表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/341

集う魔族たち

ゼクサスは1人、その世界を旅していた。


彼のこげ茶色の髪は少し伸びて、肩をこえていた。

彼の新しい身体はまだ15歳くらいの少年だった。


本来成人しない身体に適合は難しいと言われていた。

だからヌゥの時は、彼女が20歳になるまで待っていた。

しかしゼクサスは、この少年の身体が自分に適合することを確信していた。


少年の心は既にゼクサスに乗っ取られていた。

今この子の身体には、2つの意思がある。


ゼクサスと、リアナだ。


身体を動かす権限はゼクサスにあった。

しかしリアナは、ゼクサスに話しかけることができた。

2人は脳内で会話することができる。


【どこに向かってるの】

「友達に会いに」

【あの悪魔以外にも友達がいるんだね】

「カルベラのことかい」

【そうだよ。ヌゥをやたらと欲しがっていたよね】

「あいつは魔王直系の魔族だ。だからあいつの愛は歪んでるんだよ。愛を知ろうとしたって無駄なのに。私たちの血が、誰かを愛するなんてこと、許しはしない。だからもう、俺はあいつを助けはしない。あいつにはもう寿命が数十年しかないからね。そのままあの子と2人で、仲良く幸せに死ねばいい」


リアナは悲しかった。


【どうして魔族は、誰かを愛しちゃいけないの?】

「魔王がそれを、望まないから。魔王は誰も愛せない。愛が嫌いなんだ。この世界で1番ね」

【どうして……?】

「無駄だからだよ。魔王が生んだ魔族は皆、本当の愛を知らない。知る必要もない。力が欲しいなら、憎悪がある。子孫が欲しいなら、1人で残せる。要らないんだ、愛なんて。私たちには」

【………】


ゼクサスは小舟に乗っていた。舟は何もせずとも自然とその場所に向かっていた。

カルベラの要塞から、更に東に進んだところにやってきていた。

大人2人がやっとほどの小さな小舟で、海を渡る。

背中にはデスサイズとログニス、懐にはケリオンを所持している。

それ以外には、何も持っていない。


【友達って、一体誰なの?】

「シーサーペント」


その何もない海の真ん中で、ゼクサスは立ち止まる。


すると、ゴゴゴゴと大きな渦が巻かれて、中から巨大な大海蛇が姿を現した。

その顔は蛇というよりは竜のよう。たくさんの牙が垣間見える。

その真っ白な身体の背中には棘ついたヒレがついている。

石のような黄色い瞳で、シーサーペントはゼクサスを見つめた。


【ゼクサス……】

「久しぶりだね、ヴェーゼル」


懐かしの友を前にしようと、ゼクサスの表情は変わらなかった。


【…待ってたぜ、お前に会えるのを】

「私もだよ、ヴェーゼル」

【今度こそ人間を殺すんだろう】

「そうさ。君なら力を貸してくれるだろう」

【もちろんだ。大事な友の頼みだからなぁ!】

「君ならそう言ってくれると思ったよ」


ゼクサスは口元を緩ませた。

ヴェーゼルもまた、笑っているようだった。


【あの戦争の雪辱を晴らすいい機会だぜ】

「ふふ…」

【他にも誰か、連れてきたのか?】

「まあね。カルベラの鏡で何体かコピーしたはいいけれど、世界中に散らばってしまったようだ」

【そうか。そいつらを探しに行くんだろ?】

「まあ当面はね」

【わかったよ。とりあえず、乗りな】


ゼクサスは、シーサーペントのヴェーゼルの頭の上に乗った。

ヴェーゼルは海を優雅に泳ぎ、東へと進んでいく。


「この先の大陸にデスイーターがいるよ」

【あのうるさいガイコツか。俺はあいつらは、あんまり好きじゃねえんだけどな】

「まあそう言うな」


ヴェーゼルは3日ほど海を泳ぎ、その大陸にたどり着いた。

大陸に着くと、ヴェーゼルはゼクサスを陸におろした。


「君も一緒に来るだろう」

【行きたいのは山々だけど、無理だ。俺は海の中でしか生きられないぜ】

「大丈夫。いいものがあるからさ」


そう言って、ゼクサスはヴェーゼルに薬を飲ませた。


【ゔっ……!!】


ヴェーゼルは苦しんだあと、その姿を人間に変えた。

長い薄青白い髪に、黄色の瞳。凛々しい顔立ちで、背は高かった。


「ゔっ、おえっ、な、なんだこれ……」

「人間が作った禁断の薬だよ。それを飲むと人間になることができるのさ。ただし寿命が人間と同じになる」

「なっ、なんだと?! ゼクサスお前っ、何を勝手な…」

「でも安心して」


そう言うと、ゼクサスは自分の中の核の1つをヴェーゼルに入れた。


「私はね、3つ核を持ってる。1つはノア、もう1つはリアナ、そして最後にこの身体の少年がもともと持っていた核。君には特別に少年の核をあげる。君は親友だからね」


ヴェーゼルはしゃがみこんで、苦しんでいる。


「ゔっ…ゔぐっ…!! ハァ…ハァ…ハァ…」

「妖精を捕まえて実験したんだけどさ、魔族は100%呪人の核と適合するみたいなんだよね」

「な…何を…言ってんだ……さっきから……」

「これでヴェーゼルはシャドウだ。私の血を飲めば、歳をとらない。寿命によって死ぬことはなくなるよ」

「……」


(ぅぅっ…く、苦しい……!!)


