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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第1章

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レインとハルク

ハルクが俺達の部隊に入ったのは、三年前のことだ。

研究職なんていう新しい役割が部隊に作られた。どうやら禁術について調べることが目的らしい。


正直、そんなの国家の研究チームがあるんだからそこで勝手にやってろって思ってた。なんでわざわざ俺たちのアジトに住み込んでやんなきゃなんねーの。

報酬金は部隊全員で山分け。派遣に行かないハルクはただ毎日研究室にこもっているだけで、いわば俺たちの稼いだ金をもらってるってわけだ。まあ俺もそこまで金にがめついわけでもねーけど、なんか納得いかねえ。


俺がそんな風に思っていたのは、ハルクがクソ無愛想でいけすかねー奴だったからだ。


「皆、新しい仲間を紹介するよ。研究職としてうちで禁術について専門的に調べることになった、ハルク・レジータ君だ」


ジーマは、皆を大広間に呼んで、ハルクって奴を連れてきた。

黒髪で、毛先は少し青っぽいな…眼鏡をかけていて、いかにも研究が好きそーな顔をしてる。ひょろっとして、表情がかたい。緊張してんのかなーなんて思って、俺は声をかけた。


「ふーん。よろしくなハルク。俺はレインだ」

「…気安く呼び捨てにしないでもらえますか?」


な、なんだこいつー?!?!


「他の皆さんも自己紹介は結構です。もう事前に聞いて知っていますから」

「何だよてめえ、偉そうにしやがって。お前立場わかってんの?」

「レインさん。あなたみたいな横暴な方も部隊に入れるんですね。国家の組織ですよ? もっと態度を改めてはいかがですか?」

「はぁー?!」


レインが机をバンと叩いて立ち上がったが、ハルクは微動だにしない。


「まぁまぁ、落ち着いてよレイン。ごめんねハルク君。僕が甘いから彼はいつもこんな感じなんだ」

「なんでジーマが謝んだよ!」

「あなたも隊長ならもっとしっかりしたらどうです? それに人選やり直したほうがいいですよ。ベーラさんとアシードさんはともかく、こんな短気な男に、こんな小さい子供まで率いれて、お遊びチームじゃないんですよ」

「ちょっと! 子供扱いしないでよ!」


シエナも怒って言った。


「そうだよね〜頼りなくってごめんね。でもほら、レインもシエナもとっても強くて優秀だから。ハルク君の研究のために、禁術使いをどんどん捕まえてくるから、ね」

「まあ、お願いします。明らかにデータが足りませんからね…。それじゃ、もういいですか? まずは研究所を片付けたいですし。そうだ、ベーラさん。あとで呪術についてお聞かせいただけますか?」

「わかった。食堂で待ってる」

「ありがとうございます。それでは失礼します」


そう言って、ハルクは大広間を出ていった。

ドアが閉められるなり、レインは騒ぎ出す。


「な、なんじゃありゃー?!?!」

「がっはっは! いや、実に面白かった!」

「アシード!てめえずっと黙ってると思いきや、何笑ってんだよ」

「いや、レインがここまでコケにされるとは、見ものだったぞ」


アシードは呑気に高笑いをしている。


「何にも面白くねーよ! おいジーマ! なんであんなの連れてきた」

「いや、僕が連れてきたんじゃないよ。国王から直接彼を推薦されてさ、まあでも研究チームもあった方がいいかなって。今後のためにさ。ハルクくん、国家の研究チームでかなり優秀だってきいてたし。色々便利な薬や道具を作ってもらったら、皆の派遣も楽になるかな〜なんて」

「なんでそんなに呑気なんだよ! お前もバカにされてただろーが! へこへこしやがって! ムカつかねーのかよ!」

「いやあ、別に。僕が頼りないのは事実だしね〜」


ジーマはいつも通りニコニコしている。

くそ…なんで俺だけイライラしなきゃなんねーの!


「でも、ジーマさんに失礼ですよ。あれは。私のことも子供扱いしちゃって!」

「な! シエナもむかつくだろ?」

「あんたは確かに横暴すぎるわよ。もう大人なんだから、落ち着きなさいよ」

「なんでてめえまで説教たれてんだ!」

「痛! それ! それが横暴だってのよ!」


シエナはレインに頭をこづかれて、手で抑えた。


ああもう! なーにが研究職だよ。そんなのいらねえってのに。


それから数ヶ月ほどたった。

次はベルっていう医療担当の女までやってきた。まあ専属の医者はいてもいいだろう。この女は大人しそうだし、時には派遣先にも出向いてくれてケガもすぐ治してくれるし、まあ報酬金を山分けしても納得してやる。

ただあのハルクってやつ、何もしてねえじゃねえか!

