5 友達のお願い -2-
その週の金曜日。そろそろ眠ろうと自分の部屋に戻ったらノックの音がした。ドアを開けてみると、さっき『お休み』と言い合って別れたばかりのひかりちゃんだった。
「忍、ごめん。ちょっといい?」
消灯時間まではまだ時間があったので、うなずいた。ひかりちゃんはスマホを手に持って、なんだかちょっと話しにくそうな様子だ。
「あのね。今度の日曜日、ヒマかな」
「日曜日?」
私は首をかしげる。お姉ちゃんの結納で家に帰らなきゃいけない日があるけど、それは二月になってからだ。
「特に何もなかったと思うよ」
私は部活も不定期に顔を出せばいい料理部だけだし、割と暇な日は多い。
「良かった」
ひかりちゃんは嬉しそうな顔になった。
「だったらお願いがあるんだけど。あのね、私の家の隣りに住んでる子で、ちっちゃい時から仲良しなのがいるんだ。その子が今度の日曜に、一緒にワンダーパークに行こうって言ってるんだ」
ワンダーパークは学校から電車で二時間ほど離れたところにあるテーマパークだ。ゲーム会社と提携していて、ゲームの世界に入ったみたいなアトラクションがあるんだとか。
「でもさ、私が苦手なやつが一緒に来るんだ。顔合わせると気まずいから、だからお願い。忍が一緒に来てくれれば心強い」
「え」
どうしよう。ひかりちゃんのお願いは聞いてあげたいけど。
「だけど、ひかりちゃんの小学校の友だちばっかりなんだよね? 私がまじったら邪魔じゃないかなあ」
ちょっと気後れしてしまう。
「あ、そういうわけじゃないの。同じ学校だったのはその、隣りの家の子だけ」
ひかりちゃんは違う違うと手を横に振った。うーん、ということは。
「えっと、じゃあひかりちゃんのお友達がお友達を連れてくるの?」
ひかりちゃんもよく知らない子だから気まずいとか、そういう感じ?
「んー、まあそういう感じ。あの二人は仲いいみたいなんだけど、私はちょっと……さ」
ひかりちゃんは言葉を濁した。それから、
「あ、でもイヤなやつってわけじゃないよ。何て言うか私とは相性が悪いっていうか、それだけで。忍のさー、小学校の時の友だちみたいにわがままなやつじゃないから」
前に彩名ちゃんのことを愚痴ってしまったことがあるので、心配してくれたみたいだ。
ひかりちゃんはいつも優しいし、私が誰かにきついことを言われるといつもかばってくれる。そんなひかりちゃんが頼んでくるのだから、きっと相当のことなのだろう。
「分かった。それなら……一日だけなら」
私がうなずくと、ひかりちゃんはパッと顔を輝かせた。
「ホント? ありがと! 忍、ホントにありがとうね」
その笑顔を見ていると私も嬉しくなる。うん、引き受けて良かった。
「あのさ、そいつらとは別に無理に絡まなくていいから。二人で遊びに行くつもりで行こう。私さ、一度行きたかったんだ、ワンダーパーク」
嬉しげに言って、また相談しようねと言ってひかりちゃんは部屋に戻って行った。
私もちょっとだけ、その日が楽しみになった。




