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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

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迷宮の扉

ジーマとアシードが青の扉を進んでいくと、ある部屋の中にたどり着いた。


地下に下がる階段、上に登る階段、階段以外にも扉がたくさんある。

その迷宮は灰色を基調とした壁で作られていて、床を歩くとカツカツと大きな音が響いた。


2人がその部屋につくと、先ほどやってきたはずの通路はすっと消えてしまった。


「何じゃここは」

「迷宮…か…」


すると鎧を着たうさぎが、2人の前に現れる。


「ようこそ迷宮の扉へ! ガイドのアームズです!」

「またうさぎが喋りおった!」

「黙ってろ…」


うさぎが歩くと、その鎧のせいで、かしゃんかしゃんと音がなった。


「ここでの試練は単純明快! 迷宮内をくぐり抜け、ゴールにたどり着けばクリアです!」

「ゴールって?」

「この迷宮から抜け出す扉が1つだけあるのです! 頑張って探してくださいな! 時間制限はありませんが、死んだらそこでおしまいですので、気をつけてください!」

「……」


アームズはニコニコ笑ってぴょんっと跳ねると、姿を消した。


「がむしゃらに進むしかねえのか…」

「こんなに扉があるんじゃぞ? どこから進めばいいものか」

【おい! おいって!】


鞘から出しもしないのに、黒鬼が話しかける。


「なんだよ…」

【ここには相当な大物がいるぜ! 俺に食わせてくれよ…今にも餓死しそうなんだよ…!!】

「……」


ジーマは部屋を見回す。扉と階段以外に変わった様子はない。

床を見ると、一面真っ白である。


「まずはこの階を回るか」


ジーマは黒刀を抜くと、その床に傷をつけた。


【よしきたぁっ! ついに飯にありつけそうだぜ】


黒鬼は姿を現すと、アシードを見た。


【なんだ?前菜か?】

「こいつは仲間だ。飯じゃねえ」

【うまそうな肉付きなのにな……くそ……】


鬼はアシードを見ながらよだれをダラダラ流す。

ただしアシードは、鬼がなんと喋っているかはわからない。


「おい…何でその刀を抜くんじゃ! めちゃめちゃこっち見てるぞ?!」

【腕だけでも食わせてくんねえかな……ハァハァ…】

「ここがスタート地点だ。よく覚えとけ」

【うん? なんだって?!】

「まあ、この迷宮がどうなってるかもわからねえからな。端から行くぞ」

「うむ! それでは行こう!我が同士たちよ!」

【お前の同士になった覚えはねえ! 脳みそ食い散らすぞ!】

「おい! 飯じゃねえって言ってんだろ」


ジーマたちは、5つある扉の中で1番右の扉に入った。


中に入ると突然弓矢が10本、こちらに向かって放たれた。

ジーマとアシードは剣でそれらを薙ぎ払う。


「いきなりか」

「あそこが発射台になっておるんじゃな!」


正面には2つの発射台が置かれている。

カチカチカチと次の矢を装填している。


「任せるのじゃ!」


アシードはカトリーナを盾に正面に走っていく。

発射台が打ち出す矢をその広い面で捉えながら、発射台をぶち壊した。


【飯はまだか飯は!】


鬼はつまらなそうにうだうだ言っていたが、ジーマは無視する。


「先に進む扉はないのか?」

「ないみたいじゃのう…」

「ハズレということか」


ジーマたちは前の部屋に戻ると、その隣の扉を開けて部屋に入った。


「今度は何も襲ってこないな」

「奥にも左右にも扉があるぞ」

「うん? 右にあるのはさっきの部屋じゃないのか?」

「開けて見るかのう」

「…気をつけろ」


アシードは右側の壁にある扉を開ける。


「部屋があるぞ!」


2人は中に入る。その部屋の床には格子状の石畳の模様が描かれており、先程の部屋ではない。


「さっきの部屋じゃないのか…?」

「どうなっとるんじゃ…。空間が矛盾しておるな…完全に迷宮じゃわい」

「……黒鬼、お前は、どう思う?」


鬼は腕を組んで偉そうにすると、答える。


【教えてほしかったら、まず飯を差し出せ!】

「なんじゃ? その鬼は、何かわかったのか」


ジーマは黒刀を自分の左腕に当てた。

その刃が少し触れるだけで、血がダラダラと出てくる。


【おお! 随分気前がいいな! いいのか? いいのか?!?】

「肉は食うな。やるのは血だけだ」

【わかってるわかってる! おおー! 喉の乾きが潤ってくぅぅうう!!!!】


ジーマの腕に吸い付く鬼を、アシードは顔をしかめて見ていた。


「おい、そのくらいにしておけよ」

【わかったわかった! ぎゃっはっは!!】


(くそ…だいぶ吸われたな…)


「おいジーマ、大丈夫かのう?!」

「大丈夫だ。この迷路にそんなに時間かけてらんねえからな。おい黒鬼!」

【わかってるって! 出口を見つければいいんだろ!】


そう言うと、黒鬼はどこかへ消えた。


「うむ?! 鬼が消えたが…」

「探しに行ったんだ。出口までのルートをな」

「そんなことができるのか?」

「あいつは実態でないからね。壁を通り抜けるのもわけないし、必ず僕のところに戻ってこれる。あいつは強い奴の匂いを辿れるんだ。この迷宮にはいるはずだ…、ラスボスがな」

