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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第1章

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ゼクトとドラゴン

ゼクトがまだ幼い頃、彼は森で倒れている子供のドラゴンを見つけた。

白いドラゴンで、酷く傷つき眠りについていた。

ゼクトはドラゴンを抱きかかえて、家に連れて帰り、看病した。


家にはいつも誰もいなかった。母親は病気で死に、父親は仕事が忙しく、ほとんど家にいない。


「大丈夫かな…酷いケガだ…」


人間ではなくドラゴンだ。医者にみてもらうこともできない。

ゼクトはキズの手当をすませ、あとは様子を見るしかなかった。


「キュウウン」


ドラゴンが目を覚ました。その場でじっとしたまま、か細い声で鳴いている。


「おい、大丈夫か? 痛いのか?」

「キュウン、キュキュウ…」

「お腹が空いたのか? 何か食べるか?」


ゼクトは家にあった食用の肉を与えた。ドラゴンは美味しそうにそれを食べていた。


「おいしいか? いっぱい食べろよ」

「キュキュウ!」


ドラゴンは嬉しそうで、ゼクトに懐いていた。


それからゼクトはドラゴンを育てた。イースという名前をつけてかわいがった。イースもゼクトを親のように、あるいは親友のように、慕っていた。


そしてある日、驚くことが起きた。

ゼクトはいつものように、自分の部屋でイースを抱きかかえて眠っていた。朝が来て目を覚ますと、イースは人間の姿になっていた。


(な、なんだあ?!?!)


自分と同じくらいの子供だ。白髪の髪が肩につくくらい伸びていた。美しい顔立ちで、どことなくドラゴンのイースを思わせる雰囲気が漂っている。

そしてイースは、裸であった。


「う、うわあ!!!!!」


ゼクトは大きな声で叫んだ。


「おい、どうした?!」


部屋の外から父親の声がした。


「な、なんでもない! 夢だった!」

「朝からうるさい声出すなよ! 俺はもう仕事に行くからな!」

「うん! いってらっしゃい…」


イースもゼクトの声で目を覚ました。大きく伸びをして、ゼクトを見ると、ニコッと笑った。


「キュウウウン」

「ど、どうなってんだ…」


イースは、男でも女でもなかった。ドラゴンには性別がないのだろうか。


「とりあえず…服を着てくれ…」

「キュウウン?」


それから、イースは人間の姿のままだった。

まあでも、イースはイースだ。

これからも俺が面倒を見るしかない。


ゼクトは、人間として、イースを育てた。

何年もの歳月が過ぎ、イースは人間のようなふるまいができるようになった。言葉も会話できるほどには話せるようになった。


そしてある日、ゼクトの家の隣にリバティが引っ越してきた。

紅色の長い髪で美人なのて非常に目立っていたが、あまりに無愛想なので友達がいなかった。

学校に通っていたゼクトは、そんな彼女を見かねて、家に遊びに行った。


「よ!」

「誰だお前」

「なんで覚えてねーんだよ! 同じクラスのゼクトだよ」

「何しに来た」

「遊びに来たんだよ! お前友達いねーだろ。俺がなってやるよ」

「断る」


リバティが言うのも聞かずに、ゼクトはズカズカと彼女の部屋に入った。そこにはたくさんの植物が育てられていた。ゲージにはヘビにサソリ、クモや魚など、様々な動物が飼われている。


「なんだこの部屋、すっげー!」


ゼクトが植物に近づくと、


「触るな!」


とおおきな声でリバティが叫んだ。


「みんな毒を持っている」

「え?! は?! まじか! 危ねえ!」


ゼクトは触ろうとした手を引っ込めた。


「なんでこんな危ないの育ててんの?」

「毒薬を作りたいから」


リバティがそう言うと、ゼクトは大笑いした。


「ははは! 冗談だろ! そんなもん作ってどうすんだよ」

「どうもしない。作るのが好きなだけだ」


(そうか、この女はあれだな、頭がおかしい)


