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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

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医療会とベル

「おい、水飲め!」


レインはベルに、コップに入った水を渡した。


「あ、ありがとうございます!」

「お前…少しは休んだ方が…」

「大丈夫です! まだ苦しんでる人がいますから!」


致命傷だった街の住民たちは、ベルのおかげで一命を取りとめた。しかし、けが人はまだ山ほどいる。

ハルク、メリ、レイン、アシードはけが人の看病や手当をしてまわった。


落ち着いたジーマとシエナも合流して、皆で街の人たちを助けた。


すると、休憩所の中に白衣を着たたくさんの人間が中に入ってきた。


「ここでけが人を保護していると聞いたのだが!」

「あ、あんたらは?」


レインが言うと、一番偉そうな立場の銀髪の男が答えた。


「医療会だ」


その数は30人近くいる。これだけ応援があれば皆助けられるはずだ。


「よし、B班とC班はここで軽症患者の手当だ。A班は手術室へ迎え!」

「あ、そっちは……!」


彼らの中でもエリートそうな、銀髪の男率いるA班と呼ばれた者たちは、ベルのいる手術室に入っていった。


「お、お前は…」

「リウム・ベル……」

「医療会を追放されたはずだ! なぜ医療行為を!」


医者たちは次々に声を荒げるが、銀髪の男は彼らの口を止めた。


「手術を続けろ。リウム」

「ルーシェさん……」


ベルにルーシェと呼ばれた銀髪の男は、そう言った。

ルーシェはベルが医療会に入ったばかりの頃、親切に色々教えてくれた医者だった。その腕も一流で、医療会でトップを狙える実力だったという。


「早く!」

「は、はい!」


医療会の助けもあって、治療は無事に終わった。


「彼女と、2人きりにしてくれないか?」


ルーシェは他の医者たちを部屋から出すと、ベルと話をした。


「ありがとう…リウム…」

「いえ…私は隠れて医療行為を……」


ルーシェは首を振った。


「私の妻も…君に救われた。君がいなければ死んでいただろう」

「…そうだったんですね。助けられて良かったです」


するとルーシェは、突然頭を下げた。


「リウム…すまない…」

「え…?」

「君が医療会から追放されるように仕向けたのは私だ…」

「……!」


どうして…ルーシェさんが…

あんなに私に良くしてくれていたのに…。


「私は君の才能が怖かった…。君がいたら医療会でトップになれないと思った私は、君が受け持った他国女王の手術の際、薬をすり替えた」

「………」

「本当にすまなかった。私はこの事を口外して、医療会を降りる。今からでも、君は医療会に戻って……」

「頭を上げてください。ルーシェさん」


悲壮な面持ちのルーシェを、ベルは優しい顔で見つめた。


「私は今、特別国家精鋭部隊として働いています。この仕事を辞める気はありません。私には…あなたの気持ちがわかります。あなたは素晴らしい医者です。女王様を死なせたことは許されることではありませんが、それを償うべく、医療会で働き続け、たくさんの人の命を救ってください」

「リウム……」


ルーシェは涙を流して、彼女に何度も謝った。


「すまない……リウム……本当にすまない………」


私も…大好きな皆を裏切りましたから…。

死ぬまで償うと、決めたんです。


ベルはルーシェの背中に優しく手をやった。


医療会はそのまま動けないけが人を引き取り、特別国家精鋭部隊にお礼を言って出ていった。部隊の皆は休憩所で休みをとった。


「やっと……終わったわね…」


メリは慣れない介抱に疲れて、休憩所に転がった。


「お疲れ様です」


ハルクは皆に飲み物をついで配った。


「ありがとうハルクさん」

「うむ! 感謝するぞハルクよ」


皆は飲み物を受け取って、休憩所に自由に座り込む。


「うう…」


ベーラが目覚めて起き上がった。レインは彼女に駆け寄る。


「おい、大丈夫か?」

「…レインか」


ベルもルーシェと話が終わって、休憩所に戻ってきた。

皆が揃ったのを確認すると、レインは言った。


「アシード……皆……すまねえ!!!」


突然レインが頭を下げたので、皆は彼に注目した。


「何じゃ?!突然」

「ど、どうしたのよ急に!」

「レイン?」


レインはゆっくりと顔をあげると、言った。


「アンジェリーナが……死んだ」


皆は目を見開いて、空いた口が塞がらなかった。


「うっうう……」


ベルは涙を流した。


「何があったのか、話してくれる?」


ジーマが言うと、レインは頷いた。

そしてレインは、過去に戻ったこと、疫病を流行らせたのがヴィリだということ、シャドウであるヴィリと戦い相打ちになった末、死んだ自分をアンジェリーナが命に変えて救ったことを話した。


