15 Happy Valentine’s Day -2-
ひかりちゃんと一緒にカップチョコをたくさん作った。ひかりちゃんはトッピングが上手い。いろんな色を使ってすごく可愛いのを作っていく。
だけど、
「忍の大人っぽい。そういうのもアリなんだね」
ひかりちゃんは私のチョコに感心してくれた。お世辞かもしれないけどちょっと嬉しい。
「私のより、ひかりちゃんが作ったチョコの方が可愛いと思うけど」
「材料をどんどん使っちゃってるだけだよ。忍のはデコがホワイトチョコだけだったり、大きめの素材をワンポイントで使ったりさ。何か、おしゃれ」
うーん。私の場合はメインで渡す相手が先生と言うことで、あんまり可愛くしても仕方がないと言うかウケないだろうっていうか、そういう部分もあるんだけれど。
それにピンクのハートとか可愛い動物の形とかのパーツは子供っぽいって言われそうなので避けた。結果として、落ち着いた色合いの花の形とか幾何学模様とかになったんだけど。
というわけで、同じ材料を使ったのにひかりちゃんのチョコと私のチョコはそれぞれ個性的になった。
ラッピングは寮に帰ってから。作ったチョコは友達同士で交換する分もあるので、そこは別々にやることにした。当日の楽しみもないとね。
そしていよいよ二月十四日。今年のバレンタインは平日なので普通に学校はある。
事前に風紀委員会から『授業時間中のチョコレートの持ち込みは禁止。放課後、談話室などで交換することについては問題なし。ただし高価すぎるものは禁止』という注意事項のプリントが配られた。
というかクラスに配ったのは私だけど。風紀委員だから。
直前の風紀委員会ではk『口うるさく言っても毎回違反者がいる』と十津見先生が不機嫌に言っていた。
でも、みんなの気持ちもわかるんだ。仲のいい友達なら問題ない。でも憧れのお姉さまに渡したい子は授業が終わってすぐにクラスに行かないと、お出かけなさってしまうかもしれないし。
女子校であるためか、この日は妙な盛り上がりを見せるそうで部活が休みのところも多い。みんな前の学校の友達と約束していたり、友達同士でスイーツを食べに行ったり、とにかく外出の多い日であるそうだ。(寮のお姉さま情報)
そして風紀委員だというのに、先生の分のチョコレートを学校に持ってきちゃった私。
ひかりちゃんに『忍がとっとと十津見にチョコ渡してくれないと困る』と言われた結果だが、ちょっと不安だ。
夕方、駅まで玲人くんと俊くんに来てもらうようにお願いしているからなんだけど。言い出したのは私だから、駅まで付き添って行くことになっているから仕方ないんだけど。やっぱり不安である。……どうか見つかりませんように。そう祈っていたのだが。
三時間目が終わった後、速報が回ってきた。
「ヤバいよ! 二時間目に四年梅組のお姉さまがチョコを持ってるのを見つかって、クラス中持ち物検査をされて没収になったって! 三時間目のクラスもやられたって!」
四年梅組……。
私はひかりちゃんと顔を見合わせる。それは確か、由依お姉さまのクラスでは。
絶対に由依お姉さまだ。そう確信できてしまう私たち。やってくださいましたね、お姉さま。
ところでチョコ持ち込みはもちろん禁止なのだが、それに対する対応は実は各先生でかなりばらつきがあるらしい。お説教をする先生は厳しい方で、苦笑いしながら見なかったフリをしてくれるのがほとんどだと聞いている。
しかし一人だけ、断固とした対応を取る先生がいる。それはもちろん風紀委員顧問である十津見先生。
そしてうちのクラスの次の授業は、十津見先生の理科だった。
「ヤバいよ、忍」
私がチョコを持っているのを知っているひかりちゃんは慌てた。他の子たちも慌てている。みんな結構持ち込みしてるんだなあ、というのがよく分かる光景だった。
『隣りのクラスの同じ寮の子に預かってもらったら』
そう誰かが言い出してみんな教室を飛び出そうとしたが時、既に遅し。十津見先生が教室に入ってきて、
「全員、席に戻りなさい。そのまま起立」
と大きな声で言った。同時に授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
私は一報が入った瞬間からこうなることを予期していたので、諦めとともに事態を受け入れた。やっぱり持ってくるべきじゃなかったな、と反省はしていた。