「ふむ……」

「鬼はこの迷宮に入ったときから大物の気配を察していた。おそらく、そいつの近くに出口があるはずだ」

「なるほど…」


すると、黒鬼が脳内テレパシーのように、遠くから声を送ってきた。


【おい、1回違う部屋に移動しろ】

「…?」


言われた通りにジーマは別の扉に入る。


「ど、どこ行くんじゃ?!」

「黙ってついてこい」


2人は隣の部屋に行く。

すると、突然火の玉が2人を襲ってきた。

ジーマは透明な剣でその玉を斬った。


【すぐに別の部屋に移動しろ! 説明はあとだ】

「ったく…」


また言われた通りに、襲ってくる火の玉を斬りながら、別の扉を開いて移動した。


しばらくすると、黒鬼が戻ってきた。


【おい、見つけたぜ】

「やけに早いな」

【この迷宮、移動しているぜ】

「…?」


黒鬼は説明する。


【最初の部屋があっただろ。あの部屋以外は、全部移動してる。正確には、自分たちがいる部屋以外は常に動いている】

「さっさとお前に偵察させて正解だな。で、出口はあったのか?」

【もちろんだぜ! 俺は外から見てお前らに移動を指示する。それでいいな】

「ああ、頼むよ」


アシードは1人黒鬼と喋るジーマを見て首を傾げる。


「道がわかったのか?」

「そうらしい。ついてこい」

「わかったのじゃ!」


すると、黒鬼は姿を消して言う。


【部屋の移動は大体10秒間隔だ! 部屋に入ってすぐは、移動が止まるみてえだ。途中トラップもあるが、1部屋に使える時間は10秒だと思え! 失敗するとルートを見つけるのがやり直しになるぜ!】

「わかったよ!」

【次に部屋が移動したら行くぜ…! 正面扉だ!】


鬼の命令通りに進んでいく。


「アシード! 足を止めるな! 1部屋10秒で突破する!」

「何だかわからんが、わかったのじゃ!」


2人は足を止めずに部屋を駆け巡る。


【左の扉だ! そこを抜けたら階段で下へ降りろ】

「わかった!」

「うおお?!」


左の扉を抜けると、狼に似たモンスターが待ち構え、2人を襲う。


「次はどっちじゃ?!」

「階段で地下だ!」


2人は瞬時に全ての狼を切り裂くと、階段を降りた。


一体いくつの部屋を巡ったが、検討もつかない。

途中には落とし穴や、迫る天井や大きな岩、鎧兵が斬りかかってきたり、モンスターが襲ってきたりと、様々なトラップがめぐらされていたが、どれも2人にとっては容易く回避できる。


【そろそろ見えてきたぜ!】

「出口か?」

【いや、俺のごちそうだ!】

「……」


扉を開けると、そこにはこれまでの部屋の何倍もの広い部屋があった。そこには驚異的な大きさの、2本の角の生えた四足歩行の黒い魔獣が、うおおおと大きな唸り声を上げて立ちはだかっている。


「なんじゃこいつは!!」

【きたきたきた! 俺のご馳走ぅぅうう!!!!】

「おい! ちゃんと出口はわかってんだろうな?!」

【大丈夫大丈夫! 5秒でケリつけるからよぉ! あ、食い終わったら目の前の階段をあがったら出られるぜ】

「ならいいか…」


魔獣は2人に向かって襲いかかってきた。


【ぎゃーっはっはっはぁ!!!! 食い溜めしねえとなあ! 俺の主人はケチの極みだからよお!!!】

「黙れ」


その一瞬で、ジーマは魔獣を斬り裂いた。


「一撃じゃと?!」

「階段を上れ!」


鬼はそのまま魔獣を丸呑みして、そのまま消えた。

2人は急いで階段を上っていく。


「その先が出口だ!」

「うおお!」


ジーマとアシードは階段の先の扉をあけ、中に入った。

その先は美術館のようにたくさんの絵が展示されていた。


「はぁ…はぁ…ここは…」


奥の方では、きゃっきゃとアフタヌーンティーを楽しむ3人の女の子の姿があった。


「ジーマさん! アシード!」

「シエナ…皆も……」


すると、うさぎのアームズが、ジーマとアシードの前にやってくる。


「お2人共、クリアおめでとうございます!」

「……」

「まさか魔獣の部屋を選んでクリアするとは! あの部屋はなかなか入れないんですけどねえ!」

「…他にも行き方があったのか?」

「ありますよぉ! 生存率50%ですから! 魔獣の部屋に入った者は皆死んでいますから!」

「……」


(クソ野郎……自分の腹を満たすためにわざと向かったな……絶対もっと簡単なルートがあっただろ…)


ジーマは黒刀を睨んだ。

鬼は何も言わず、彼の言葉を無視した。


ジーマとアシードの元に、3人がよって来る。


「あれ? でも、ジーマさんは黒い扉に1人で入ったんじゃ…」

「いや、実は……」


ジーマはことのいきさつを話す。


「べ、ベーラさんが?!」


メリは目を見張った。


(ベーラさん…)


ベーラの気持ちをくみ取ったメリは、祈るような思いで彼女の身を案じた。


ジーマもまた不安な面持ちで、彼女たちに問う。


「ベーラはまだ、でてきてないよね…」

「そうですね…。私達だけですね…」

「ベーラ……」


(頼む……無事でいてくれ…)


ジーマもまた唇を噛み締めて、彼女の生還を祈る。


すると、アームズとルルがやってきて言う。


「黒の扉はまだ試練の途中です」

「しかしもう、2つの扉をクリアしましたので、黒の扉に入った彼女が、試練の続行が不可能と判断されれば、あなたたちはこのラビリンス《ミュージアム》から解放されます」

「ですので、もうしばらく、お待ちください!」


試練の続行不可能……それは彼女の死を意味するのだろうか……。


5人はその後、ベーラの生還を祈り、待ち続けた。


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