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Shadow of Prisoners〜終身刑の君と世界を救う〜  作者: 田中ゆき
第2章

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ようこそメリ

ジーマは手紙の内容を皆に向かって読み終えた。

何やら、妖精の国リオネピアに、突然謎の女が現れ、国を襲って妖精を捕まえているのだという。

1人国を脱出し、海の上を彷徨った妖精の少女が、ユリウス大陸を見つけ、1番大きいこの国の城に直接やってきて助けを求めているのだという。


とにかくその少女の話を聞きに、城までやってきてほしいとのことだ。


(ほんとに…このタイミングか…まだ全員完治していないっていうのに…えっと、動ける人は……)


ジーマは皆を見渡した。


(ベーラにアシード、レイン、ハルク、ベル、そしてヌゥ君にアグ君か…あぁ、でもアシードは剣が折れたとか言っていたっけ…)


「とりあえずベーラと僕で、国王に話を聞いてくる。皆は待機してくれるかな」

「わかりました」


そう言って、ジーマとベーラは城に向かった。


「妖精だってさ〜」

「ヌゥお前、知ってんの?」

「知ってるよ! こ〜んな小さくって、羽が生えてて、虫みたいなやつでしょ?」

「虫はやめなさいよ! もっと可愛いんじゃないの! 絵本とかだと!」


(妖精か…。ノッカーも確か妖精の1人だったっけ。外には妖精の国なんてのがあるんだな…ちょっと気になる)


「人生初の海外旅行ってわけだな〜」


レインは呑気にそう言った。


「俺行ってみたい! 妖精の国!」

「ま、元気なやつが行くしかねえからな。俺とお前が行かされるのは濃厚だぜ」

「やったあー!」

「あとはおっさんとーベーラとー」

「わしは無理じゃ。カトリーナが壊れたから直してあげんとな!」

「はぁ?! 別の剣でいいだろ? アグが武器いっぱい作って、道場の倉庫に置いてあっただろう?」

「ならん。カトリーナとわしは一心同体!」

「だったらお前ももう死んでんぞ…」


メリはアシードに話しかけた。


「その剣、後で見せてもらえませんか?」

「うぬ? そういえばメリ、君は鍛冶屋だったと言っておったかな」

「はい! 武器を作るのが大好きなんです!」


メリは根っからの鍛冶職人だ。その腕は俺が保証する。


「だから身体から武器が気持ち悪いほどでてくるの?」


ヌゥはにこにこしながらメリに言った。

皆わかってるだろうけど、こいつに悪意はない。


「そうかもしれません。シャドウは元の人間の性格や趣向がその術に現れると言いますから。生きたシャドウは、その人オリジナルの技を持っています」

「ふぅ〜ん。すごいね。じゃあ、何か武器出してよ」

「ごめんなさい。まだ禁術解呪の薬が効いていて、何もできないんです」

「そっか。じゃあいいや」


メリと実際に戦ったことがあるのはヌゥとジーマさんだけだ。ヒズミさんとベルは会ったことがあるけど、正直他のメンバーはメリの姿さえも知らない。

戦闘中のメリを見れば、皆びっくりするだろうな…。俺もメリだとわかるまで、正直恐怖だったよ…。


「けどほんま、薬解けたら前みたいにキチガイになったりせえへんの?」

「わからない…。私の核であった呪人が、イカれたやつだったんで…」

「わからへんて、怖いんやけど! お願いやからそのまま、優し〜メリちゃんでおってよ! わいは怖いの嫌やねん!」

「アリスちゃんて…喋り方変だよね…」


メリはボソッとつぶやいた。


「なんなん? そのアリスちゃんて!」

「秘密の国のアリスちゃん、知らないの?」

「知らんし! なんなんそれ! なんでしかも、わいにだけタメ語なん?」

「なんとなく…」


メリはちょっとうざそうに、彼を見ていた。


「知ってるわよ! 秘密の国のアリスちゃん!」

「私も、昔好きでした!」


シエナとベルはうきうきした様子でそう言った。


「ですよね? 有名ですよね? アリスちゃん! 似てません? この人!」

「まあ確かに、髪の色一緒だし。ヒズミは顔可愛いからね」


シエナはヒズミの顔を見つめながらそう言った。


「なんや、嬉しないんやけど」

「本当はヒズミちゃんっていうんですか?」

「やからな、わいは男なんやで? メリちゃん」

「え?!」


メリはヒズミが男だとわかると、顔をしかめた。


「何の表情?! それ! なんなん?!」

「あ、あなたはアリスちゃんなんかじゃない! 騙したわね!」

「勝手に呼んどいてそれはないやろ!」


(おいおい。なんでヒズミさんに喧嘩うってんだメリのやつ)