禁術使いを3人つかまえたってのに、なんの成果も出しやしねえ。

口では偉そうにしやがって、大体本当に仕事してんのか?


レインはハルクの様子を見に行ってやろうと、研究所のドアを開けた。


「え?!」


いきなり激しい爆発が彼を襲った。大したけがにはならなかったが、反動で尻もちをついた。


「熱っつ!! 何だよもう」

「ちょっと、何勝手に入ってきてるんですか」


ハルクはレインを見下ろして睨みつけた。


「あん?! てめえがさぼってねえか見に来てやったんだよ」

「さぼってるのはあなたでしょう。邪魔だから出てってくださいよ」

「んだと?! てめえ、俺にケガさしといて、一言のわびもなしかよ」

「あなたがドアを開けるからでしょう」

「ったく…一体何作ってやがったんだよ」


レインは立ち上がって、灰をはらった。


「手榴弾ですよ。まだ試作中なんです」

「なんでそんなもん作ってんだよ」

「この部隊、遠距離攻撃の手段がないからって、ジーマさんに頼まれたんですよ。でも難しいですね、爆弾は…。そういえば、知ってますか? 7年前くらいの事件、ガルサイアの城が破壊されましたよね…あの爆弾、本当にすごい威力でした…一体どうやって作ったんだろう…」

「……!!」


レインはハルクに殴りかかった。


「な、何するんですか!」

「うるせえ! お前なんて部隊のメンバーだなんて認めちゃいない! 出てけ! 俺にその面見せんじゃねえ!!」


レインはハルクを殴り続けた。彼の顔は青く腫れていく。


「ああ! 何してるの!!」


通りかかったジーマにレインは抑えられた。


「離せ! こんなやつ! 許さねえ!!」

「落ち着いてレイン! やめなさい!」


ジーマはレインを部屋から引きずり出した。


「何を騒いでいるんだ?」


声を聞きつけたアシードがやってきた。


「ちょうどよかった! アシード! ベルを呼んできて。ハルクが怪我を負った」

「何?! それは大変だ! すぐに連れてくる!」


レインはバタバタ暴れて抵抗している。


「離せ! くそジーマ! あんなやつ部隊に入れやがって…クソ…」

「駄目だって…ちょっと…、大人しくしなさい」


ジーマはレインの首筋に手刀を食らわせた。レインは気を失った。

ジーマはレインを置き、研究所の中のハルクに駆け寄った。


「ハルク君、大丈夫…?」

「うう…」


すぐにベルがやってきた。


「大丈夫ですか?! 私の部屋で手当しますね」

「僕が運ぶよ。行こうハルク君。アシード、レインをいいかな…気絶させただけなんだ」

「ああ、わかった!」


アシードは軽々とレインを担ぐと、彼の部屋に運んだ。

ハルクはベルの部屋に運ばれ、手当をうけた。


「さすがベル、手慣れているね」

「いえ…このくらいは…はい! これで大丈夫です」

「ありがとうございます…研究続けます…」


ハルクは立ち上がって部屋を出た。

ジーマは彼を追いかけた。


「ハルク君…少しいいかな」


ジーマは彼を部屋に連れていき、話をした。


「レインは口は悪いし怒りやすいけど、手を出すような奴じゃない。何があったのかな」

「……」


ハルクは会話の経緯を離した。

ジーマは納得したように頷いた。


「ハルク君、レインはね、もともとガルサイアの王族だったんだ」

「え…? でもあの事件で王族は皆…」


ジーマはレインの過去をハルクに話した。

ハルクは反省したような面持ちだった。


「すみません……軽率なことを言いました…」

「いや、知らなかったんだ、仕方ないよ」

「謝ります」


ハルクは立ち上がって、レインの部屋に向かった。


「あ…ハルク君…」


大丈夫かな、あの二人…。

歳も近いし、いい友達にでもなってくれたらなんて思ったんだけど…やっぱり難しいな…。


ガチャっとレインの部屋の扉があく。

その音でベッドで寝ていたレインも目を覚ました。


「うう…なんだ、てめえか…」

「レイン、すみません…ジーマさんからあなたの話を聞きました。失礼なことを言いました…」


ハルクは俺に頭を下げた。

なんだよ…手を出したのは俺だってのに…。


「いいよもう。俺も悪かったよ…いきなり殴ったりして」


ハルクはレインの部屋の椅子に腰かけた。


「私も少し苛立ってました…研究が全然進まなくて…。皆さんが頑張っているのに、何も結果が出せなくて…」


なんだよ…こいつも気にしてたのか…。


「それじゃ、私は研究に戻りますね」

「あ、ああ…」


ハルクは行ってしまった。


なんか悪いことしちまったな…。あいつがサボってねえこともわかったし…。


レインはため息をついて、またベッドに横になった。






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