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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第1章

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再戦・メリ

ふふん、ふふん。


鼻歌を歌いながら、メリはスキップしていた。


「ヌゥ君は、どっこかなあ〜〜」


メリは牢屋にやってきた。

ナキアが倒れている。


「あれ…ナキア…??」


メリはハっとしてナキアに駆け寄った。

気絶しているようだ。


メリが牢屋を見ると、ハルクがいなくなっているのに気がついた。


「役立たず!! 死ね!死ね!死ね!」


メリはそう言って、身体から大量のトゲをだすと、ナキアをギタギタに引き裂いた。


「はぁ〜ヒルカに知らせないとじゃん〜」


メリはナキアを乱暴に捨てさると、ヒルカの元に向かった。




「ここで、何してるの?」


アグは声のする方を振り返った。

そこには、黒髪の細目の男が立っていた。彼は白衣を着ていた。その服は赤い染みがたくさんついていた。


「ははは……君か……」


男はアグを見ると、笑っていた。


アグは後ろに下がりながら、手榴弾を取り出そうとした。


「おいおい。やめろ。ここはシャドウの記録の宝庫だぞ。この部屋を爆発させる気か」

「……ああ……やってやるよ……」


男は笑った。


「ははは…君ならやりかねないね! あの時みたいに、この研究所ごと爆発させたりとかね!」

「……」


この男は、俺のことを知っている…。


「お前は…誰だ……」

「おや、覚えていないのか。メリのことと一緒に、俺のことも忘れてしまったようだな…」


……どういう意味だ?


「俺はヒルカ。君と会うのは10年ぶりか」

「……?!」


こいつがヒルカ…。

シャドウを作った張本人か……。


「ヒルカ〜!!!」


バンっとドアが開いて、メリが中に入ってきた。

メリとアグはばっちり目があった。


「あれ〜誰だっけ?」

「アグ君だよ、メリ」

「ふ〜ーん? それじゃあ敵だぁ! リウムが言ってたわよね! ねぇ、殺していい?」


メリはアグに殺気を放った。


アグはその殺気に恐怖したが、懐から手榴弾を取り出した。


「く…来るな! 近づいたら、この部屋を爆発させる! お前らの研究資料もろとも吹っ飛ぶぞ!!」


メリは高笑いした。


「きゃっはっは!!! 面白いねぇ君!! いいよぉ! やってみれば?!?!」


くそ……はったりがきく相手じゃない……

やるか……? 本当に………


アグはビスに手を近づけた。


「きゃははは!!! お前がビスを引くより速く、お前の首を引きちぎってあげる!!」

「できるもんなら……やってみろ……」


アグがビスを引こうとすると、メリはアグに襲いかかった。

その速さは尋常ではなく、そしてその狂気にアグは身動きが取れなくなった。


む…無理だ! 殺されるっ!!


「アグに触るなぁぁ!!!!!」


何が起こったのかわからなかった。

ただ、ヌゥの声が聞こえて、気づいたらメリはふっ飛ばされていた。


メリは部屋の壁にぶつかって床に倒れ込んだが、すぐに起き上がった。


ヌゥはメリを睨みつけた。


「ヌゥ君……また会えたね……」

「今度は殺すよ……君を……」

「きゃは……! いいねぇ! いいよぉ〜!!」


メリは興奮していた。


「おっと…ここで暴れないでくれよ!」


ヒルカが部屋の壁に隠されていたボタンを押すと、急に床がなくなって、下の階に落ちた。


「うわっ」


俺は尻もちをついた。

下の階に降りたようだ。


どうなってんだあの部屋は……。

それよりここは……。


今まで見た中で、一番だだっ広い部屋だった。

壁も床も真っ白で、何もない。


「きゃは……始めるよ…ヌゥ君!」

「おい、メリ!」

「わかってるよぉ、ヒルカ……」


(殺さないよ……あの方の命令だもんね…!死なない程度に、遊んであげる!!)


メリはその両手からギザギザの刃の剣を作り出すと、ヌゥに向かってきた。


アグはメリが武器を生み出すのを見て、驚いた。


(なんだ?! 禁術なのか…? そうか……アリマの大量の武器も、こいつが……)


ヒルカは両腕を組んで、メリが戦うのをみている。


(あいつは戦わないのか……シャドウに全部やらせて、高みの見物ってわけか…)


ヌゥは長剣でメリの攻撃を受ける。


(それにしても、ヌゥのやつ……またキレてるな……)


メリは自分の剣で、ヌゥの剣を強く押し込んだ。


「きゃはは……ヌゥ君、君は、どんな怪我をしても、治っちゃうんでしょう?! だったら、いいよね! ボロボロにしても、いいよねぇ!!」

「黙れ……俺は、お前達を許さない」


メリは腹の中から槍を生み出し、そのまま突きだした。

ヌゥは後ろに高く飛んでそれを避けた。


(やっぱり楽だな……キレてる時は……考えるより先に、身体が動く…)


「きゃはっ」


メリは笑いながら、ギザギザの双剣をヌゥに投げつけた。

ヌゥは軽々とそれをかわし、メリに向かって剣を振るう。


メリは自分よりも大きな盾を生み出してヌゥの剣を受けると、その後ろに隠れた。

続いてメリはマシンガンを生み出し、盾の上から銃口をヌゥにむけると、撃ちまくった。


(なんだありゃ……あの身体からどんだけ武器が出てくるんだ…?!)


ヌゥは右に走ってマシンガンを避けた。


ズダダダダダダダ!!!


