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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第3章

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ベーラ隊出航

「よし、出航だ」


ベーラたちは2日かけて港にたどり着くと、前回のものよりも更に大きな客船を作り出して、乗り込んだ。


「でっっか!」

「す、す、すごい……こ、この前の…何倍も……お、大きい…」

「すごい! すごすぎますベーラさん!!」

「研究室、治療室、鍛冶場、道場を追加した。食堂、大浴場、皆の個室も完備だ」

「アジトじゃん!」

「それじゃ私は研究室に」


ハルクは海を一望すらせず、研究室に行ってしまった。


「おいおい! そんなに焦って研究するこたあねえだろ」

「やりたいことがたくさんあるんで」

「そうかよ…」


船に乗ったのはベーラ、レイン、ハルク、メリ、ソヴァンの5人だ。


(はぁ……随分少なくなっちまって……)


レインは部隊のメンバーの顔を見ながら、寂しく思いながらも、自分がベーラと一緒に皆を引っ張っていかなければいけないんだと、強い責任感に駆られていた。


「また勝手に動いてんぞ」

「国王が保持していたらしい自動運転装置を借りておいた」

「準備万全だな〜」


頼れる相棒を見ながら、心を強く持つ。


目的は1つだ。俺は、俺のできることをする。


「とりあえずこのまま東に真っ直ぐ突き進む。世界地図によると、2ヶ月ほどでアマリア大陸というところがあるらしい。そこで再び食料調達だ」

「なるほどね〜。反対側に行くまで何ヶ月かかるかね〜」


レインはデッキチェアにどしんと座ると、手を頭の後ろにやって空を見上げた。


「私、鍛冶場見てきていいですか?」

「ああ。1階の研究所の隣だ。2階が個室、3階がキッチン兼食堂、4階が道場と治療室、5階が大浴場、露天風呂つきだ」


ベーラはドヤ顔だった。


「おお! 露天風呂まで!」

「メリさん! 僕も一緒に行っていいですか?」

「ちょっと! ついてこないでよ!」


鍛冶場に向かうメリを追うようにソヴァンも行ってしまった。


甲板にはベーラとレインが残っている。

ベーラもレインの隣のデッキチェアに腰掛けて、空を見上げた。

太陽の日差しは心地よく2人に降り注ぐ。


「いい天気だな〜」

「そうだな」


レインは横目でベーラを見つめた。


「………」


すると、ベーラもちらりとレインを見た。

ほんの少しだけ見つめ合った後、2人は何も言わず、また空を見上げた。



「うわ〜すごいですね」


初めて見る鍛冶場に、ソヴァンは目を輝かせた。


「メリさんは鍛冶が出来るんですね。すごいなあ…」

「そんなに大したことないわよ。それに…」


メリは悲しそうな表情を浮かべる。


「この船には剣士はいないもの」

「メリさん…」


ソヴァンは腰に下げた自分の拳銃を見る。


「あんたもいらないし…」

「僕のために剣を打ってください!」

「は?」

「メリさんの剣、欲しいです!」

「あんた剣で戦えるの?」

「戦えません!」

「要らないじゃん!!」


メリはわけのわからない彼に対して突っ込みをいれる。


「でも戦えるようになります! これから!」

「あのねえ…そんな簡単に…」

「メリさんも訓練したいですよね? 相手します」

「んもう……」


メリは呆れて彼を見ている。


「銃の訓練はいいの?」

「こっちはもう極めてるんで!」


ソヴァンは拳銃を取り出すと、くるくると回してメリに銃口を見せた。


「ちょっと! 危ない危ない! こっち向けないでよ!!」


メリは笑って彼を見た。

ソヴァンも笑って、拳銃を腰にしまった。


「打ってくださいね、かっこいい長剣!」

「しょうがないわね…」


メリは鉄素材を見繕っていく。

ソヴァンは丸椅子に腰掛けて彼女を見ていた。


「ちょっと、そんなすぐにはできないわよ。ずっとここにいるの?!」

「メリさんのそばにいたいんで」

「もう…同じ船に乗ってるじゃない…ほんとストーカーなんだから」


メリが鉄を熱していると、トントンとドアをノックされた。


「は、はい!」


ソヴァンがドアを開けると、ハルクが立っている。


「ああ、ここにいましたか」

「あ、えっと……」

「ソヴァンさん、研究室まで来てもらっていいですか」

「は、はい……」


メリはソヴァンを連れて行くハルクをちらりと見た。

ハルクも一瞬メリを見ると、口を開いた。


「何作ってるんですか」

「ソヴァンの剣…ですけど…」

「…私にも打ってもらえませんか?」

「え…」


メリは驚いたようにハルクを見た。


「駄目ですか…?」

「いや、全然いいですけど…突剣でいいんですよね?」

「はい」

「わかりました! 任せてください」

「ありがとうございます」


ハルクはお礼を言って、ソヴァンを連れて鍛冶場を出ていった。


ソヴァンはそわそわしながらハルクについていく。

隣の研究所に入ると、うつむいた様子でハルクを見ていた。


「ソヴァンさん」

「は、はいっ!」

「拳銃を見せていただけませんか?」

「え…は、はい…どうぞ……」


ソヴァンはハルクに自分の拳銃を渡した。


「君たちがクラーケン退治に出ている頃、アグさんと話していたんですが、禁術解呪の薬をいれた弾丸を開発中なんです。これが試作なんですが」


ハルクは弾丸を取り出すと、ソヴァンの拳銃の弾を抜いて入れ替えた。


「フランジブルの9×16mm、ぴったりですね」

「あ、ありがとうございます…!」


ハルクは弾を元に戻して、彼に返した。

禁術解呪の弾も同様に彼に渡した。


「まだ5発しかありませんが…持っていてください」

「あ、あ、ありがとう…ございます」


ソヴァンはペコリとお辞儀をした。


「吃音症なんですか?」


と、ハルクは彼に尋ねる。


「え、は、はい…す、すみません……」

「謝ることではありませんよ。れっきとした病気なんですから」

「そ、そうですよね…で、でも…あんまり…し、知られていなくて…」

「そうですよね。大変ですよね」

「あ、で、でも…す、少しずつ…治って…い、いるんです…」

「メリさんとは普通に話していましたよね」

「は、はい…」

「好きなんですね」


ソヴァンはドキっとして、うんうんと頷いた。


「ハ、ハルクさんは…い、いないんですか…? す、す、好きな人は…」

「いませんよ」

「そ、そう…ですか…」

「幸せになってほしいって、思う人ならいるんですけどね」

「え…そ、それって、す、好きだからじゃ、な、ないんですか…?」


ハルクはふっと笑って、首を軽く横に振った。


「そうだ、拳銃の弾、他にも試作で作ろうと思ってるんですよ。何か案あります? 例えば煙弾とか、麻痺弾とか」

「つ、追加効果を…ふ、付加できるんですね」

「そうです」

「お、面白いですね…そ、そうだなぁ……」


ソヴァンは少しばかりハルクと話をした。

そのまま研究の話を聞いたりなんかもしたけれど、思ったよりも楽しかった。













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