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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第3章

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対戦・gemma

「やっ!」


メリはレイピアをついた。女のレイピアに受けられ、攻めきれない。

スキを見てレインが噛み付こうと襲いかかるも、女は軽い身のこなしでそれを避ける。


(ちぃっ…近接隊のメリとの連携…思ったよりやりにくいな…)


メリはレイピアを投げ捨て、双剣を両手に持ちかえると女に襲いかかる。女はレイピア一本で片方の剣を受けたが、メリのもう一方の剣を受ける手段がない。


(もらった!)


メリは女の腹に双剣を突き刺した。紫色の血が飛び散った。


(この女、シャドウ!)

「うっ!」


女は退き、傷跡に手を当てる。すると、花びらが傷跡を覆って、その箇所を治癒していく。


「無駄だ。お前たちは私たちに敵わない」

「どうかしら!」

「ふっ。すぐにelnathエルナト様がお前らの頭を倒し、他の仲間も皆殺しにするだろう」

「頭?」

「ベーラさん?!」


メリとレインは顔をしかめる。


「elnath様の前では、人間ごときになす術などない」


(べ、ベーラ…)


レインは目を大きく見開いて女をにらみつける。


今あいつは…城に一人で…


「レインさん! こいつは私一人でもやれます! 城に戻ってください!」

「メリ?!」


メリは笑った。


「最悪私には「核解放」がある。それにレインさんの相棒は、私じゃないですよね?!」

「メリ……」


(核解放…ジーマに並ぶ強さだと言っていたけど…)


「行ってください! まだ間に合うかもしれない!」

「くそっ!」


レインはそのまま城に向かって駆け出した。


「ごめんメリ! 絶対に死ぬんじゃねえ!!」

「わかってます!!」

「くそ! 逃がすか!」


メリは女の前に壁になるように鉄の盾をドスンと生み出した。


「あんたの相手は私!」

「ちぃっ!」


女はメリにレイピアを向けた。


メリも唇を噛み締めて女を睨む。


解放はしない…! 庭園のときみたいに仲間を殺そうとする可能性がある…。

私は私の力だけで、こいつを倒す!


紫色の血。こいつはただのシャドウ! 私はレア!

絶対に負けない!


メリはマシンガンを出すと女に向けて撃った。


「くぅっ!」

女はすべてを避けきれず、顔をしかめる。


女は傷だらけになりながらも何とか連弾の中を突破し、メリに向かって突剣をふるった。

メリはマシンガンを捨てると左手に盾を出してそれを受ける。右手には別の剣を創り出して女を攻撃した。


「くうっ!」

「やあっ!」


メリは女を斬り裂いた。女はメリから距離をとって、花びらを舞わせると身体を治療する。


(何なのよあの治癒力! あんなに深く斬ったのに!)


女はそのまま花びらを舞わせてメリに攻撃した。

花びらはまるでナイフのように固く鋭くなり、こちらに襲いかかる。

メリは大きな盾でガードするが、大量の花びらの攻撃を受けて盾は崩れた。


(見かけ以上の攻撃力!)


『決定打に欠けるんだよなぁ…』


実践訓練を終えたメリは、アグにそう言われた。


『どうしたらいいのかな…』

『メリが創り出す武器の攻撃力はあげられないのか? それか特殊能力がついたような…アリマで売ってた武器には雷付加した雷鳴剣とか、追従の弓とかも作ってただろ?』

『即席で作る武器は全部同じ程度の攻撃力。特殊能力の武器を作るには何日もかかるの。それに、能力は狙って作れるわけじゃないのよね』

『そうかあ…。じゃあ攻撃力の高い武器を使ったら?』

『攻撃力が高い=重いのよね。両手剣、大鎌、アシードさんの大剣カトリーナもしかり、持てなくはないけど、振り回せるかっていうと…。核の力があれば身体能力を強化して戦っていたから扱えたみたいなんだけどね』

『ふうん…。ああ、だったらさ…』



メリは腰に隠していた小瓶を取り出す。中には透明な液体が入っている。


(アグ…あんたはすごい…)


メリは持っていた長剣にその液体をかけた。


「何だ?! 薬?」


女はメリの行動を睨んで見ている。


メリは女に向かっていった。


(自分が強くなれないなら、相手を弱くするっ!!)


メリは攻防の後に、女を斬り裂いた。


「バカめ! 何度斬ったところで! ……っっ?!」


女は身体に痺れるようなショックを受けるのを感じた。



『道具に頼ってもいいんじゃないか』

アグはメリを研究室に連れて行く。


『何これ…』


並べられた小瓶の山にメリは顔をしかめる。


『色々あるよ。俺とハルクさんで作ったんだ。まあ、禁術解呪の薬の余りを使っただけなんだけどさ。こっちは毒薬。麻痺薬。睡眠薬…それから…』



「やああっ!!!!」


メリは一瞬痺れで身体を動せなくなった女に向かって、心臓に剣を突き刺す。


「!!!」


女は紫色の血を飛び散らせて、その場に倒れた。


「や…やった…! 私の力で…シャドウを…」


メリは息つく間もなく、異様な雰囲気の殺気を感じる。


「っ!!!」


そこには黒装束の男が立っていた。

頭も身体も真っ黒な服で覆われていて、見えるのは茶色い前髪と鋭く光る黄色い目だけだ。

この男が、今殺した女の仲間であることは明らかだ。しかしあからさまにオーラが違うのを感じる。


(れ、レアだ…)


メリは顔を引きつらせながら、その男を見る。


「お前もレアとは、驚いた。何故ゼクサス様を裏切る?」

「わ、私は…」

「あの方の考えが素晴らしいとは思わないのか? 悪いのは人間だ。人間が滅ぶのは当然だ」


男は大きく目を見開いて、彼女を見る。彼の黄色い瞳は真っ赤に染まっていくのがわかる。

メリはその男と目があって、動きを封じられる。


(何これ! 身体が…動かないっ!!)


