ソヴァン、撃ち取れ!
ダン ダン
ソヴァンは壁から顔を出すと、銃弾を撃ち込んだ。
カン カン
銃弾が弾かれる音がする。
(ちぃ…駄目か。向こうは盾を持ってる…!)
だけど段々暗闇にも目が慣れてきた。
まあほとんど見えないが、壁や敵の影ならうっすら把握できるようになってきた…。
【聞こえるか、愚かな人間共!】
突然、その部屋中に女の声が響き渡った。
(だ、誰だ?! 敵の声?!)
【お前たちをここに連れてきたのはこの私、アルテマだっ!! これは神の力をかけた戦いだ! 勝者が伝説の武器を手にし、神の力を手に入れることができるのだ!! 自らの持てる力を全て出して戦え! 力ある者たちよ!! アハハハハハッッ!!!】
聞こえるのは声だけだ。
低く濁った、しかし女性の、笑い声だ。
【ちょっと! 誰と話してんのよっ!! きゃあああ!!!】
(メ、メリさん?!)
ソヴァンは遠くに聞こえたメリの叫び声に顔をしかめた。
【まずは目の前の敵と戦え! 人間共! 負けた奴は戦線離脱だ。勝った奴はこの私が相手をしてやる! アハハハハァ!!!】
狂ったように笑い出す女の声に、それを聞いた全員は顔を引きつらせた。
「何だ?! アルテマぁ?! 誰だそりゃ」
「わかりませんが、堕天使アルテマ、神話で聞いたことがありますね。おそらく魔族でしょう」
レインとハルクも目の前のその巨大な手を見据えては、その声を呆然と聞いていた。
「どうせシャドウは殺すんだ。ステージ用意してくれただけだっての!」
赤い獣はハルクをその背に乗せると、巨大な手に向かって黒い炎を吐き出した。
「べ、ベーラさん…」
「ふむ…」
アルテマという奴が、私達を別の場所に飛ばしたようだな…。
鎧の男は剣を構えて駆け寄ると、ベーラに斬りかかった。
(とにかくこいつを倒すしかあるまい)
ベーラは土の柱を自分の足元に出して上へ上がった。
「ひゃっ」
同じようにベルたちを更に大きな柱で持ち上げると、鎧の男から手が届かないようにした。
ベーラは上から男を見下ろした。
(攻撃を跳ね返す術……絶対防御と自身でうたっていたな…さて、どうやって倒そうか)
鎧の男はベーラのいる柱を斬り落とそうと、その剣を斧のように何度も振り切ってきた。やがて柱は崩れたが、別の柱を生み出して飛び乗ると、男に向かって雷を落とした。
しかしその雷も跳ね返り、ベーラの目の前までいなづまが上がってきた。
(物理以外も駄目か…本当に完全防御だな…)
「無駄だ! これまで俺に攻撃を与えた者など1人もいない! フハハハハ!!」
男はベーラを見上げ、高らかに笑った。
(メリさんを助けに行かないと…!)
ソヴァンは壁際から様子を伺いながら、敵の場所を探る。
(こういう場所での戦闘は、銃騎士の僕にはもってこいだ。セイバスとだってよく訓練したよ。もちろん…見えていたらの話なんだけどさっ)
ダン ダン
カン カン
(大体敵の場所も掴めてきたな…それにこの地下室、そう広くない)
ソヴァンの脳内には、地下室の地形図が着々と描かれていた。
敵のシャドウは焦っていた。
(あいつ…見えてないはずなのに、俺の場所を掴んでいるのか…?!)
(あと見てないのはこの隅のエリアか)
ダン
ソヴァンは火炎弾を放った。
その一瞬で、かいまみえるステージの壁の位置を記憶する。
(おっけー……ステージ把握完了)
ソヴァンは2丁の拳銃を構えた。
(後ろをとってやる…!)
シュッ シュッ
ソヴァンに向かってクナイが飛んでくる。
ソヴァンは壁に隠れてクナイを防ぐ。
(あの野郎! 壁の位置までわかってんのか?!)
シャドウには壁の位置もソヴァンの姿も見えていた。
範囲内対象の視界を暗闇に、それが彼の能力だった。
(見えてるはずがない! それでこの俺に勝てるはずがねえんだ!)
シュッ
(そこにいるんだな…!)
ソヴァンは敵の場所を察知した。
ダン
(左は行き止まり、逃げるなら右だろ…!)
ソヴァンは脳内の地形図の通りに、シャドウを追い込んでいった。
彼もまた壁に隠れながらシャドウに駆け寄って行く。
(バカな…寄ってくる?! くそ! 一旦距離を…っ!)
ダン
(くそがっ! 見えてねえんだろ! 当たりゃしねえよ!)
