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6 友達の友達 -2-

 おしゃべりしながら電車で二時間。公式サイトを見ると、結構知っているゲームのアトラクションがあるようだ。

「あ、これ忍に貸してもらったゲームじゃない? 『ワンダフルプリンス』」

「あーそれ……」

 ママの好きなゲームだ。


 うちのママは、よそと比べるとたくさんゲームを買ってくれる人だと思う。ただし気軽に買ってくれるのは、ママが好きな感じの綺麗な男の人がいっぱい出てくる RPG とか乙女ゲームとかに限られる。それ以外のゲームは普通にテストを頑張ったり、お手伝いをいっぱいしたりしないと買ってもらえない。


 『ワンダフルプリンス』は去年シリーズ第八作が出た乙女ゲームで、ママは第一作(二十年前)からの熱烈なファンだ。

 うちには『ワンダフルプリンス8』のソフトがママ専用に一枚、私とお姉ちゃんがやる用に一枚、『布教用』という友達に貸す用が一枚と計三枚ある。こういう家はあんまりないと思う。

 お姉ちゃんが『もう飽きたのでやらない』と言うので、私は『布教用』を寮に持ってきていた。みんなに貸したら結構ウケた。


「鏡の世界に囚われたあなた。十二人のプリンスの助言を受け、脱出するルートを探しましょうだって」

「あー。3D迷路っぽい感じだね、きっと」

「あ、『ドラゴンスレイ』のシャフタ鉱山の高速トロッコだって!」

「ジェットコースターみたいだね。ひかりちゃんは、絶叫系好き?」


「……忍さあ」

 何だかまっすぐに見られた。

「これから遊ぶんだからさあ。もうちょっとテーマパークの世界観にひたろうよ。ゲームの世界に入る気分になろうよ」

「なんかゴメン」

 ノリが悪かったかな。そうか、ひかりちゃんって割と雰囲気を大事にするタイプだったんだ。気をつけよう。



 電車を降りてからは、待ち合わせ相手のお友達と電話で連絡を取り合っているひかりちゃんの後ろをひたすらついて歩く。

「え? どこ? わかんない……階段の下に改札?」

「ひかりちゃん、こっちにも改札あるよ」

 私はちょうど通りかかった駅構内の案内図を指す。大きな改札口の他に、ひとつだけ端の方に小さい改札があるみたいだった。

「あ、きっとこれだ。忍、サンキュー。……ねー、東口ってヤツ? うそー遠いじゃん、先に言っておいてよ!」


 ひかりちゃんの口調は、私が今まで知っていたものより気安い。そのお友達とはきっと仲がいいんだろうな。

 そう思うとちょっとだけ胸がざわついた。ひかりちゃんに、私より仲のいい友達がいる。そんなの当たり前のことなのに。家が隣りで小さい時からの仲良しだっていうんだもの。

 なのに何だか自分の居場所がなくなってしまうような気がして、不安になった。



 階段を降りると改札が見えた。その先に男の子が二人所在なさげに立っていた。

「玲人ーー!」

 ひかりちゃんが片手を挙げた。え?

「おー、ひかりー。遅いよー」

 男の子の片方もこちらに向けて両手をぶんぶん振る。ええ?



 確認する暇もなく改札をくぐり抜けたひかりちゃんは、二人を紹介してくれた。

「こいつ、玲人。生まれた時から隣りに住んでる、弟みたいなもん。こっちはえーと、俊くん。玲人、俊くん、この子が忍。百花園で一番の親友。おとなしい子だから、いじめちゃダメだからね」

 そう言ってひかりちゃんは玲人くんを軽くにらむ。

 私はひかりちゃんのお友達が男の子だった衝撃と、一番の親友と言ってもらえた嬉しさの両方でフリーズしてしまい、とっさに頭を下げることしか出来なかった。


「すげー、おとなしい系お嬢様。ひかりと全然違うじゃん、マジで友達なの?」

 玲人くんが嬉しそうに手を叩いたが、何だか見世物になったみたいですごく恥ずかしい。

「引かれてるよ、玲人」

 俊くん……がたしなめるように玲人くんの肩を叩いた。静かで落ち着いた話し方だった。


 年上かな。年上だよね。俊くんじゃ失礼かな。

「俺は俊明。俊でいいよ。よろしく」

 右手を差し出してくれる。おずおずと握り返そうとしたら、

「そんなことより早く行こうよ。遊ぶ時間なくなっちゃうよ」

 ひかりちゃんに反対の手を引っ張られた。


「俊くん、チケットは?」

「ああ、親父さんから預かって来た」

 俊くんさんはゲームのイラストが印刷されたチケットを二枚、お財布から出してひかりちゃんに渡した。

「チケット代っていくらだったっけ」

 私もお財布を出す。ひかりちゃんは『いらないいらない』と手を振った。

「お父さんの仕事先の人がいっぱくれて余ってるから、タダでいいって」


 それじゃ、さっき十津見先生に言ってたことは半分は本当だったんだ。でも。

「それじゃ悪いよ」

「いいからいいから。気にしない気にしない。玲人もお金払ってないから」

「おー、俺もおごられてますっ!」

「……ひかりもこう言ってるし、いいんじゃない?」

 最終的に俊くんさんにそう言われて、私もお財布を引っ込めた。


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