男はにやっと笑って、メリを見ていた。




やっとヌゥに追いついたアグとソヴァンは、ヌゥの戦いの様子を隠れて伺う。


「はっ、早く助けないと…!」


ソヴァンが身を乗り出そうとするのをアグは止めた。


「ちょっと待て。馬車の周りの死体…あいつらはシャドウだ」

「シャ……ドウ……?」

「俺たち部隊が追ってる敵なんだよ…普通の人間じゃない」

「で、でも…このままじゃノエルが…」


(電気で身を守ってるか…シィトルフォスのクリスタルを加えて強化しといたけど…、あの放出量じゃ、もってもせいぜい10分てとこだな)


「ソヴァン。お前なら、ここからあいつに銃弾打ち込めるよな」

「う、うん…」


アグは弾丸を取り出した。


「そ、それは?」

「シエナの…俺達の仲間だった奴のライフル用の銃弾なんだ。シャドウが技を使えなくさせる薬が入ってる。これを撃ち込めばあいつは技を出せない。そうしたらヌゥは簡単に倒せる」

「む、無理…だよ! それはライフル用の弾でしょ? ぼ、僕の拳銃はね、と、特別製なんだ…弾だって専門の…」

「いいから見せろ!」


ソヴァンはやむなく腰の拳銃をアグに渡す。


アグはすぐに弾を取り出して形状を把握する。


(なるほど、フランジブル弾なのか…形状は一般的より少し小さめ…9×16mmってとこか)


「…ね、む、無理でしょ…」

「3分もらう!」

「え? ええ?!」


アグはその場でライフル用の弾をソヴァンの拳銃に合う銃弾に作り変え始める。


(う、嘘でしょ?! こ、ここで? な、何…何なの彼は…な、何者…?!)


アグは集中していた。近くの平らな岩を机代わりにして、弾を分解し、削っていく。


ヌゥは電気の量が減ってきた。


「ううっ!」


左腕の一部が更に溶かされる。


「ノエルが!」

「出来たっ!」


アグはその銃弾をセットして、ソヴァンに渡す。


「一発しかねえぞ」

「わ、わかってる!」


ソヴァンはgemmaに狙いを定めた。


(肌が見えているのは目の部位だけか…いいよ…眼球撃ち抜いてあげる)


ソヴァンは迷いなく引き金をひく。


ダン!


「っぎゃあ!!!!」


gemmaは鈍い悲鳴を上げた。ソヴァンの弾丸はgemmaの右目をピンポイントで撃ち抜いた。


(ま、まじで当てやがった…。こいつ…)


アグはそのえぐさに一瞬目を閉じながらも、敵を見据えた。


「誰だぁ!!!」


gemmaは完全に潰れた右目から血を吹き出しながら、弾が飛んできた方を睨みつける。


「骨まで溶かしてやる!」


gemmaは右手を開いて差し向けるが、泡が出ないことに気づく。


「はぁ?!」


ヌゥはgemmaの背後から、大鎌を抜いて襲いかかった。


「終わりだぁぁぁああ!!!!!」


デスサイズを振り切って、gemmaの身体を半分に斬り裂いた。


ヌゥは歯を食いしばって、落ちていくgemmaの身体を睨みつける。


(やった!)


アグは小さくガッツポーズをする。


「ノエルっ!!」


ソヴァンはヌゥに駆け寄った。

ヌゥはデスサイズを背中にしまうと、ソヴァンに笑いかけた。

腕と足首は溶けて消えてしまっている。


「ノエル…か、身体が…腕が……」

「大丈夫大丈夫。多分治るから」

「え…?!」

「おい! 無事か!」


アグもヌゥたちに駆け寄った。


「禁術解呪の薬なくなったって言ってなかった?」

「銃弾にした奴だけは残ってた…シエナに…渡すはずだったんだ…」

「そっか…!」


ノエルは溶けたヌゥの身体を痛々しそうに見つめる。


「ほ、本当に大丈夫…なの…」

「大丈夫だよ! ありがとうソヴァン! 君がいなかったら、やばかった!」

「ぼ、僕は…何も…」


ヌゥはまるで痛みなどないかのように、にこやかに笑ってみせる。


(奴らが狙っていたのはデスサイズとヌゥ・アルバート。それをソヴァンは知っていた…)


アグはソヴァンに言った。


「お前…本当はこいつのこと…」


ソヴァンもハっとして、うっすらと笑うと、ヌゥに言った。


「ノ、ノエルは…ヌゥ君なんでしょ?」

「え…?」


ヌゥは驚いたようにソヴァンを見つめた。














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