「わかったら、さっさと帰れ」


リバティはゼクトを家から追い出した。

ゼクトは家に帰った。ドアを開けると、イースがニコニコしてゼクトの帰りを待っていた。まるで犬みたいだ。


「おいイース! 今日やべーもん見たぞ」

「やばい見た? 何見た? ゼクト、驚いた」

「隣に越してきたリバティって女、あいつの部屋がやばいことになってた!」

「リバティ部屋行った。すごい? 何あった?」


イースは目を輝かせて喜んだ。


「おおー!毒すごいね! 毒って何ね!」

「身体に入ったら死んじゃう、恐ろしいやつ!」

「おおー!」


ちなみにイースは人間になったあの頃から身体が大きくならない。

ずっと子供の身体のままであった。


二人はそれからも家族のように暮らしていた。


ある日、二人は森で遊んでいた。

人気の全くない森で、ゼクトがイースを見つけた森だ。

イースはドラゴンに戻れるようになっていた。大きさはゼクトと同じくらいの子供ドラゴンという感じだ。


「いけ!イース!」

「キュウウウン!」


イースはゼクトの投げた石を的にして、炎玉をぶつけて遊んでいた。


「すげえ! 全弾命中だ!」

「キュウウ!」


すると、突然謎の男たちが現れ、イースを取り押さえた。


「ドラゴンだ! こいつは高値で売れるぜ」

「な、何だお前ら! イースに何すんだ!」


ゼクトは男の一人に腹を蹴られ、気を失った。


「キュウウウン!キュウウウン!」

「おいこら!騒ぐんじゃねえ!」

「キュウウウン!」

「黙れっての!」


男は謎の薬をイースにふりかけた。イースは眠ってしまった。

ゼクトが目を覚ました時、イースは奴らに奪われた後だった。


しばらくゼクトは絶望した。

家族のように思っていたイースが、いなくなってしまった。


それから数日が過ぎた。


「おい、どうした」


リバティは家に帰る際、隣の家のゼクトが死んだようにうずくまっているのを見つけ、たまらず声をかけた。


「イースが…変な男たちに盗られた…」

「イースって、ああ、お前が連れてた変なガキか」

「イースは俺の家族だ…うう…」

「泣くな男のくせに。みっともない」

「うう…」


リバティは仕方なく話を聞いた。

イースが実はドラゴンで、幼い頃に見つけて育てたこと。

男たちが、ドラゴンは高値で売れると言って、無理矢理奪っていったこと。


「知ってるぞ。珍しい動物を、捕まえて、裏で高く売りさばいてる連中だ」

「何で知ってんだよ」

「私もそこの常連だからな」


リバティの首から、にゅるんと黄色いヘビが顔を出す。


「うわあ! なんだよ!」

「カピスコブラだよ。毒を持つ動物が売られている。宝のような店さ。確かに最近ドラゴンが売られていたぞ。しかし相当な高値だ。買えはしない」

「恐ろしいけども…仕方ない!よし!そこに案内してくれ!」

「…まあいいだろう」


ゼクトとリバティは、その怪しげな店に向かった。

その店は路地街の地下にあり、普通なら立ち寄らないような場所だ。

店に入ると、一見普通の装備屋を装っている。普通そうなお婆さんが、カウンターに座っていた。


「おや、リバティじゃないか。友達も一緒かい」

「ああ。中に入れてもらえるか」

「もちろん、お得意様だからねえ。ほら、どうぞ」


お婆さんがカウンターの床を外すと、更に地下に続く階段がある。


中に下りていくと、見たこともない動物や、凶暴で捕まえるのが困難であろう動物が、ずらりとゲージに入れられている。


「何だこりゃ…こんなことして捕まんねーのか?」

「裏世界だ。国家精鋭部隊に見つかったらもちろん捕まる」

「だよな…」


一番奥まで進むと、ゲージにいれられた白いドラゴンを見つけた。


「イース!」


ゼクトはイースにかけよった。

イースは眠っていて、動かない。


「イースは俺のドラゴンだ! 返してくれ!」


ゼクトはイースのゲージをガンガンと叩く。


「おい、やめろゼクト。ここがどこだかわかっているのか?」


リバティが止めようとすると、怪し気な商人が鉄砲を持って近づいてきた。


「お客さん…困りますよ。それ以上やるなら殺しますよ」


ゼクトはハッとして、手を止めた。鉄砲の口が、ゼクトの額に当てられる。


「これが欲しいなら、買ってもらわないと、ねぇ」

「い、一体…いくらなんですか…」


商人はゲージの下の値札を指さした。

1000万ギルとかかれている。

とてもゼクトが払える金額ではない。


「だから言っただろ。諦めろゼクト」

「イース…イース…」

「おや、これはリバティさん。あなたのお友達でしたか」

「どうしてもこのドラゴンがほしいと言ってな…」

「高価な商品ですからねえ、まあでもリバティさんのお知り合いなら、頭金があればあとはローンでも結構ですよ」

「それはいくらだ?」

「500万ギルで結構ですよ」

「だそうだ、ゼクト」


500万ギル…。とてもじゃないけど、働いたとしても何年かかるかわからない値段だ。


俺とリバティは仕方なく一旦店を出た。すると、店から出てきた別の客が、俺達に声をかけた。ローブを深くかぶっていて、顔が見えない。


「お金、ほしいんでしょう。話が聞こえてしまって…ふふ…いい儲け話がありますよ」

「…??」


その男か女かもわからない怪しい奴の話はこうだ。

鉱山の素材を根こそぎ採掘し、鉱石を枯らして素材をとれなくしたあと、素材を高値で売りさばくというものだ。


「鉱石を枯らしてって、一体どうやって?」

「ふふ…リバティさんなら、作れるんじゃありませんか? 毒薬を」

「私のことを知っているのか」

「ええ。裏では有名でございますから」


(有名って…リバティほんとこいつ何者なんだ?!)


「でも鉱山が枯れて素材がなくなったら、みんな困るんじゃ…」

「なあに。お金がたまったら解毒薬をまいて元に戻すだけですよ。どうです?」

「鉱石を枯らす毒か…面白そうだな」

「面白そうって…」

「ふふ、決まりですね。薬ができたらここにいらっしゃってください。お手伝いしますよ」


怪しい奴は住所のかかれた紙を渡すと、去っていった。


「おい! なんかめちゃめちゃ怪しいぞ!」

「面白そうだ!早速作成にとりかかる!」

「はあ?! なんでノリノリになってんの?」

「いいから! イースを取り戻すんだろう」


リバティは数日かけて毒を完成させた。


俺達はとんでもないことをしようとしてるんじゃないだろうか。

間違いなく犯罪者になろうとしている。

でも仕方ない。イースを取り戻すためだ。

そのためなら何だってする。


こうして、怪しいそいつのはからいもあり、シプラ鉱山で珍しい素材をたらふくかき集め、知らない男に毒を撒かせることに成功した。まさかシプラ鉱山が崩れ落ちて完全封鎖に陥るとは驚いた。

俺達は素材を売りさばき、頭金を手に入れ、イースをやつらから取り返した。


「キュウウウン!キュウウウン!!」

「イース!!」


しかしあと500万ギルを稼がなければならない。

俺達はテレザ鉱山に再び毒をまきにいくのであった。








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