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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

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チーム分け

「俺はね、ヒズミとチームを組みたいなあ!」


ジーマの部屋にやってきたヌゥは、にこやかに答えた。


「へぇ、そうなんだね。知らなかったよ」

「ねえ、いいでしょジーマさん!」

「うん、まあ大体誰と誰を組ませるか決まってきたし、前向きに検討してみるよ」

「ほんと? やったあー!」


ヌゥは嬉しそうに話していた。


「ヌゥ君は、剣で戦うのが得意なの?」

「ううん別に! この部隊に入って初めて武器なんて持ったよ」

「…!」


(この子はやっぱり……戦闘の才能がある…)


「アグたちとも話して、君に合った装備をさがしてね」

「うん! そうする!」

「じゃあ僕との面談は終わりにしよう。メリを呼んできてくれる?」

「おっけー!」


ヌゥは鼻歌を歌いながら、ジーマの部屋を出た。


(メリはどこかな〜研究所かな?)


ヌゥはアジトを出て、隣の研究所へ向かった。


「ねえ! メリいるー?」


中にはアグとハルクしかいなかった。


「鍛冶場にいるんじゃないのか」

「鍛冶場?」

「ここを出て隣にできた、新しい建物ですよ」

「ああ、なんかあったね!」

「ジーマさん、お前になんか言ってたか?」

「別に? 研究チームと相談して、自分に合った装備を探せって」

「そうか。バディについては?」

「どうなるかわかんないけど、ヒズミと組みたいって言ったよ!」


アグは無邪気に話す彼を見ながら、なんだか少し嫌な予感がしていた。


最近のヒズミさんは、どうも様子がおかしい…。

特にこいつや、俺の前では…。


「お前、ヒズミさんに何か変なことしてねえよな? 嫌がるようなこと言ったりとか…」

「え?! しないよそんなこと! なんで俺がそんなことするの!」

「…ならいいんだけどさ」


ヌゥは不思議そうにアグを見て、鍛冶場に向かった。


「メリはいるー?」


中に入ると、メリとヒズミがいた。


「あーら良いタイミング! 私の面談ね!」

「うん。ジーマさんの部屋、わかる?」

「わかるわ! アグにアジトは大体案内してもらったから」

「そ! じゃあ、いってらっしゃい」

「はーい。じゃあねヒズミ」


メリはニヤついた顔で彼にも声をかけた。


「え? ああ、ほなまた」


ヒズミは大好きなその子と2人きりになって、嬉しいような気まずいような、そんな気持ちだった。


「ねえ! ヒズミってメリと仲いいの?」


ヌゥは鍛冶場の丸椅子にあぐらをかいて座った。


「は?! 仲よーないよ、あんな性悪女」

「ちょっと、アグの結婚相手の悪口言っちゃだめだよ!」

「……そら悪かったな」


ヒズミは肘をついて顎に手をついて、ヌゥを見た。


「ねえ、俺たちチーム組めるかな」

「さあな〜。てか、何でわいと組みたいん」

「え? だってヒズミと組むのが、一番うまくいきそうだから」


ヌゥはいつものように笑顔を彼に向けた。


(はぁ〜。よぉそんなこと恥じらいもなく言えるで…。変な期待させんといてーよ…。それにしてもほんま可愛いやっちゃなー)


「それとも、ヒズミは他に組みたい人がいた?」


(おるわけないやろ〜)


「別に誰でもええけどな〜」

「えー? 駄目だよ! ヒズミも俺のこと推してくれないと!」

「いや〜、そんなん知らんしぃ!」


ヌゥはふくれっ面をして、不機嫌そうになった。


(なんやこれ。めちゃ気分いいんやけど!)


「いいよもう! 知らない!」

「嘘うそ! 怒んなって!」


ヒズミは彼の肩に腕を回して、もう片方の手で頭をくしゃくしゃにした。


「やめて! やめて!」

「ほんまに可愛いやっちゃお前は!」

「んもう! ヒズミ、嫌い!!」


2人がじゃれ合っていると、鍛冶場入り口のドアが開いて、アグが入ってきた。


「……」


アグは楽しそうな2人を見て、首をひねった。


(こいつ……わざと邪魔しに来てるんちゃうか?)


「面談終わったから1回大広間に集合しろって、ジーマさんが」

「はーい!」


ヌゥはヒズミの手をどけて、アグの元に駆け寄った。


「……」


アグは何も言わずにヒズミを見ていた。


(こいつがおらんかったら、わいが1番やのに…メリのやつに、ちゃんと見張っとけてまた言うとかなあかん)


(…なんかまた睨まれてる気がする。まあヌゥと仲良くしてくれてんならいいか)


皆が大広間に集まったところで、前衛隊はバディの発表があった。まあとりあえず仮のタッグで、実践訓練をしながら変更もするかもとのことだった。


アグもその話を聞いていた。


ベーラさんはレインさんと。長年チームを組んできた2人だ。戦闘スタイルで見ても相性はいいと思う。

レインさんの近戦術をベーラさんがサポートするんだろう。レインさんは物理攻撃のガードを高める防具だな…ベーラさんは攻撃はしないんだろうか…?


