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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

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消えたエクロザ

レインは獣化すると、アグを乗せ、アジトに向かって走っていた。


「さすがに驚いたぜ。お前がヌゥに本気になるなんてな」

「…俺も正直信じられないです…」

「何言ってんだ! 皆の前で堂々と言いやがって」

「いや、あれは成り行きで…。でも隠すのも嫌ですし」

「ったく、メリが気の毒ったらねえよ」

「ですよね…はぁ…」


アグは深いため息をついた。


「本当、最低ですよね…」

「ああ、最低だな」

「……」


レインも複雑な面持ちで、颯爽と駆け抜けた。


「まあでもあれだ。お前の雷爆弾、あれがなかったら俺は死んでた。そのことはお前に感謝しねえと」

「役に立てて良かったです…」

「でもまたレアが増えたって…ソニアだっけ? もうこれ以上は勘弁してくれって感じだよな」

「そうですね…」

「てか、よく考えたらお前もレアのシャドウってことだろ? お前は何か能力ねえの?」

「俺には呪素が入ってないんで」

「何だっけそれ」

「俺もわからないですけど、呪術師の体から得られる何かで、それを体内にいれると能力が開花するらしいですよ」

「ふぅん、何か言ってた気がすんな!」


とはいえ、呪素についての見聞も、それを可能としていた研究者ヒルカももういない。エクロザさんが出来るのは核を入れることだけみたいだしな。禁術が使えるシャドウの作り方は迷宮入りだ。


そうこう話しているうちに、あっという間にアジトにたどり着いた。


「よっと」


アグをおろしたレインは一旦人型に戻った。


「誰もいねえな」

「ここです。俺たちがモヤに入ったのは」


アグとヌゥがモヤに入った場所にいくが、モヤもないし、エクロザもいない。


「……」

「もう城のどっかにいんじゃねえの? 自分でぽんぽんワープできんだろ? てか本当に信用できんのか? その女は」

「俺の記憶じゃ、俺とヌゥをシャドウにするのを手伝ってくれたし、一緒にゼクサスを倒そうって約束したんですけど…。リドル島で会ったときも、記憶の通り良い人でしたし」

「ふーん。まあ実際会ってみねえと何とも言えねえけど」

「…まあ、とにかくここにはいなそうですし、戻りますか」

「だな〜。腹も減ったしな」


レインはまた獣化すると、アグを乗せて城に戻った。




「ごちそうさまでした〜!」


女子たちはお腹が満たされ、幸せのオーラでいっぱいだった。

ベーラが会計を済ませると、馬車に乗って城への帰路についた。


「はぁ〜幸せ!」

「食べすぎちゃいました〜! 苦しいです…!」

「集合は16時からって言ってたわよね。まだ1時間半以上あるわよ!」

「城下町でもうろうろする?」

「そうね! そうしましょ〜!」


シャドウの襲撃など、まるでなかったかのように、街は平和を取り戻していた。

彼女たちは、女の子の服やアクセサリー、雑貨なんかが売っているショッピング街に足を運ぶ。


「うわ…」


ヌゥは引きつった顔をした。

シエナはそれを見てヌゥに言った。


「何で引いてんのよ!」

「いや、無駄にキラキラしてるなぁって」

「失礼ね! 無駄じゃないわよ! は! そうだ! いいこと思いついた!」

「な、何?!」

「あんた、その真っ黒の服! もうやめたら? 女の子になったからにはおしゃれしてなんぼじゃない?」

「え…いいよ俺は…さすがに興味ない」

「んもう! いいからこっち来なさいっての!」


シエナはヌゥの手を引くと、ひときわ広そうな洋服店に入っていく。

ベルたちは2人の背中を見ていた。


「シエナさん、何かスイッチ入りましたね」

「好きにさせておけ」

「私も見たーい!」


3人もその店に入っていった。


キラキラ輝くアクセサリーが並ぶ棚の向こうには、たくさんの可愛らしい洋服が並んでいる。


「これなんかどう? ねえ! 着てみてよ!」


シエナは花柄の入った青いワンピースをヌゥに渡す。


「す、スカートは勘弁してよ!」

「いいじゃない別に。デート用で1つ持ってたら」

「デート?!」

「アグとデートしないの?」

「しないよそんなの!」

「でもあれか、服従の紋があるから、ベーラを連れてくか、他に2人ついてかないといけないのか…あ! じゃあ私とジーマさんと、ダブルデートしたらいいじゃん!」

「はあ?! しないっつうの!」


ヌゥはシエナからワンピースを奪い取ると、棚に戻した。


メリはアクセサリーを見ていた。


「あ……」


並ぶ指輪を見ていたら、自分の指にハマった銀色の婚約指輪に気づいた。


「はぁ…」


メリは大きなため息をつくと、その指輪を外そうとしたが、どうにも抜けない。


「もう! 何なのよ!」

「どうしたんですか? メリさん」


ベルがメリの顔を覗き込んだ。

彼女もメリの指輪に気づいた。


「ちょうどよかった! ベル! この指輪のサイズ大きくして! 外したいの!」

「え?」

「いいから! 早く!」

「は、はい…」


ベルは言われた通りに指輪を少し大きくする。指輪は簡単に外れた。


(呆気ないなあ…本当に…)


