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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

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帰路にたって(※)

とりあえずメリを連れて、皆はアジトに戻ることにした。アシードに呼ばれて一人待機していたアンジェリーナは皆のところに駆けつけた。

目の見えないジーマ、立ち上がれないヒズミにメリ、まだ杖がないと立てないシエナを支えながら、全員はアンジェリーナに乗り込んだ。


上空から、壊滅したウォールベルトを見下ろす。


残っていたシャドウ、異常動物たちは皆、瓦礫の下だろうな…。

その国は、跡形もなく、崩れ去っていた。


アグはメリを抱えていた。


「で、誰なんだよその女は」


レインがアグに近づいた。


「メリです…」

「メリって…敵のシャドウじゃねえのかよ」

「そうです……」


すると、ジーマが声をかける。


「レイン。落ち着いて。話はアジトについてからでいい」

「わかったよ…」


レインはアグに小声で言った。


「思い出したのか?」


アグは小さく頷いた。


「それにしても、皆よく生きておったのう!」

「ほんと奇跡的だぜ。この傷でよ…。まあこれも、ベルのおかげ…」

「皆、ごめんなさい!」 


突然、ベルが頭を下げた。膝を曲げて、深く土下座をする。


「私…私……本当はここにいる資格なんて……」

「おい、ベル? どうした?」


何も知らないレインたちは不思議そうに彼女を見る。


「私なんです…皆さんの情報をウォールベルトに流したのは」


皆は驚いて、彼女を見た。

ヌゥはベルの元に駆け寄った。


「ベルちゃんを責めないで! ベルちゃんは奴らに命令されて、仕方なくやったんだ…!」

「ベル、お前……」

「ウソでしょ…ベル……」


ベルは頭を上げた。


「ごめんなさい。皆を、裏切って…。死んで、償います」


すると、ベルはアンジェリーナから飛び降りた。


「ベル!」


皆……ごめんなさい……


ベルは涙しながら、皆のことを見たまま、背中から落ちていく。


「ベルちゃん!!」


ヌゥは無我夢中で飛び降りた。


「ヌゥ!!」


アグは空に落ちた彼を見て叫んだ。

皆も彼の名前を呼びながら、アンジェリーナから下を見下ろす。

ヌゥは手を伸ばすと、ベルの腕を掴んで、身体を引き寄せた。


「ぬ、ヌゥさん…なんで……」


ベルはヌゥのことを見ながら呟いた。

駄目…もう…死んでしまう…!


アシードは叫ぶ。


「おい!アンジェリーナ! 二人を助けるんだ!」

「グワグワっ!!」

「皆アンジェリーナに捕まるのだ!」


アンジェリーナは二人めがけて急降下した。


「駄目だ! 間に合わねえ!」

「土の柱で受けられませんか?!」

「この速度でぶつかったら死んでしまう」

「そんな…!」


ベーラはロープを創造し、放出した。


「ヌゥ! 掴まれ!!」


ヌゥはベルを抱いたまま、ベーラのロープを掴んだ。


「動けるやつは引っ張れ!」

「おっしゃあ!!!」

「うおおおお!!!!!」


(くっそ! あと少しなのに!)


もう少しで地面に衝突するという時、アグの落とした風爆弾の爆風で身体が浮かんだ。


「うっ!」

「よっしゃ! 耐えたぞ!」

「皆、引っ張るのだぁぁ!」


何とか衝突を免れ、二人は引き上げられた。


「何やってんだよ!」

「ご、ごめんなさい…」


レインに怒鳴られ、ベルはびくっとしながら謝った。


「ほんま無事でよかったで…」

「ヌゥ、お前も無茶して…」

「いいじゃん。助かったんだから…」

「よくねえっつーの!」

「ヌゥさんは悪くないんです…私が全部…悪いんです…」


泣いているベルを見て、皆口をつぐんだ。


「皆……ベルちゃんを責めないで……」

「最初から誰も責めてねえよ…」

「なんや事情があるんやろ…?」


シエナはベルに近づくと、彼女の頬を引っぱたいた。


「ちょ、シエナ…!」

「あんたのせいで皆が…酷い目にあったんだとしたら…私は許さないわよ! でもね! あんたは皆を助けたじゃない! ジーマさんも、ヒズミも、そこのメリって子も、あんたがいなかったら死んでいたのよ! 他の皆だってそう! 何度もあんたが助けてくれたじゃない!」

「シエナさん……」

「私たちにはあんたが必要なのよ! わかるでしょ?! 死ぬなんて許さないわよ! 裏切ったことを悪いと思うなら、あんたが死ぬまで、これからもずっと、私達を助け続けなさいよ!」


シエナはベルを抱きしめた。


「もうこんなこと…しないでよ…」

「ご……ごめんなさい……」


ベルは泣きながら、シエナにもたれかかった。


(ありがとう…シエナさん…)


シエナはベルを支えながら、アンジェリーナの端の方に行って、ベルの背中をとんとんとたたいていた。


(なんだ…友達…いるじゃんか……。ベル…無事で良かった…)