(そうそう…次は下がって左に曲がるだろ)
敵はソヴァンの思惑通りに動いていった。
(見失った?!)
シャドウはソヴァンの姿を見つけられない。
「こっちだよ」
シャドウは背中に拳銃を突きつけられた。
ダン
「っ!!」
後ろをとられたシャドウはその背中に弾を撃ち込まれた。
「何だ?!」
撃たれたはずが、無事であった。
しかし感じる、能力が発動していない!
「うわ〜眩しっ!」
ソヴァンは突然目の前が明るくなったので、目が眩んだ。
「な? 何だ?!」
「残念だけど、君の術はもう使えないよ」
ソヴァンは拳銃をくるくると回しながら、にっこりと微笑んだ。
「負けを認めてくれる?」
「バカが! 術が解けたからって、俺に勝てると思うな!」
男はクナイを両手に握りしめ、ソヴァンに真っ向から向かってきた。
「あ、そう…それは残念」
ダン ダン
ソヴァンは両手の拳銃の引き金を引いた。
「ぐああああっ!!」
弾は男の両眼を射抜いた。
その目から血が激しく飛びちり、悶絶する痛みに男はその場にのたうち回った。
「本当の暗闇になっちゃったねぇ〜」
「て、てんめぇ…!!」
「ごめんごめん。人間の目ってさ、的みたいに見えるんだよね。つい撃ちたくなっちゃう」
ソヴァンはそう言いながら笑っていた。
「でもそれじゃ殺せないから、殺してあげる。僕は早く行かなきゃいけないから」
ダン
目を抑えて倒れているその男を見下ろすように立って、心臓に向かって拳銃を撃った。
「アルテマ! 勝ったら相手してくれるんだろう? 僕を君のところに連れてってよ!」
ソヴァンは声を上げた。
「っ!」
ソヴァンの身体は光り輝いて、その地下室から転移した。
彼が目を開けると、先ほどとは違う異空間にいた。
「メリさん…?」
そこには傷だらけになっているメリの姿があった。
メリの出した盾がいくつもフィールドに突き刺さっている。
乱闘の後だ…。
「ソ…ソヴァン……」
「メリさん?! メリさん?!」
すると、2人の前にアルテマが近づくと、言った。
「ふふ…その女はもう終わる。次の相手はお前か、銃騎士よ」
アルテマは傷1つついていなかった。
メリは腹を抱えながら、ゆっくりと立ち上がった。
「まだよ…まだ負けてないわよ…」
「何を言う。私に傷1つつけられずに…。とんだ見込み違いだったか、つまらないよ」
(メリさんがここまでボロボロに…。確かにアルテマ、彼女が強いということは僕にもわかるけど、ここまで…?)
「まだ…勝負はこれからよ…!」
メリは長剣を創り出し、アルテマに突っ込んだ。
「メ、メリさん!」
アルテマは稲光の球をメリに向かって放出する。
カン カン
メリは盾を出してその弾を弾いた。
「絶縁体の盾よ! はああっ!!」
アルテマの正面までやってくると剣を振りかぶった。
ダン ダン
メリを援護するようにソヴァンも拳銃を撃った。
アルテマは顔面に放たれたその弾をさっと横に避けた。
(避けられた! 速いっ!!)
その動きにソヴァンも目を見張った。
「やああ!!」
メリが剣を振り切ると、アルテマは自身の手から出した暗黒に染まったその剣をかち合わせ、彼女の剣を押し返した。
その勢いでメリは後ろに飛ばされた。
「弱い、あまりにも弱いぞ。お前の本気はそんなものか?」
「くぅぅ……っ」
メリは何とか受け身をとったが、これまでの痛みも相まって、立ち上がることができない。
「つまらないよ。お前の相手はもうやめだ」
アルテマは、巨大な黒光りの球を創り出した。
「その身、跡形もなく、消し去ってやろう」
(初めて見る球……あ、あれはやばい……!)
アルテマはその球をメリに向かって放った。
(でも駄目だ…もう身体が動かない…。避けられない…っ!!)
「メリさんは殺させません」
ソヴァンはメリの前に立ちはだかって、拳銃を構えた。
「ソヴァン! 無理よ! どいてぇ!!」
「嫌です。メリさんを守るのは僕なんで」
「犬死にする気か…。まあいい。次に勝った奴の相手をするまでだ」
ダン ダン
ソヴァンは火炎弾、続いて雷鳴弾を打ったが、まるで効きやしない。
(やっぱ駄目かぁ〜…)
まあしょうがない。メリさんを守るためだから。
「ソヴァン! どいてぇええ!!!」
ソヴァンはメリの前を1歩も動かなかった。
その球に直撃すると、その球と一緒に、彼の身体も跡形もなく消え去った。




