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15 Happy Valentine’s Day -4-

 放課後は四人で集まってチョコレート交換会。

 売っているお菓子で済ませそうに見える美空ちゃんが、手作りのチョコクッキー。被服部で綺麗な手芸品を作るのが得意な都ちゃんが、売っているチョコにトッピングしたもの。割と意外な結果だった。


「実は、千草お姉さまに教えていただいた」

 恐縮して言う美空ちゃんは、そういえばお姉ちゃんと同じ寮だ。

「こういうのが苦手だと言ったら、中身からラッピングのやり方まで手とり足とり。前から思っていたが、千草お姉さまはやっぱり面倒見がいい」

 そうなんだ。お姉ちゃんが学校の調理室のオーブンを何日も私物化するだけの人じゃないということが分かって、私も嬉しい。


「ひかりのチョコ、楽しいね。可愛いじゃない。忍もやっぱりセンスあるねえ。私、手芸には凝るけど料理は苦手でさー。で、かわいいお菓子が作れるそんな二人には手芸の才能もあるかもしれない。被服部に入らない?」

「いや、ここは演劇部に」

 どうも都ちゃんと美空ちゃんと話していると部活勧誘が始まってしまうなあ。



 その後は別行動。バレンタインデーの女の子は、いろいろ回るところがあって忙しいのだ。

 私とひかりちゃんは駅へ向かった。ひかりちゃんはすっかり怖気づいちゃって、

「トイレに行きたい」

 とか、

「忘れ物した」

 とか言ってやたらに寮に帰りたがる。


 その度に、

「トイレなら駅にあるよ」

「待ち合わせに遅れるよ」

 と励まさなくてはならなかった。ひかりちゃん……自分のことになるとチキンだ。


 駅に着くと男の子たちはもう待っていた。

「これ……」

 ひかりちゃんはすごくぶっきらぼうに包みを突き出す。

「誤解しないでよね。義理だから。俊くんはその……家族だから」

 そう言ったひかりちゃんは耳まで真っ赤だった。


「やったー、チョコ確保ー!」

 玲人くんは相変わらず軽いな……。

「ね、忍は? 忍もくれるんだろ?」

 と催促されるが、

「あ、私はただの付き添いなのでチョコはないです」

 きっぱりと言っておいた。


「えっ」

 ものすごくショックを受けた表情になる玲人くん。

「忍からももらえると思ったから、わざわざ電車賃払ってきたのに」

 いや知らないよ。あげるとか言ってないからね、私。


「あのね、玲人。チョコをねだる前にあやまってよ」

 そしてひかりちゃんはやっぱり、玲人くんには強気だ。

「あんたのバカな嘘のせいで私、忍と大ゲンカしちゃったんだから。あやまれバカ!」

「えー。何でケンカ? どうせまたひかりが勝手に怒ってたんだろ。お前って怒りっぽいんだよ。鬼女ー」

「誰が鬼よ! いい加減にしろバカ男!」

 玲人くんを後ろからつかまえて、がしっと腕で首を押さえるひかりちゃん。慣れている感じのなめらかな動きだった。

 うーん、ひかりちゃんと玲人くんはいいコンビなんだろうか。とりあえず私はこの二人の空気には割り込めないなあ。


「何かごめん。迷惑かけたみたいで」

 俊くんがあやまってくれた。彼にだけはでひかりちゃんが怒っていた理由をSNS で伝えてある。他の人がいる前でパンツの話なんかされたら、女の子はもっと怒るってことも。


「いいです。ケンカになったのは私にも悪いところがあったので」

 私は言った。素っ気ないかもしれないけど、男の子はやっぱり苦手だ。

「あの……忍さん、俺に対する態度が前より冷たくなってない?」

「いえ別に」

 同居している女の子のパンツを手に取っちゃうような人だからって、軽蔑とかはしてないよ? 少ししか。



「えっ玲人、忍にマジだったの?!」

 ひかりちゃんの素っ頓狂な大声が聞こえた。名前を呼ばれてびっくりして私はそちらを向く。

「ばっバカひかり、大きな声出すなよ」

 あれ、玲人くんが焦ってる。


「言っちゃうもんねー、迷惑かけられたもんね。忍ー、玲人あんたが好きなんだってー。ホントに付き合えたらいいなーって思って、あんな嘘ついちゃったんだってー」

「やめろよひかり、ホントにやめろって!」

 玲人くん、泣きそうだよ……。ホント、ひかりちゃんはその気になると平然と意地悪なことをするなあ。


 しかしこの焦り具合を見ると、玲人くんは本当に私のことを好きだったのだろうか? だったらもう少し、私に対する気遣いとかが欲しかった気がする。

 ということで、

「ゴメンナサイ」

 早めにはっきりさせておくことにした。


「あー……」

 がっくりする玲人くん。

「っくしょう、ひかりのせいだぞ。てめー、一生恨むからな」

「私のせいじゃないもん。忍には好きな人がいるから、あんたとか初めから対象外だもーん」

 ひかりちゃん。ナチュラルに私の個人情報を口外するのはやめてくれませんか。

「えっマジ、そうなの?!」

 ほらあ、玲人くんが食いついてくるし。


「何、どんなやつ? 何年? 何部?」

 畳みかけるように質問されるが、何部って言われても。強いて言えば風紀委員会(顧問)。

「中学生じゃないよ。先生。大人。あんたとは……まあいろんな意味でかけ離れてるから諦めな。あんた忍のタイプじゃないし、むしろ引かれてるから」

 ひかりちゃん、容赦なさすぎ。こっちがハラハラしてしまう。全部事実だけど。


「何だよ先生かよオッサンじゃん。ってことで、そいつに飽きたら俺のことをよろしくおなしゃす!」

 とか言って頭を下げる玲人くん。あー、こたえないタイプの人なんだね……。

 ということでもう一回、

「ゴメンナサイ」

 きっぱりと意思表示しておいた。


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