「そういえば、ベルから名前と顔は聞いていたので、皆さんのことはわかるんですけど、ちゃんと話すのは初めてですね…」

「ふふ! 私はシエナよ! ねえ! メリは秘密の国のアリスちゃん、どの話が好きだった? 私は氷の王国で友達のピリカに裏切られるやつがすっごく好きだったの!」

「わかります! 私、すごく泣いちゃいました!」

「私もです…!」

「そう言えば、妖精を探す話ありましたよね!」

「金色の羽の妖精を見ると、幸せになれる!!」

「そう! それです!」

「ふふ! 私もその話を読んで、子供の頃本気で妖精を探したことがありました」

「カップルで見ると〜、必ず結ばれる!」

「そうですそうです!!」

「懐かしいですね〜!」

「ねえ、私にもタメ語でいいわよ、メリ。アリス好きに悪いやつはいないわ! 仲良くしましょう!」

「メリさん、私とも…その…仲良くしてください」

「うん! シエナ! ベル! これからよろしくね!」


なぜかアリスの話で女子の団結は深まった。まあ女の子同士仲良くなってくれるのにこしたことはないな。


メリは他の仲間たちの顔も伺いながら、声をかける。


「えっと…あなたは、レインさん」

「どうも」

「ライオンだったって、本当ですか?」

「本当だぜ」


レインはライオンの姿になってみせた。


「うわぁ!」


メリはびっくりして、尻もちをついた。


「バルギータでも見ましたが…近くで見るとすごい迫力ですね…!」

「そうかぁ?! ひっさしぶりだなその反応! ま、仲良くやろうぜ」


レインは人型になると、メリと握手をした。


「あなたは、研究職のハルクさん」

「よろしくお願いします。メリさん、武器のことにお詳しいんですね」

「まあ、それなりには!」

「後で、お話聞かせてください。研究に役立てます!」

「もちろんです!」

「我が名はアシードだ! 仲良くしよう! 君もこれから我が同士だ!!」

「よっ、よろしくお願いします! あとでカトリーナ見せてくださいね!」

「うむ!」


メリは部隊の皆と少しずつ馴染もうとしている。皆も優しいから、メリを受け入れてくれた。

ヒズミさんはつまんなそうにしているけど…。


(なんやの…わいのことなめてんのか、あの子…)


「ヒーズミ!」


ヌゥはヒズミのところにやって来て、彼の肩に手をぽんとやった。


「うお! なんや、ヌゥか」

「いや、アーリスちゃん!」

「お前! しばくで、まじに!」

「あははっ! でもほんと、ヒズミって綺麗な顔だよね」


ヌゥはヒズミの顔を覗き込んだ。

ばっちり彼と目があって、ヒズミの顔は赤くなる。


「なっ、近いし! もう! あっち行け!」

「嫌だよ〜」


(あの2人、ほんと仲いいな。ヌゥも友達がたくさんできたんだ。良かった…)


アグはうんうんと頷きながら彼らを見た。

そしてヒズミの機嫌は、ちょっと直った。



その頃、ジーマとベーラは城に向かっていた。

王の家来たちに案内されて、国王のいる間の前までたどり着く。


「よく言ったな、おまえも」

「ん? シエナのこと?」

「ああ。清々しい気持ちだよ」

「え? そう? 僕もそんな気持ちなんだよね!」


ベーラは彼を見て、ふっと笑った。


「着いたぞ」

「妖精って、一体どんな子なんだろうね」


ジーマはドアをノックした。


「入りたまえ」


王様の低い声がして、ジーマは扉を開け、ベーラと共に中に入った。


最奥の王座には国王が座っていて、その両隣に護衛が立っている。王はもう60代になって、顔には立派なふさふさのヒゲが生えていた。歳をとるごとに威厳がましている。女王は数年前に病死し、いつも謁見は王と護衛の3人だけである。


「ウォールベルト国が壊滅したと聞いたぞ。ごくろうであったな」

「報国が間に合わず申し訳ありません…」

「なあに。後でいつものようにまとめてくれれば良い。それよりジーマよ、お前その目は、ウォールベルトの連中にやられたのか」

「…そうです」

「はっはっは。鬼憑きと呼ばれたお前がそんな怪我をする日がくるとは驚いたよ」

「面目ありません…」

「まあよい。それほどに強敵だということじゃな。さて、ではリオネピアの使者をここに呼びたまえ」


国王に命令されて、家来たちが横の部屋から少女を連れてきた。


「妖精の少女キサティよ、こやつらがお前の国に行き、国を荒らすその女とやらを捕まえてくれよう。そこの部屋で、直接彼らに話をするがいい」


少女は、人間の子供と同じ大きさだった。

妖精が手に乗るような小さい生き物だというのは、空想らしい。

その見た目も人間にかなり似ているが、少し違う。


まず、肌が異常なほど白い。人間が死んだあとのような蒼白な色をしている。

そして顔つきも、人と少し違う。

鼻が高くて、瞳が異様に大きい。

明らかに人間ではない、異種族といった感じだ。


「それじゃあ、隣の部屋に行きましょう」


妖精の少女は頷いて、ジーマとベーラに続いた。


(妖精は、人間の言葉がわかるんだね…)


ドアを閉めると、少女は話しだした。



















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