表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/341

死神のカード

「シェラさ〜ん」

「何だ。もう《庭園》におびき寄せたのか?」

「そうですよぉ〜! それでは行きましょ!」


ソニアがシェラの手を引いて行こうとすると、アギがやって来て、彼らを止める。


「おい! どこ行く気だ?!」

「お庭の散歩ですよぉ!」

「はぁ?!」

「うふ! すぐに帰りますので〜! ゼクサス様のこと、お願いしますねぇ!」

「おい!」


そう言うと、ソニアとシェラはアジトの庭園に入っていった。


「……」


アギは呆れた顔で庭に行く彼らを見ていた。


ソニアの能力、それは、異次元空間に迷宮、即ちラビリンスを、創り出すことだった。ラビリンスに入るには、ソニアが生じさせた境界となる入り口を通るだけで良い。入り口はいくつも作ることができ、出口となる場所も自由に決められる。

そして、ラビリンスのルールをクリアしない限り、一度入った人間がそこから出ることはできない。


「ここ! 入口はここですよぉ!」


ソニアたちが庭園のある境界線を超えると、シエナたちと同じ、迷宮のような庭園にたどり着いた。

2人が行き着いた先には小さなテーブルがあって、アフタヌーンティーのセットが用意してある。


「…なんだよこれ」

「休憩所ですぅ〜。朝ごはん、まだでしたから〜」

「午後に食うやつだろこれ…」

「まあまあまあ。今、私のお友達のピエールがお相手してくれてますから! 少し待っていてくださいな」


ソニアは西洋風の白い花柄の椅子に腰掛けると、紅茶をいれて飲み始めた。


……悠長すぎかよ。

これから奴らを倒すってのに…。


シェラは自由奔放な彼女を呆れた様子で見ている。

まあでも確かに腹は減っている。シェラも向かい席に座ると、スコーンを手にとってかぶりついた。


「甘っ!」

「美味しいでしょう?」

「おいしいけど…朝は米派なんだよ…」

「まあ…それは失礼しましたぁ…」


ソニアは紅茶のシフォンケーキを頬張った。


紅茶ばっかだな……

はぁ…サンドイッチでも食うか…


そうして食べ終わった2人は、ワゴンの中に食器類をしまった。


「さて、それでは景気づけに!」


ソニアは何もなくなった机の上に、カードを並べ始めた。


「おい…なんだよいきなり」

「うふふ…占いですよぉ! よく当たるんですよ〜〜!」

「はぁ……」


完全にこの女のペースに乗せられてんな…。

タロットカードってやつか?

はぁ…占いねえ…。


「あらまあ!」

「なんだよ」

「シェラさん。今日はやめた方がいいかもしれませんよぉ?」

「はぁ?!」


ソニアは死神のカードをシェラに見せた。

黒いローブをまとった骸骨が、大鎌を持っている絵柄のカードだ。


「はっ…ははははは!」


シェラは大笑いした。


「何かおかしいですかぁ?」

「ソニア、それはオレにとって、1番のラッキーカードだぜ」


シェラは背中の大鎌を抜いて振り下ろした。


「縁起がいいぜ!」

「まあ! デスサイズですね!」


シェラはニヤっと笑った。


「さっさとぶっ殺してやるよ。裏切り者をな」 

「はい。お気をつけて〜」


シェラは呑気にくつろいでいるソニアを置いて、庭園の中に入っていった。


 


「な、何なのよあいつぅ!」


シエナは地団駄を踏んで叫んだ。


「な、何でシエナもここに?」

「え? メリがこの庭に入っていくのが見えたから」

「あのね…アグが…アグがいたの…」

「私も見えたわよ。でも、あれは多分、偽物よ?」

「えっ?!」


メリはがっくりとした。


「ごめんシエナ…敵の罠にかかったんだわ…。私のせいで、シエナも危険な目に…」

「何言ってんのよ! チャンスじゃない! あっちから来てくれるなんて! 私達2人でお手柄あげちゃいましょうよ!」


シエナはニコっと笑ってメリの背中をたたいた。

メリもそんな彼女を見て元気をもらい、にっこりと微笑み返した。


「でも、どうする? 見渡す限り庭なんだけど」

「迷宮というからには、出口があるはずよ」


その庭園は、木や花、芝生が幾何学的に線対称で飾られている。綺麗に切りそろえられた背の高い葉っぱの固まりは、まるで迷路のように道を作りだしていた。また時折、レンガを積んだ壁が行く手を阻んでいる。

