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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

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負けない心

ヌゥはエクロザに瓜2つのその女に連れられて、モヤをくぐっていく。


「エクロザさん…どうしてっ…」

「私は君の知っているエクロザではないのよ」

「……?!」

「私はエクロザのコピーなのよ」

「コピーって?!」

「それ以上、知る必要はないわ。あなたはもう、あの方の物になるのだから」


(あの方……ゼクサスのことか…)


モヤを抜けると、異空間にたどり着いた。

見たこともないような紫色の空に、広がる庭。その先には、巨大な真っ黒な城がそびえ立つ。


「下手な動きをしても無駄よ。私はエクロザ、時をあやつれる。あなたの動きを止めることも容易なのよ」

「……わかったよ」


先程、身体を動かなくされたのを思い出す。全く身動きかとれなかった。この人の前で抵抗は無意味だと、ヌゥにも理解できた。


(ここに…ゼクサスが…)


城の前までたどり着き、中に入る。

暗がりの廊下を進んでいくと、広間に着いた。

そこには庭園で見た鎌女シェラと、青髪の剣士がいる。


(青髪の男…こいつはジーマさんの言っていたアギというシャドウか…? それに庭園で戦ったシェラ……何だ…身体中がアザだらけだな…)


シェラは何も言わず、ヌゥのことを見ていた。

ヌゥもシェラと視線を合わす。

シェラは不安そうな目をして、顔をそむけた。


「ついに捕まえたのか」


アギは言った。


「ええ。オリジナルが力を使ったので、逆にその時空の歪を辿ることができたのよ」

「オリジナルの方はどうした」

「異空間に連れ込んで、時を止めてやったわ。当分動き出すことはできないはずよ」

「ふん…ようやくこの日が来たか」

「あの方もよく耐えました。20年もの歳月を待ち続けたんですもの」


エクロザは歓喜の表情を浮かべ、目を輝かせた。


「こいつの仲間はどうした」

「ソニアが捉えて時間を稼いでる。もう、ここにくることは不可能よ」


ヌゥは何とか彼らの話を理解しようとする。


(この女はエクロザさんのコピー…。本物のエクロザさんは動きを封じられているのか…くそ……)


目の前には3人のレアのシャドウ。動きを止められるエクロザさんのコピーまでいる。手は出せない。くそ…絶体絶命ってやつだ…。


「さあ、あの方が待っているわ。行きましょう」


ヌゥはエクロザに連れられ、奥の部屋の扉を開ける。

少し長い廊下を進んでいくと、1つの部屋の前にたどり着いた。

並みただならぬ気配が扉の奥から感じられる。


(この中に…ゼクサスが……)


ヌゥは唇を噛みしめる。


(あいつが、ミラに取り憑き、彼女に俺と同じ呪いをかけた。そしてリアナの身体を奪った…)


人間の憎悪から生まれたという、人外的な存在、ゼクサス。

あいつはレアのシャドウを仲間にして、人間をたくさん殺した。俺の仲間の命をも奪った。

ヌゥの心は、ふつふつと怒りが溢れていた。


「ゼクサス様、お連れしました」


エクロザはヌゥを部屋に通す。

その部屋は、病院の一室のように狭く、赤い血の入った点滴をつけ、ベッドに横たわっているゼクサスの姿があった。


「………」


ゼクサスの姿は、髪の色こそ異なっているが、記憶で見たリアナの姿をしていた。


(こいつが…ゼクサス……)


彼女はとても、やつれていた。

生気を今にも失いそうな、死ぬ直前の病人みたいに、弱々しい様子だった。

しかし彼女の中からは、溢れんばかりの憎しみのオーラを感じる。


(ミラの力が弱まっているのか……リアナの身体に宿るゼクサスもまた、弱っている…今ならこいつを…)


彼女はゆっくりとヌゥに顔を向ける。


「よく来たね…ヌゥ」


それは、リアナの声だった。


(リアナ……)


明るくて、心優しいリアナ。そうだ。君は、もう1人の自分に等しい存在。

ヌゥは自分の中のリアナの核が、共鳴しているのを感じる。


「ずっと、待っていたよ…」


ゼクサスはゆっくりと、優しいトーンで、ヌゥに話しかける。


「リアナから出ていけ……リアナを返せ……」


ヌゥは拳を握りしめて震えている。


(エクロザのコピー…こいつの力を封じさえすれば…ゼクサスを、殺れる…!)


ヌゥは足に電気を走らせると、加速した。


「お前っ!」


エクロザは、そのヌゥの速さに術をかけることが敵わなかった。

ヌゥはその一瞬で、ずっと隠し持ってい黄緑色の薬をエクロザに飲ませる。


(ゼクサスの前まで俺を連れてきたことに油断したな!)


「な…に……?!」

「コピー、お前に邪魔はさせない!」


(何?! 何を飲まされたの?! いや、とにかくこいつの動きを止めないと…!)


エクロザはヌゥの動きを止めようとしたが、術が発動しない。


「この薬…まさかっ……!」

「禁術解呪の薬だよ! 俺たちの切り札だ!」


(ずっと私に、これを飲ます機会を狙っていたの?!)


