Level #3
どんどん行きましょう!
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ミヤ。
人前でプレイヤーネームを名乗る経験などあるだろうか。おれは今、その状況にある。
「本名は江上有栖よ」
「よろしく」
ってなにを?ついつい挨拶しちゃったけども、一応敵なんだよな。
「エリのアビリティーは?」
「っわたし?思念伝達よ」
「へぇーそれはすごい……のか?」
「無理に話を合わせなくてもいいわよ。まだいろいろと混乱しているでしょうしね」
「あははは……面目無い」
いきずまった話は盛り上がることもなく、ただ虚しい時間が過ぎていた。
「まぁ結局戦うんだしね、ここで死ぬならそこまでってことで。プレイ・スタート」
彼女の声につられたようにスマホが光る。察するに殺し合いが始まるらしい。
身構えることもなくただ凡庸に突っ立っているおれ。
彼女もまた表情を変えることなく立っている──ように見えた。
「え?」
次の瞬間。おれの腹部には鋭く尖った刃物が突き刺さっていた。
ポトポト落ちる赤い液体は全て血。傷口がズキズキと痛み、熱とともに身体中を回る。
立っているだけで気を失いそうになるその状況で、おれはなにを思っただろう。
少なくともまだ死ねない。あの男に会うまでは……。
◆ ◆ ◆
『死ぬのには早くねぇか?もうちょっと足掻けよ』
『お前にはまだ使ってねぇ力があるだろ』
『時間を巻き戻せ』
『滅亡までのカウントダウンを始めた世界を救う王となれ』
『時間巻き戻し』
◆ ◆ ◆
今のはなんだ。まるで時間が止まったみたいな。
「まぁ結局戦うんだしね、ここで死ぬならそこまでってことで。プレイ・スタート」
ん?これは……さっきもあったような。いやあったな。ってことは……やっぱり。
腹部に感じたことのある感覚。鋭利な刃物が肉体の奥深くまで突き刺さってそこから痛みが広がっていくこの感じ。
再び落ちる赤い血が地面を染める。
◆ ◆ ◆
「え?死んだ?カッコつけて行ったのに?」
「マジかよー」
「まぁでも思念伝達使いならしょうがないか」
「おれがやるからお前はみてろ」
◆ ◆ ◆
「まぁ結局戦うんだしね、ここで死ぬならそこまでってことで。プレイ・スタート」
「てなわけで3回目だ。さすがにもう死なないぜ!」
おれではないその男はおれの体を使って喋っている。
対しておれは自分の体を遠くからみているような感じだ。
さっきと同様にエリは動いていないようにみえる。しかし、刃物は気付ば刺さっている。これでは防ぐことは不可能だ。
その瞬間、おれの体はおれではないような動きをし始める。刃物での攻撃を予測して回避するのは勿論、エリの姿を正確に捉えて刃物を振り落とす。
合気道のような違うようなそんな適当な技でエリの体は地についた。
「あらよっと。これぐらいでいいだろ」
「ぐはっ……強い」
エリの悲鳴が響く。
すぐさま体制を立て直してくるが男は全く動じない。
同じように巧みな護身術で身を守り相手のバランスを崩す。
ならば……と言わんばかりに強張った目をした彼女の手には銃。
なんの躊躇いもなく引き金は引かれ、その弾丸は真っ直ぐに向かってくる。
が、しかし、これまた動じることはなかった。一歩足を踏み出して最小限の動き回避をする。
秒速800メートル近い銃弾を肉眼で捉えることは出来るはずもない。男が見ていたの銃弾ではなく、銃口だったのだ。銃口の方向からどの位置にくるかを予測し、持てる全てを最小限の行動で回避に当てる。これにより銃弾はまるで体をよけるように飛んでいった。
そして、男はエリを完全に取り押さえた。
「嬢ちゃん。この力はこいつのもんじゃねぇ、これは|おれ(運営)の力だ。今は一時的に体を借りてる。この後すぐに体を戻すから、こいつにいろいろ教えてやってくれ。いいか?」
「拒否権はないんでしょ?」
「わかってんじゃねぇか。じゃ」
そして体の主導権がおれへと戻る。少し体が重い気がするが、大した変化はない。
体が宙に浮いて幽霊みたいになっていたさっきよりは幾らかマシだろう。
「えっと……なんかごめん」
2回殺された相手になぜ素直に謝ってるのか。
