤは教室を後にした。本当にヘビの事となると周りが見えなくなる。
「あーー!!居た!!」
サアヤが指差した先に見覚えのある雪よりも白く神々しい白蛇が目に入った。
これはまずい。
「…アト…ンテルラ…」
と小声で言った。その瞬間に世界から音が消え時が止まった。
「……っちょっと!こっちに来ちゃダメってあれほど言ったでしょう?テオ。」
そう言うと美しい白蛇は姿を変え、見目麗しい男性へと変身を遂げた。
「やぁ、レーラ。だってもうすぐ約束の日だよ。僕はその為の準備をしてるんだ。」
はぁ、また始まったよ。
「だから私はレーラじゃないし、その昔から言ってるおとぎ話はもう聞き飽きたの!」
「とにかく、サアヤはテオを捕らえようとしてるから直ぐにここから離れてよね。」
「…わかったよ。じゃあまた後で、レーラ。」
テオはまた白蛇に戻りどこかへ消えていった。
「ルトゥーンテルダ!」
そう言い、また時は動き出した。
「あれええ?白蛇が居なくなったあああ」
と叫ぶサアヤに、
「よしよし、きっとまた見つかるよ!」
と頭をポンポンと叩いて慰めた。