13 信じて踏み込む -6-
うーん。それは。
おばあちゃんの家のクリスマスを思い出す。ヤドリギの下に立っている女の子にはキスしてもいいなんて伝統が向こうの国にはあって。
もし、それが男女逆だったら。先生がクリスマスにヤドリギの下に立っていたら、私は。
「……出来る、と思うよ」
小さな小さな声で言う。
「うわ、マジか」
と言うひかりちゃんは完全に面白がっているな。
さて。
私が自分に友達と同等の価値がないと萎縮していたことが不誠実で、背信で、相手を信じていない行為だったと言うのなら。
先生の教えに従って、私は友達を信じてみようと思う。つまり具体的には、
「そんなこと言って、ひかりちゃんはどうなのよ」
逆襲してみる。
「玲人くんと私が付き合ってると思って怒ってたんだよね? ってことはひかりちゃんは玲人くんのこと好きだったの?」
「あ、それは違う。あれは弟みたいなもん。ないない、絶対ない」
ひかりちゃんは軽く流すけど。
さっきのひかりちゃんの真似をして、少しじとっと睨んでみよう。
しばらく黙って見つめていると、ひかりちゃんはそわそわした様子になってきた。
「ちょっと。そんなに見ないでよ。ホントだってば。……ホントなんだけど」
そう言って目をそらして、落ち着かない様子でうつむいた。
「絶対ないって思ってたんだけど、あれはヤキモチだったよね。……だから、玲人と彼氏彼女とか想像できないし、絶対ナシだけど、それでも……玲人に彼女が出来るのはイヤだって気持ちはあったのかも。玲人と一番仲良しなのは自分で、あいつのこと何でも分かってるって思ってたから……。あー、私って独占欲強いんだなあ。嫌な女だなあ」
ひかりちゃんはちょっと落ち込んだ様子だ。そこまでするつもりじゃなかった。何か悪いことした。
それに一番仲良しな相手に急に彼女が出来たらショックなのは私にも想像できる。
私だって、もし先生に……。
そう思っただけで心臓がキュッとなった。
先生は大人なんだし、私が知らないだけで彼女とかいるのかもしれないよね。
今まで考えもしなかった当然のことを、思い浮かべてみただけで息が詰まりそうになる。
もし彼女を紹介されたりしたら死んじゃうのかもしれないと思うくらいに、胸の痛みは強かった。
「……分かった。ごめん、気持ちわかるよ」
私は何とか意識をひかりちゃんの方に切り替えて言葉をしぼり出す。
おばあちゃんのところで受けた力をコントロールするための修行がこんなところで役に立つとは。修行してなかったら、私はしばらく会話できない状態になってしまっていたと思う。それくらいショックだったことが、もっとショックだった。
片想いでいい、と。どうせ叶わないのだから、と。そんな風に思っていたくせに。
都合の悪いことはずっと気付かないふりをして、気付いてしまったら勝手にこんなにショックを受けている。
私ってホントに、どれだけわがままなんだろう。
「そんなつもりじゃなかったんだけど、結果的に誤解を長引かせて苦しい思いをさせちゃってごめん。急には受け入れられないことってあるよね」
それだけ言うのも息が切れそうだった。
ひかりちゃんは弾かれたように私の顔を見て、
「ありがとう。……意地悪したこと、本当にごめん」
と言った。