ヌゥはエクロザのコピーに雷を放つ。

術の使えないエクロザに、彼の攻撃を防ぐ手段はなかった。エクロザはその攻撃をもろに受け、気絶した。


「とどめだ!」


ヌゥは再び電気をためると、更に強い力でエクロザを襲う。


「エクロザ!」


しかし、ゼクサスはエクロザを守るバリアを生み出し、ヌゥの攻撃は弾かれた。


「ゼクサス!」


ヌゥはきっとゼクサスをにらみつける。


ヌゥは狙いを変更し、稲妻を走らせたその拳をゼクサスに向かって振り上げ、彼女を攻撃した。

しかし、彼女に触れる前に、彼女を守っているバリアのようなものに遮られ、攻撃を跳ね返された。


「っっ!!」


ヌゥは反動で後ろに飛ばされたが、靴を操作して何回転かすると壁に足をつけて蹴り飛ばし、再び彼女を襲う。

しかし、攻撃は全て見えないバリアに跳ね返され、ゼクサスに一切触れることができない。


「ど、どうなってるんだ…?!」

「無駄だよヌゥ。私に攻撃することはできないよ」

「くそっ………」


どうしてだ…何かに守られているかのように、どの攻撃も弾き返される。


ヌゥはハっとウィルバーの話を思い出す。


(そうか…あの槍…こいつを倒すにはあれが必要なのかっ…! くそっ、あれはエクロザさんがっ…!)


「無駄だよヌゥ…」


ゼクサスはゆっくりと立ち上がると、にっこりと笑う。


「っ!!」

「君の身体は、私のものだ。そして君の中にある、リアナも」


すると、ゼクサスのとりつくリアナの身体の中から真っ黒な闇が現れ、それは腕の形を成し、ヌゥを捉えようと襲いかかる。


(なんて禍々しい力っ!)


ヌゥはその憎悪の濃さに、顔を引きつらせる。


(くそっ!)


何だ…この恐怖は……。

足が震えて……動かないっ!


(駄目だっ…!)


ゼクサスはヌゥの身体にその腕を入れた。


「くはぁっ」


(来るっ…ゼクサスがっ……!!)


激しい痛みを感じる。

身体を侵食される感覚だ。

ヌゥは目の前が真っ暗になった。


(憎悪に飲み込まれるっ!!)


ヌゥは必死でゼクサスを追い出そうとするが、敵わない。そしてその闇の手は、ヌゥの中に眠るリアナの核を掴んだ。


「っ!!!」


ゼクサスはヌゥの中からリアナを取り出そうとする。


(リアナの、核がっ…!!!)


核はリアナの姿となって、ヌゥの前に現れる。

リアナはゼクサスに手を引かれ、連れて行かれようとしている。


【ヌゥ!】


リアナはヌゥに向かって叫んだ。


「リアナっ!!!」


ヌゥはリアナの手を握りしめた。


「渡すもんかっ!!!」


ヌゥは両手でリアナのその手を掴む。


【ううう!!!】


リアナは2人に手を引かれ、腕がちぎれそうな痛みに襲われる。


「くそっ!!」


リアナは苦しそうにしながら、ヌゥに笑いかける。


【ヌゥ、ゼクサスを倒して…】

「リアナっ……」

【ゼクサスの…人間の「憎悪」に負けないものはただ1つ。人間の持つ、「愛」だけよ。あなたにはその力がある。あなたはたくさんの愛に守られ、またあなたもたくさんの愛に溢れている。どうか…ラディアを宿したあのアグという青年と一緒に……ゼクサスを…倒して……】


リアナはそう言い残してヌゥに笑いかけると、ヌゥの手を離した。


「あ!!」


するんとヌゥからリアナの手が抜けて、リアナはゼクサスに飲み込まれた。


「ふふ…リアナは私の中で1つになった。あとは完全体となったこの核と共に、再びお前の身体を乗っ取るだけだ、ヌゥ・アルバート!!」


ゼクサスは薄ら笑いを浮かべながら、ヌゥの身体に入り込もうとする。


「っ…!!!!」


ヌゥはリアナを奪われた喪失感で心が空っぽになるのを感じた。


(リアナ……行かないで………)


ゼクサスは、その闇にまみれた真っ黒な身体で、ヌゥの身体にゆっくりと手を伸ばす。


(くそっ…尋常じゃない力だ…)


ヌゥは悲壮な表情を浮かべてゼクサスの腕が自分の中に入っていくのを見ている。


「来るな…来るなぁっ!!!」


ゼクサスは俺の中の憎悪に反応している…!


お願い…! 憎しみ…怒り……出ていって…!

俺を蝕むな…っ!


『俺がお前の盾になるよ』


アグ…!!


ヌゥはハっとして、目を見張った。


『アグといるとね、何だか懐かしい気持ちになって、安心するんだ…』


アグ…俺は…俺は……君のことが……


『やっと会えた』


初めて彼に会った時、俺は不思議とそう言葉にした。


ずっと、ずっと会いたかったんだ…君に…。


リアナ…君は最初から気づいていたんだね。アグの中にラディアがいること。俺はリアナで、アグはラディア。別人だけど、同じ心を持って生きてきた。リアナとラディアは、俺とアグが生まれる前から、互いに愛し合うことを、願っていた。


『アグのことが、大好きなんだって、わかったの…』


ねえアグは、本当に俺のこと、好きでいてくれる…?


『俺は…ヌゥ、お前が好きだ…。リアナの記憶は俺にとってはきっかけにすぎない。お前が男でも女でも、そんなのどっちでもいい…』


「?!?!」


ゼクサスはヌゥの身体から押し出されていく。


《何故だ?! 入り込めない…?!?!》


ヌゥは目を大きく見開いた。


「出ていけ!!!」


すると、ヌゥの髪が黒く、瞳は水色に変わっていく。

ヌゥの身体は、元の姿に戻っていく。


《完全体じゃなくなるっ…!! 憎悪が…足りないっ!!!》


「うああっ!!!」


ヌゥは身体からゼクサスを追い出した。













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