が、一つわかったことがある。おれの力はやはり、時間の巻き戻し。使い勝手はわからないがこの力のおかげおれは2回生き返っている。言ってしまえば蘇生能力(自分専用)だ。これがある限りおれは死なないはず。
「あなた、やっぱり固有能力保持者ね。運営が出張ってくるなんてそれしか考えられないわ」
「だから固有能力ってなに?」
「場所を変えて話しましょう。場合によってはあなたと私は運命共同体かもしれないしね」
◇ ◇ ◇
東京都 品川区 喫茶オウン˙
「それで、このゲームのことなんだけど。運営から説明があったようにこの世界はあと3000時間で消滅するらしいわ」
「消滅⁉︎3000時間っていうとえっと」
「だいたい125日ね。そしてそれを止めるためには」
「王にならなければいけない」
「その通り。王っていってもピンとこないと思うけどゲームのステータスの画面に『王までに必要な経験値』というものがある。それが王になる方法」
「つまり経験値集めってことか」
「経験値は人を殺すことでたまるんだけど、わたしはあと1012人殺さなくちゃいけない」
「──人を殺す。そういえばさっきプレイ・スタートとか言ってたけど」
「あれは殺し合いの開始合図よ。運営が介入したせいで強制的に解除されたけど」
聞いていれば、物騒な話だ。世界が消滅するだの人を殺して王になれだの。
そもそも、誰がそんなものを真面目に受け止めるのか。目の当たりにしたのは不思議な力と幽霊になる方法。あれ?十分すぎるほど有りえないな。
自分で自分を納得させてしまった。
「ギフトボックスは確認した?」
「この箱みたいなイラストならさっき確認したよ。300万円とガチャ一回無料チケット」
「まずガチャを弾きなさい。そこでせめていい武器を手に入れないと」
言われるままにガチャを無料で引く。一体有料ならいくらかかるやら。
『超激レア⁉︎ 弾交換不要銃』
「ノン・リロード⁉︎」
「これは?」
「弾を交換しないで無数に打てる銃。超激レアの中でも上位にある武器だよ」
「ミヤ様いらっしゃいますか?」
遠くから聞こえるのは配送をしに来た男の声。
数秒もたたないうちに一介の高校生は無数に打つことが可能な銃を手にした。
「その銃は肌に離さず持っておいて。さっきみたいに5メトール圏内で『プレイ・スタート』と言われれば強制的に殺し合いが開始されるから」
「……戦わないで済む方法はないのか?」
「ないわね。勝負を仕掛けられたらどちらかが必ず死ぬ。例外はあるけどね」
「それは?」
「蘇生アイテムを使用すること。死後、蘇生アイテムがあれば自動的に使用されて生き返ることが出来るのよ」
「なんだ……よかった」
「一個300万円だけどね」
残酷なデスゲームを防ぐ唯一の方法は確かに存在する。しかし、その手段はあまりに鬼畜な手段。死ぬたびに300万円が消えていくなら手元にいくらあっても足りない。
ならどうなるか?
結局はゲームで金を稼いでその金で購入する。もし余れば、それを自分の金として自由に使う。
ここにたどり着くのだ。
「え⁉︎そんなのって」
「さっき300万円の支給金があったでしょ。あれで普通は買っておくんだけど、あなたは能力があるからいらないわね」
「確かに」
おれの能力である時間巻き戻しは死後も発動可能ならしい。
つまり、おれは死ぬことはない。
もらった300万は手付かずでおれのものになる。使い道は無数だ。
「エリはさ、どれぐらいこのゲームをやってるの?」
「2ヶ月と少し」
「最近じゃないか。驚いたな、もっとベテランかと思ったけど」
「わたしはまだ『ランク・B』のプレイヤーよ。あなたはEだけどね」
「ランクもあるのか」
そういえばランク圏外のプレイヤーは退会だったけか。
おれのランクがEってことは最低がEってことだと思うけど、圏外はその下にあたるのか?
「ランク圏外ってどういう意味?」
「ランク圏外?そういえばそろそろランクマッチがあったような」
『レディース・アンド・ジェントルメン!今月もこのイベントがやって来た。月に一度のランクマッチだ!今回のランクマッチ対象はE vs Bぃぃぃぃいっ。定員は15000人だ!会場は品川区全域だぁ。レディ・ファイト!』
スマホからの突然の音声。周りから音は一切なくなり、品川の街は一瞬にバトルゾーンとかした。
次回もお楽しみに!