Level #2
3話はまではできてるのでスムーズに進んでいきます。
評価お願いします!
「なんだこれ?」
殺伐としすぎている利用規約を見て沈黙する。
まず、なによりも命の危険という言葉に目を置く。そして、次に能力の付与。一体なんなんだ。
利用規約から同意のページに戻して拒否のボタンを押す。
「よろしいのですか?拒否された場合は退会とみなします。また、10日以内に選択されない場合も同様に退会とみなします」
退会=戸籍抹消だったけか。戸籍抹消、これまた現実感のないことだ。
なんだか怖くなったおれはスマホの電源を落とした。
◇ ◇ ