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「そこまでだ! 散っていった仲間達、愛すべき全ての生命のため、この神剣でお前を倒す!」
勇者は光り輝く神剣を振りかざし、叫びました。
もはや呪いとも言える宿業を背負った勇者には、どれだけ有利になると分かっていても不意打ちを仕掛けることはできません。
無駄に堂々と正面から名乗りを上げ、相手の動揺が治まるのを待ち、これからこれで切りつけますよと神剣を見せつけ、『行くぞ!』と合図をして正面から切り込まないといけないという、恐ろしい制約が科されているのです。
当然剣を構えて魔法を放つなど騙し討ちのようなことは御法度です。勇者ですから魔法も強力ですが、魔法名を宣言してから放たねばならず、無詠唱も不可能です。
私ですか?当然無詠唱ですよ。詠唱なんて疲れるし無駄じゃないですか。詠唱してたら喉が渇くんですよね。
しかも強大な勇者の魔法は環境破壊を生じるレベルなのですが、勇者の呪い、もとい制約により、敵以外の生命を殺す可能性がある場合は発動しません。
恐ろしい呪いです。
そこに蚊が一匹飛んでいるだけで、ミジンコ一匹泳いでいるだけで発動しなくなるのです。
実際のところ勇者の攻撃魔法が発動したのは、魔王の眷属だけが存在する魔王の結界内のみなのです。
一撃で魔王城が半壊し、魔王軍はほぼ潰滅しました。さすがに魔王は生き残りましたが。
申し遅れました、私勇者の仲間で、女大賢者ということになっております。
「ふははは、勇者! 人質の王女がどうなっても構わんのかな?」
「はいはい、その下りは四天王のときにやりました。却下します」
「えっ!?」
「えっ!?」
私の言葉に勇者と魔王が驚いた顔で振り返ります。魔王、妙に男前の好青年風です。なんか若すぎませんか?
「王女はとっくに救出して、私が三重結界で守護しています。人質戦法の天丼は許可しません。もっとえげつない奥の手を希望します」
「えっ!?」
「えっ!?」
面倒になった私はアホ面の二人を爆炎魔法で吹き飛ばしました。
勇者も攻撃するのかですか? いえいえ、単なるツッコミです。勇者と魔王の称号持ちにこの魔法ではダメージがありません。
普通は吹き飛びもしませんが、私がワザワザ開発したオリジナルツッコミ魔法なので、あらゆる制約や加護を越えて対象を吹き飛ばし、受け身もとらせず頭から地面に落下させる、爆炎魔法に因果律操作魔法を載せた究極の魔法なのです。
因果律操作は神の領域で、例え大賢者でも不可能です。本当は魔王城まで出向くまでもなく、家で紅茶を嗜みながらでも魔王および魔族を滅ぼすことも可能だったのですが、それは秘密です。
しかし私はそれをしませんでした。できなかったと言っても良いでしょう。
それこそが、私の呪いであり制約なのです。
ハッキリ言ってしまえば世界最強は私ですし、勇者と魔王が束になっても私には敵いません。
それでも私には二人を殺すことはできませんし、世界を滅ぼしたり、世界を征服したりすることもできません。
あ、勇者と魔王が相打ちで死んでしまえば、裏ボスとして可能になるかもしれませんね。
私の称号はテンプレマスター。
テンプレを愛し、テンプレを守護する者。
そしてテンプレに縛られた愛らしい美少女なのです。