シエナはメリと。シエナは格闘家だが、あいつには検討してもらいたい武器がある…。メリは近遠どちらも行ける万能型。武器は自分で出せるから必要なのは防具か…。仲も良くなったみたいだし、メリの相手はシエナでよかったかな…。実践経験はゼロだから、訓練でどれだけチームワークを深められるかだな。


ヌゥは希望通り、ヒズミさんと組まされた。隠れ身の術は正直最強だと思う。ただ見えないだけで攻撃は食らう。敵が広範囲攻撃を持っていると厄介だが、そうじゃない限り敵の背後に簡単に回り込める。ヌゥは剣術の腕もそこそこいいが、1番の武器はスピードだ。それをうまく利用できる武器はないものか…。


そしてアシードさんがジーマさんと組む。部隊の古株だし一番強い2人じゃないだろうか。アシードさんの剣の威力は部隊一。メリがカトリーナを直して武器は更に強力になった。ただこの2人、実戦を見たことがほとんどない。訓練を見学させてもらったほうが良さそうだな…。ジーマさんも強い強いと言われているけど、視力もかなり悪くなって、今現在、実際の力量はどのくらいなんだ…。


「やったあ! ヒズミ! 一緒だよ!」


ヌゥは嬉しそうに、彼を見た。


「そらよかったな〜」

「もう! 何で他人事なの?!」


メリは浮かれているヒズミのことを、呆れた顔で見ている。


(なーにが、そらよかったな〜、よ! よかったのはあんたでしょっての!)


そしてアグは、そんな彼女を見ていた。


(……)


「ベテランと新人で組が偏ってる理由はなんだ?」


ベーラは聞いた。


「まあ、相性を加味して、たまたまそうなったっていうのもあるけど、やっぱりその方が気を遣わないかなって。上の子が下の子を気にかけるのも負担になりそうだしね。最終的には4人チームになりたいから、その時はバランスよく2組をくっつけるかな」

「なるほど」

「まあ、訓練してみてだけどね。今発表したのは仮のバディだ」


皆はそれぞれ自分の相手を確かめた。


「メリ! よろしくね!」

「うん! シエナと一緒でよかったぁ!」

「でもメリは大変ね。武器作成も訓練も両方やんなきゃいけないの?」

「大丈夫だ。俺とハルクさんでフォローする。ベルもいるし……、な!」


アグはベルの方を見て声をかけた。


「は、はい! 雑用でも何でも、言ってください!」


(アグさんと一緒に研究……役に立てるように頑張らないと……)


「やっぱりベーラしかいねえよな! 俺の相棒は!」

「相棒になった覚えはないが」

「んだよ。この4チームの中で、1番連携とれてる自信あるぜ。まあベーラが、誰にでも合わせるのが得意ってのはあるけどな」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


ベーラは腕を組んで、他の皆の様子を見ている。

アシードはジーマに近づくと、高笑いしていた。


「お前、わしと組んだらこの2人が最強になってしまうではないか!」

「そうでもないよ。僕は目もあんまり見えないし、もう戦力になんないよ」

「何を言うんだ。鬼憑きと呼ばれた天才が」


ジーマは黒い刀を抜くと、アシードに向ける。


【ひゃっはぁ!!! おい、こいつまじ肉分厚そうだぜ! 今夜は人間ステーキかあ?!】


黒刀の声はアシードには聞こえないが、この刀を向けられると物怖じせずにはいられない嫌なオーラをひしひしと感じる。

ジーマは小声で呟いた。


「次その名前で呼んでみろ…食わせんぞ」

「や、やめんか! その刀を早くしまえ」


ジーマは仕方なく刀を鞘に収めた。


【おい! 腹減ってんだぞこっちは! たまにはなんか食わせろ! おい! 聞いてんのか?!】

「喋んな…折るぞ」


黒刀は静かになった。

ジーマはにこやかな顔に戻って、みんなに声をかける。


「それじゃあ、研究チームと面談していこうか」

「せっかくなんでチームごとにして行きますか?」

「そうだね。じゃあレインたちから、行ってきてくれる?」

「あいよ」

「実戦は明日からにしよう。今日はチームで戦術を話しあってみて」

「わかりました」


アグ、メリ、ハルク、ベルの研究チームは、研究所に向かった。メリと同じチームのシエナも同行して、面談の合間にメリと話し合った。レインとベーラも同じく研究所に移動した。


「それじゃあ、僕たちは部屋で話をするから、ヌゥ君とヒズミはここで話していいよ」


ジーマとアシードも大広間を出ていった。


部屋に残されたヌゥとヒズミは、そのまま椅子に腰掛けている。


「ていうか、わいは元々潜入捜査担当やったのに、いつのまに前衛隊に入れられとん」

「ヒズミもシャドウ倒したりしてるじゃん」

「あんなんたまたまよ…正直レアのシャドウとか、実践訓練でみんなと戦うとか、無理なんやけど…」

「大丈夫だよ! 俺がついてるからさ!」

「随分頼もしいやんか…」

「で、戦術とか言われてもよくわかんないんだけど、どうすんの?」


ヌゥは机に身を乗り出して聞いた。


「まあそやな…あんたが強いのはわかってるし、忍術をどれくらい利用できるかやろな」


2人はそのまま話をしていた。



















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