空を見上げると、雲が流れているところが見える。ここは城の庭ではないのか…だとしたら、一体何処なのだろうか。


「なんか、秘密の国のアリスちゃんの花園みたい!」


シエナがそう呟いて、メリも同じことを思っていたと同意した。

2人はきゃっきゃと手を繋いで、その庭園の素敵さに対する感動を、ほんのしばらく分かち合った。


ガサガサ


突然奥の芝生が揺れる音が聞こえて、シエナとメリは構えた。

すると、ぴょーんと可愛らしい2足歩行のウサギが飛び出してきたのだ。


「う、うさぎさん?!」

「何? 何なの?! 敵なの?!」


ウサギは青いジャケットを羽織って、金色の縁のメガネをかけている。


「皆様! ソニア様のラビリンス《庭園》へようこそ!」

「う、うさぎさんが喋ってる!」


うさぎはにっこりと笑うと、丁寧にお辞儀をした。


「私はラビリンス《庭園》のガイドのピエールです!」

「ガ、ガイド?!」

「そうです! まあガイドと言っても、軽く説明させてもらうだけですけれど! ここはソニア様の創り出したラビリンスの1つ《庭園》です。ここでは様々な植物を堪能でき、まるで花園に迷い込んだお姫様の気分を味わうことができますよ〜」

「………」

「さて、《庭園》から抜け出すためには、ソニア様を探し出さなければいけません」

「ソニアって、さっきの女の子?」

「はい。残念ながら、この迷宮には出口がありません」

「え? ないの?!」

「はい。ソニア様に直接触れるか、何かしらの攻撃を当てることが出来たら、あなたたちの勝ちです」

「ふうん…そんなの楽勝じゃない!」

「シエナさん…相手はレアのシャドウですよ?!」

「あんなか弱そうな女の子、私の敵じゃないわよ!」


ピエールはふふふと笑った。


「ソニア様はああ見えてもかなりの実力の持ち主ですよ。油断しないことです」

「ふうん! まあ、やってみないとわかんないわよそんなの!」

「そして、あなた達もまた、鬼に追われる身となるのです」

「え?! そうなの?!」

「はい! 鬼に捕まるとあなたたちの負けです」

「負けたらどうなるの?」

「鬼に殺されるでしょう! 鬼は今回、あなたたちを殺すつもりでここに来ていますので」

「………」

「時間は無制限です! ソニア様を見つけるか、鬼に捕まるか! それでは隠れ鬼ごっこ、楽しんでくださいね! お姫様たち!」


そう言って、ピエールは消えてしまった。


「…は、はぁぁああ?!?!?!」

「し、シエナさん…これは…」

「まあいいわ! とにかくソニアって子をぶっ倒したらいいんでしょう!」


シエナはキョロキョロとあたりを見渡す。


(レンガ張りの壁があって視界が悪いか……私の見える範囲にはいないみたい…? んん?!)


「メリ! 避けて!」

「えっ?!」


突然庭園の地面が割れながら近づいてきて、2人を襲った。

シエナはメリの手を引いて、いち早くその攻撃を避けた。

地割れはレンガの壁の1つまで止まらずに進んでいって、その壁を破壊して勢いを失い止まった。


「な、何?!」


シエナが地割れが来た方向を見ると、見覚えのある女が近づいてきた。

メリもそいつを見てハっとする。


「へっへっへ! もう見つけちまったぜぇ!」


女は声を上げると、再び2人に向かって鎌を振り下ろし、地割れを起こす。

メリは巨大な盾を地面に突き刺すように出して、それを防いだ。


「この技は…!」


すると、赤いショートボブのその女は、大鎌を肩にのせ、のっそりと近寄ってきた。


「あんたは…シェラ?!」

「メリ・ラグネル……随分雰囲気が変わっちまったじゃねえか……」

「な、何であなたまでここに?!」


シェラはニヤっと笑うと言った。


「鬼は、このオレだからな!」


シェラは大鎌の先を2人に向けた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