マシンガンの激しい銃声が部屋に鳴り響いた。


カスっカスっと、弾切れの音がなると、メリはマシンガンを捨て、短剣を生みだし、ヌゥに向かった。


「きゃはっ! 避けてるだけじゃあ、私を倒せないよぉ〜?!?!」


(くそ…ヌゥを助けたいけど、俺が手を出せる状況じゃない……足手まといになるだけだ……)


ヌゥとメリは切り合いを続けた。


(互角だ……! 多種多様な武器を生み出せるメリの方が、優勢なのか?!)


メリは銃剣を作り出した。

遠距離からでも弾をうてるし、近づけば剣としても扱える。


(便利だな……どれだけ武器を熟知してるんだ…? それにしても、どの武器も一瞬で出てくるんだな…)


ヌゥはメリの撃つ弾を斬った。


見える……。はっきりと……。

メリの攻撃が……。


自分で考えて身体を動かす必要がないと、こんなに相手のことがよく見えるのか……。


ただ、メリは前よりも強くなっている…。

攻撃を受けるのは簡単だけど、攻めきれない…。


二人の攻防はしばらく続く。


メリは戦闘中、数々の武器を作り出した。


剣、斧、銃、槍、鎖……次から次へと、あらゆる種類の武器…。


メリは爆弾を作り出すと、ヌゥに向かって投げた。


「うわっ」


激しい爆風と煙が皆を襲った。


「アグ!」

「よそ見! 駄目だよぉ〜〜!!!」


メリの攻撃が、初めてヌゥに入った。

ヌゥはアグの前に倒れ込んだ。


「だ、大丈夫か……?」

「平気……アグこそ、大丈夫?」

「俺は大丈夫だ……」


ヌゥは起き上がった。その時、ヌゥの服から禁術解呪の薬をが落ちた。


(これは……)


アグはとっさにそれを拾った。


「見つけたのか……薬…」

「うん……」


ヌゥはアグに背を向けたまま、答えた。


「ハルクさんは……」

「…牢屋に捕まってた。薬の作り方を吐かせようと、ハルクさんを拷問してた。でも、ハルクさんは言わなかったよ…」


俺とハルクさんで、必死になって作った薬…。

ハルクさんはそれを守ってくれた……。

やっぱり、ハルクさんは、裏切り者じゃなかった。


でも、それはつまり……


「使ったよ。アグのくれた、雷杖」

「そっか……」


そうだと思いたくはなかった。

ベルが裏切り者だなんて…。


「でもね、大丈夫だよ、アグ」

「え……?」

「こいつらを殺せば、ベルちゃんのことを助けられる」


ヌゥは長剣を構えた。


「きゃは…何の話をしてるの?」

「お前たちが、ベルちゃんを服従して、酷いことをやらせたんだ」

「なあに? もしかして、リウムの話をしているの? あの出来損ないのひょろひょろ女のこと?」

「ベルちゃんは、出来損ないなんかじゃない!」


ヌゥはメリに斬りかかった。

メリは同じく剣でそれを受けるが、ヌゥは押し返した。


「ちっ」


メリは舌打ちしてヌゥに斬りかかったが、ヌゥは剣でなぎ払い、メリの右腕を、左手で強く握りしめた。


「ぎゃっ」


メリの腕の骨が折れた。そのままヌゥはメリの身体を蹴り飛ばした。


メリはふっ飛ばされて、床に何度も身体を打ち付けた。


「きゃは…ははは…」


メリは腕を折られながらも、狂ったように、笑っていた。


メリは立ち上がると、身体中からトゲを生やし、ヌゥに向かってきた。折れた腕はぶらんぶらんと揺れ、更に変な方向に曲がっていた。その姿は狂気でしかない。


(何なんだ…この女っ……)


アグは彼女を見て、恐怖した。


(俺は知らないっ……こんな女……)


メリはヌゥに襲いかかった。


「きゃは! 射程圏!」


メリは至近距離まで近づくと、トゲをヌゥに向かって連続で放った。


(数が多すぎる! 避けきれないっ!)


ヌゥの体に何本ものトゲが刺さった。


「ヌゥ!!」


アグは叫んだ。


(くそ……なんて強いんだ……この女……気持ち悪いし…イカれてるし……)


「ねぇ、ヌゥ君、本気見せてよ」


メリはイカれた笑みを浮かべながら、言った。


「アリマの時みたいな、本気、見せてよ」


ヌゥはメリを睨みつける。


「あぁ、君をもっともっと、怒らせないといけないか……」


メリはアグのことを見つめた。

ヌゥもそれに気づいた。


「や、やめて!」


メリは左手に剣を持つと、アグに全速で近づいた。


「ヌゥ君、この子が死んだら、ふふふ……あぁ、君は、どんな顔をするんだろう?!?!」


ヌゥも必死でアグのところに向かった。


「やめて! やめてぇぇええ!!!」


アグは迫ってくるメリを見て、その恐怖に絶望し、目を閉じた。


(死、ぬ………)


メリはアグに剣を向け、心臓めがけて突き刺した。


「駄目ええええええ!!!!!!」


ヌゥの悲痛な叫びが部屋中に響いた。


その瞬間、何が起こったのか……俺はわからなかった。


(あれ……俺……生きてる………?)


アグはゆっくり目を開けると、自分の目の前まで迫っていたメリは、一瞬時が止まったように動かなかった。足元には、メリの左腕が落ちていた。


「え……?」


メリの後ろには、白髪で、真っ赤な目をした、ヌゥが立っていた。


メリは振り返ると、その姿を見て薄ら笑った。


「きたね…きたね……んぎゃっ」


メリは一瞬で、反対の手も斬り落とされた。


「ほう……」


ヒルカは遠目から、変わった彼の姿を見ていた。


「ヌゥ……お前…また………」


ヌゥはその赤い瞳で、メリを睨みつけた。


































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