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5 友達のお願い -1-

 翌日は講堂で全校集会があった。昨夜先生が言っていたように、『報道陣への対応に気を付けること、特に自宅生は登下校時に十分注意すること』と話があった。しばらくは部活の活動時間も短縮されるそうで、運動部の子たちが落胆していた。


 登壇した十津見先生は、

「既に騒ぎを起こしている生徒も数名いるので、これ以上学校の評判を落とさないよう十分に考えて行動するように」

 と厳しく言った。お姉ちゃんのクラスの方をにらんでいたような気もするが、まあいいや。


 秋の騒ぎで少なくなったクラスメートは、年を越して更に少なくなっていた。

「教室が広くなっちゃったわね」

 担任の嵯峨野先生はちょっと寂しそうにクラスを見回したが、

「みんな、またここに戻ってきてくれてありがとう。年度末までこのメンバーで楽しく過ごしましょう」

 と笑顔で言った。


 学校や警察の連絡先の書かれたプリントを改めて配布される。『天馬さん』のことを思い出してちょっと嬉しくなった。

 それからすぐに冬休み明けの小テスト。ほぼどの教科もテスト。二期制の百花園では学期の途中に長期休暇がはさまってしまうので、今まで習ったことを忘れないために(と先生方は言う)休暇明けは必ずテストの嵐だ。


 成績があまり悪いと十津見先生に会わせる顔がないから、休み中にもなるべく勉強はしていた……つもりだ。だいたいは答えが書けたと思うけど、せめて理科だけはいい成績が取れているといいなあ。



 ちなみに私の名前はやっぱり下駄箱前に張り出されていた。お姉ちゃんたち三人組の方が上に大きく書いてあったけど、自分の名前も書かれていたことには違いない。そして名前と一緒に違反の内容も書かれる。お姉ちゃんたちと同じ『校外での本校生徒らしからぬ振舞』より、『廊下を走ったこと』という百花園の規則をよく分かっていない新入生みたいな理由を書かれたことがすごく恥ずかしい。



 お姉ちゃんと私が二人して休み明け早々校則違反をしてしまったので、学校から連絡を受けたママがまたびっくりして電話をしてきた。お姉ちゃんはこういう時、うまくママをはぐらかしてしまう。けれど私にはどうしてもそれが出来ない。

 ママのお説教を延々と黙って聞いて、また転校の話を蒸し返されると『イヤだ』と言い張るだけ。ちっとも上手に話が出来ない。本当に不器用で自分で嫌になる。



 生徒指導室への呼び出しを覚悟したが、それはなかった。不思議に思って、理科のテストの後で教室を出ようとする十津見先生を引き留めて、

「あのう」

 と聞いてみる。


「君か」

 先生はせかせかと答えた。

「違反の件ならあの程度のことでいちいち呼び出しをかけるほど、今は暇ではない。朝晩道端に立って、面倒ばかり起こす記者を自称する奴らと思慮の足らない生徒たちを監視しないといけないからな。君は十分に反省して、新年早々廊下で短距離走の練習などしないように」

 そしてテスト用紙を抱え直してさっさと立ち去ってしまった。


 呼び出しされて叱られるのはそれは恥ずかしいし情けないけど、先生と話せる機会が減ってしまったみたいでちょっと寂しかった。でも生徒指導室で二人きりになったらやっぱりまたあの話を思い出してしまいそうで、安心したような気もしないでもない。

 どうして大好きな人とお話しするだけで、こんなに緊張しなきゃいけないんだろ。あんな話、本当に聞かなきゃよかった。



 そうしてあまり先生と話が出来ないまま一週間ほど経った。その間に、外では秋の事件に関連して『百花園生を中傷するような内容』の記事が載った雑誌が発売されたらしい。

 また全校集会が開かれ、教頭先生が改めて『学校側は厳重に抗議した。根拠のない中傷に負けずに誇りを失うことなく過ごしてください』とおっしゃった。

 夜、談話室の横を通ると上級生のお姉さまたちが『エンコウ』とか『ウリ』とか小さな声で言い合っているのが聞こえた。


 私は退院してから知ったのだけれど、この学校には良くない薬を生徒に配ってお金を取っている人がいた。秋の事件はそれが原因だったのだ。

 二人も死んでしまって、犯人がつかまった後も噂を立てられて、学校を出ると知らない大人に付きまとわれて、先生だってあんなに忙しそうで、あの事件を起こした人はやっぱり許せない。


 ……それにしてもウリって何だろう。援交は分かるけど瓜? 意味が分からない。


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