信じられないようなことばかりのその話に、皆は頭が混乱したが、レインが嘘を言っているとは到底思えない。皆はその話を信じ、アンジェリーナの死を悲しんだ。


レインは酷く落ち込んで、その主人であったアシードに何度も謝った。


「顔を上げろ若僧。お前のせいではない。アンジェリーナはわしと同じ、騎士の心を持って、同士であるお前を助けただけじゃ」

「アシード……」

「お前はよく戦った。シャドウを倒したんじゃ」

「くぅ……」


レインは唇を噛み締めた。


俺の代わりに死んでしまったアンジェリーナ。

お前ともっと、話をしたら良かったな。

お前と言葉を交わせたのは、俺だけだったのに。


アシードは涙を流さなかった。


アンジェリーナ…お前は最高の仲間だったぞ…。

その気高き誇りにおいて、わしの仲間を救ったんだな……。

ありがとう…アンジェリーナ…。


今でもアンジェリーナの鳴き声を思い出す。


お前と過ごした日々を、忘れはしない。


アシードはレインをなだめながら、アンジェリーナに追悼した。


「そういえば、白いドラゴンを見たんだけれど。あれって…」


シエナは言った。アシードは答える。


「ゼクトたちじゃ。わしらを助けに来てくれたのじゃ」

「ゼクトたち…とは?」

「確か、鉱山に毒を撒いた人たちではありませんでしたか?」


アシードは頷く。


アシードは休憩所の外に出たが、彼らの姿はなかった。


「もうどこかへ行ってしまったようじゃな」

「そっか…。サバンナでのことも、ちゃんとお礼を言いたかったのにな」


シエナは呟いた。


「それで、私達はこれからどうする? ジーマ、アシード、お前たちが無事だということは、シャドウたちを倒したのか?」


ジーマは首を横に振った。


「いや、逃げられた……というよりは、撤退してくれた…のほうが正しいかな」


ジーマは2人のシャドウ、アギとシェラ、そして最後に現れた金髪の女のことを話した。

話が終わると、ベーラは彼に尋ねる。


「アジトはどうなった」

「破壊されてる…。でも、研究所は無事かな」

「そうか…申し訳ないが、アジトを建て直す力は今日のところはない」

「うん…。ここで寝ることもできるけど、国王に頼んで城の部屋を借りられないか聞いてこようかな…あ」


ジーマの元にポポが飛んできた。国王からの呼び出しの手紙だった。


「ちょうど良かったかな…ついでに話をしてくるか…」

「わかった。皆ここで待っているよ」


ジーマは1人、城に向かった。


(シャドウの襲撃が終わって、こんなにすぐに呼び出されるなんて…一体何の話だろう) 


ジーマが王の間に入ると、そこには王といつもの護衛2人に加え、セシリア姫が待っていた。セシリアは変わらぬ美しい姿で、彼を見ている。


「………」


彼女と対面するのは何年ぶりだろう。国王の間に呼び出される時、その姿をたまにちらりと目にすることはあったが、このようにはっきりと彼女の前に立つのは、部隊を設立してからは初めてだ。


彼女の淡いエメラルドグリーンの長い髪は、腰のあたりまであった。優しい青い瞳は変わらず、自分が護衛をしていたときはまだ子供だったのに、随分成長して、一層綺麗になった。

まあ当然か、部隊を設立してからもう15年も経ったんだから。


「おお! ジーマよ! よくシャドウとやらの襲撃を退けた。一部の地区からは死者も多数でてしまったが、ほとんどの住民は救われたと医療会から報告もあったぞ。街の修復も終わっているそうじゃないか」

「……力及ばず申し訳ありません」

「何を言うておる。シャドウを倒したのじゃ。お前はよくやった」

「………」


国王は思いの外、上機嫌だった。


「実は、ヴィリが死んだと聞いてな…。城下町で死体が見つかったそうじゃ。何か聞いておるか?」

「……ヴィリ様は、ガルサイアの国王に賄賂を渡し、子供たちの死体を集めてシャドウを作ろうとしていました。私の仲間の情報ですが、ヴィリ様はシャドウで、今回の襲撃を計画したのも彼だと聞いています」

「そうじゃったか……。ヴィリ王子との結婚により、バットラ国との和解を取り付けたつもりじゃったが…」

「10年以上前のあの戦争を、酷く恨んでいたようです」


国王はハァとため息をついた。


「奴に王権を継がせずに済んで、本当に良かったわい」

「…話はそれだけですか?」

「いや…それだけではない。単刀直入に聞こう。ジーマよ。お前、王族になる気はないか?」

「………え?」


国王からの突然の発言に、ジーマは耳を疑った。


「まだほんの一部にしか話していないことだが、わしにはもう時間がない。難病でな、あと数年の命と言われておる」

「………!!!」

「知ってのとおり、わしの血筋はこの愛娘、セシリア姫だけじゃ。ヴィリがいなくなった今、新しく王権を継ぐものを探している。お前がこの国を誰よりも愛しているのは知っているし、わしも心底信用しておる。どうじゃ、セシリアと結婚し、王権を継いでこの国を守ってはくれまいか」

「な……」


何を………


「…お断りします」

「まあ、そうすぐに結論を出すな……。今日1日、彼女の話も聞いてくれんかの。お前がセシリアの護衛をしていた時、娘に大変良くしてくれていたことも知っておるぞ」

「………」


ジーマは沈黙したが、答えた。


「セシリア様と話をするのは構いません…。でも答えは変わりませんよ…。それとは別に、私たちのアジトが襲撃されてしまいました。しばらくの間、私の仲間に城の部屋を貸していただけませんか?」

「よかろう。3階の部屋を全て好きに使うといい」

「ありがとうございます。一旦皆を呼んできます」

「うむ。後でセシリアの部屋に行ってやってくれないか」

「わかりました」


ジーマは城を出た。

そして城を振り返ると、大きなため息をついて、みんなの元へ向かった。

















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