メリはその指輪を見て、ため息をついた。そのあとそれをポケットにしまった。

ベルも神妙な面持ちで、何も言わず、彼女を見ていた。


「ねえ! 見てみて!」


ヌゥの服を選び終わったシエナは、試着室から出てきた彼女の前に皆を連れてくる。


「…何で皆見にきてるのさ!」


青いタンクトップ型のブラトップの上に、少し大きくて長めの白いロングシャツに、動きやすそうな細いシルエットの紺のズボンを履いていた。


「可愛いですよ!ヌゥさん!」

「うむ。似合ってるぞ」

「いいじゃない。動きやすそうだしね!」

「まあ、普段着はこんなもんでいいでしょう! 次はデート用のコーディネートしてあげる!」

「着せ替え人形じゃないんだよ俺は…。てかこの下着、うざい…」

「駄目よあんた! ちゃんと下着つけないとおっぱい見えるわよ!」

「はぁ…面倒くさいなあ……」


しばらくヌゥはシエナともめながらも、何着か着替えさせられた。

結局最初の普段着と、顔をしかめながらも下着も何着か買うことに決めた。


(てかもう…完全に女子じゃん…俺……)


ヌゥは可愛らしいふりふりのパンツを、汚れたものをもつかのように指でつまみながら、買い物かごにいれた。


買った普段着はそのまま着て帰った。

そんな感じで買い物を済ませた彼女たちは、城に戻った。



「おお! 皆どこに行っておったのじゃ?」


アシードとジーマがその辺で買った軽食をつまみながら、練習場のベンチでたむろっていた。

馬車から降りた女たちは彼らに近づく。


「ん!」


ベーラはジーマに近づくと手を差し出した。


「え? 何?」

「5000ギル。シエナのランチ代を立て替えた。お前が払え」

「はあ?!」


シエナは両手を合わせてジーマに謝る姿勢を見せる。

ジーマはしぶしぶ財布を取り出して金を払う。


(ランチで5000ギルて、一体何食べたんだ…)


「おお! ヌゥよ! 随分女の子らしくなったのう!」

「ええ〜そう? 普通の服じゃない?」


ヌゥは腕を上げて、自分の服を見回す。


「がっはっは! 似合ってるぞ!」

「そりゃどうも!」


ヌゥを見てうんうんと首をふるアシードに対して、シエナは言った。


「ちょっとおっさん! エロい目で見ないでよね!」

「失礼な! わしはそんな目でお前らを見たことなどない!」

「ふん! だから結婚できないのよ!」

「なんじゃとぉ?!?!」


皆が和気あいあいと話をしている、その時だった。


「!?」


突然、彼らの前にモヤが現れる。


「あ、あのモヤ!」

「私たちを過去に飛ばしたときのモヤです!」

「え? あれはエクロザさんのじゃ…」

「んん? どういうこと?」


すると、モヤの中から金髪の女が現れる。

あの時アギとシェラを連れ帰った女だ。

ジーマは叫んだ。


「お、お前は!」


すると、ヌゥもきょとんとして言う。


「エクロザさん!」

「え?!」


ジーマとアシードは、そう言ったヌゥを見て驚く。


彼女を見たことのないベーラたちは、首を傾げる。


しかし、その金髪の女は、ニヤっと笑った。


「やっと見つけた…ヌゥ・アルバート」

「え、エクロザさん?!」


なんだか様子のおかしいエクロザに、ヌゥは不審を抱く。


「一緒にいくわよ」


エクロザはヌゥの手を引く。


「え?!」

「ヌゥ君! こいつはゼクサスの仲間だ!」

「え?! 何言って…」

「はいはぁ〜い! 邪魔な皆さんは、私と遊びましょうね〜」


モヤの中からひょっこり顔を出したソニアは、ヌゥ以外の全員の足元を一瞬で消した。


「は?!」

「えっ?!」

「きゃあああああ!!!」


立っていた地面は真っ暗の穴となり、そこにいた皆は吸い込まれるように落ちていく。


「ソニア、あとは任せたわよ」

「はぁ〜い! それではまた後でぇ〜!」


ソニアもまた、その穴に飛び込んだ。

ヌゥは落ちていく皆を見て愕然とする。


「み、皆っ!」

「あなたはくるのよ! あの方が待ってるわ!」

「どういうこと?! エクロザさん! 離して!」


ヌゥはその手に電流を流そうとしたが、起動しない。


(え?!)


「無駄よ」


(違う…身体が…身体が動かない…!)


エクロザはそのままヌゥと一緒にモヤの中へと消えた。















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