アグもその様子を見て、ほっと息をついた。


「…皆、話したいこともたくさんあるだろうけど、アジトについて、落ち着いてから話そう」


ジーマが言うと、皆は頷いた。

各々好きな場所に座って、空の旅を続けた。


「お前も、少しでも楽にしてろ。致命傷なんだから」


ベーラはジーマの隣に座ると、ぼそっと言った。


「うん、ありがとう。ベーラは? 大丈夫なの?」

「私は術を使いすぎただけだ。傷は浅い。腹は減ってるけどな」

「そう。ならよかった。アジトについたら好きなだけ食べなよ」

「無論、そのつもりだ」


ベーラはシエナとベルを見ながら、言った。


「あの子は……いい子だね」

「うん…。ベルも誰かに叱ってもらわないと、辛かっただろうしね…。本当は僕がやらなきゃいけなかったんだけどな…。シエナに助けられたよ」

「ふ…。お前があの子を好きになるのも、よくわかるよ」

「はは……そう?」

「ああ。私もたまに、思うことがあるよ。あの子みたいになれたらって」

「え? 君が…? どうして?」

「さあ。どうしてだろうね」


ベーラは目の見えない彼を見ながら、少し笑った。


「ベーラはベーラのままで、いいじゃないか」

「ふふ…まあそれでもいいよ」


ベーラは立ち上がって、目を閉じた。

風を身体に感じる。


気持ちいいなぁ…。


わかっている。私はあの子みたいにはなれない。

だから私は、私にできることをしよう。


私にしかできないことで、皆を守るよ。



レインはハルクの隣に座って、彼に話しかけた。


「お前、大丈夫だったか。聞いたぜ。薬の作り方吐かせようと、拷問されたってよ…」

「私は大丈夫ですよ。他の皆さんのケガに比べれば」

「言えばよかったじゃねえかよ。そんな目に合うくらいならさ」

「言えませんよ…。あれは皆を守るための切り札ですから…」

「はぁ…皆あったまおかしいよ。なんでそんなボロボロになってんの」


ハルクはクスッと笑った。


「そんなの、決まってるじゃないですか。部隊の仲間のことが、大好きだからですよ」


レインはきょとんとしてハルクを見た。


「はっ…お前の口からとうとうそんな言葉がでるとはな」

「…いけませんか?」

「べっつに…いいんじゃね」


まあ、あなたのおかげですけどね。

こんな気持ちに、なれたのも…。



アグは、メリをそっとアンジェリーナの上に横にすると、ヒズミのところへ行った。

ヒズミは横になっていたが、アグを見ると、起き上がった。


「ああ、いいですよ。そのまま横になってて…」

「もう起きてもたわ。何やの」

「その…お礼が言いたくて。かばってくれて、ありがとうございました……」

「別にあんたのためやない。ヌゥに頼まれたから、守っただけや」


アグは彼の隣に座った。


「それでも…ありがとうございます…」

「はいはい。もうええって」

「…何でヌゥとケンカしてたんですか?」

「はぁ?!」

「あいつ出発前からずっと気にしてたんですよ。ヒズミさんに何かしたんじゃないかって…。あいつヘラヘラしてるようで、そういうのに敏感なんですよ」

「別にケンカなんかしてへんし! 大体なぁ、やめえそういう、ヌゥのこと俺が一番よく知ってるんです〜みたいなやつ!」

「そんなこと言ってないですけど…」


(何で…怒ってるんだろう。出発の日からなんだか様子が変なんだよなあ…ヒズミさん)


「わいにはそう聞こえるねん! わいの前でそういうの、ほんまやめ!」

「…何でそんなに怒ってるんですか? 俺、ヒズミさんに何かしましたっけ…。何かしたんなら謝ります…」

「別に、怒ってへんし…。もう! ええから! わいに構わんといて! あっち行け!」

「何話してーるの! 俺も入ーれて!」


ヌゥがにこやかな表情で二人の間に割り込んだ。


「うわっ! なんやの!」

「二人で仲良く何話してるのかなーと思って!」

「仲良さそうに見えたんか? 面倒くさいから、あんたもあっち行っとけ!」

「ええー?! ひっどい! さっきは仲良くハグしたじゃん! なんなの? ツンデレ?」

「うるさいなあ! あっち行け言うてるやろ!」


するとアシードもやってきて、ヌゥとヒズミ二人の頭をがしっと掴んだ。


「がーっはっは! ケンカは行かんぞ若僧たちよ! 我らは同士! 何よりも熱い絆で結ばれておるのだ! 仲良くせんか!」


(暑苦しいおっさんまできてもうた! もう最悪! 頼むから少しだけ一人にしてーや…てか髪の毛ぬけてまうし…痛ててて)


「アシード痛いよ離して! ケンカなんてしてないし!」

「そうかのう。それだったら問題はあるまい! がーっはっはっはぁ!!!」


なんだかんだで、和気あいあいと帰路にたった。

やがてアジトにたどり着いた皆は、ジーマの命令で、話し合いは明日にするから、今日はもう休むようにと言われた。


各々自由な時間を過ごし、のんびりとした時を過ごした。


























挿絵(By みてみん)

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