自分の体内に何かが入ってくる感覚。

これが核だというのか…。


ヴェーゼルはゼクサスを見上げた。


「っ!!!」


ゼクサスの冷たい目を見たヴェーゼルは、恐怖を覚えた。

ゼクサスの憎悪に、支配されそうな感覚を覚える。


ゼクサスは自分の右腕を、ヴェーゼルに差し出した。


「飲んで、ヴェーゼル」

「………ああ…」


ヴェーゼルはゼクサスの腕に噛み付くと、その血を飲んだ。


(っ!!! な、なんだこれ……力が……みなぎる………)


ヴェーゼルは血を飲み終わると、目を見開いて、ゼクサスと目を合わせた。


(これだ……俺が魅せられたのは、この力だ……)


ヴェーゼルは敬愛の意を示すような眼差しでゼクサスを見た。

それを見たゼクサスは、ニヤリと笑った。


「それじゃあ行こう、ヴェーゼル」

「わかったよ……どこまでも、ついていくよ…お前に……」


ゼクサスたちが着いたその大陸の海岸には、誰もいなかった。

人工的な物は何もなく、自然が広がる。


ゼクサスとヴェーゼルは、その平原を歩いていく。

ヴェーゼルの歩きはどこかぎこちなかった。


「難しいな…2本の足で歩くってのは……」

「君は海の大蛇だからね。ゆっくりでいいよ。急いでないからさ」


シーサーペントのヴェーゼルは、平原を歩き続けるうちに、だんだん人間の身体にも慣れてきたようだ。


しばらく進んで平原を越えると、人間たちの墓場が見えてきた。


「あそこだね」

「はぁ…俺は気乗りしねえよ」

「大丈夫。私に背くようならすぐに殺すからさ」


ギャハハハ…と濁ったような笑い声が聞こえ始めた。

その墓場に住んでいるのは、1匹のデスイーターだ。


デスイーターは死んだ者の魂を食べて生きる魔族だ。

その姿はガイコツのように骨しかなく、黒い大きなローブを身をまとっている。

歯をガタガタとかみならして、薄気味悪く笑っている。


デスイーターはゼクサスの姿を見つけると、飛んでこちらにやって来る。


「ギャハハハハッ! お前がゼクサスかァァ! 待ってたよ! この俺様を呼んでくれるなんてさァァ!」

「よくわかったね、私だと」

「当たり前さァ! 血の匂いがぷんぷんするもんなァ! たぎってるよォ、魔王様の血流がねェ!」


デスイーターは濁ったような声でゼクサスに言った。


「名前はなんだデスイーター」

「俺様はグリダ。ギャハハハ! それにしても本当にいい匂いだァ! 魔王様を思い出すよ!!」


ゲラゲラ笑っている彼をヴェーゼルは顔をしかめながら見ていた。


「で、その隣の人間は誰だい?」

「シーサーペントのヴェーゼルだ」


するとグリダは驚いたようにヴェーゼルを見た。


「シーサーペント? 人間の姿になれるのかい?」

「特別な薬を使ったのさ」

「ほぉォ?」


グリダはじろじろとヴェーゼルを見ていた。


「……」


ヴェーゼルは明らかに嫌そうにその下品なガイコツを見ていたが、グリダは全く気づいていなかった。


「まあイィよ。それで? 戦争するんだろぉ??」

「そうさ。人間を滅ぼすんだよ。君も私の仲間になって、手伝ってくれるだろう?」

「ギャハハハハッ! ああイィとも。そのためにお前が来るのを待ってたんだ!!」


グリダは迷いなくゼクサスを受け入れた。

グリダの餌は死んだ人間の魂だ。

ヴェーゼルはこのデスイーターが反対してゼクサスに殺されたら良かったのにと思っていたが、それは叶わなかった。


「じゃあ手始めに、この大陸の人間を殺すかィ? 俺様もたまに街に出て人間を殺してはよく食ってるよ」

「それもいいけど、先にユニコーンのところに行ってもいいかい」


ユニコーンは、頭に1本の角が生えた馬の姿の魔族だ。


「少し歩くけど、行こうか」

「俺はどこへでも、ついていくよ」

「ギャハハハ! 何でもぃィよ! この生活にも退屈していたからさァ!」


そして3人は、魔族ユニコーンのところへと足を進めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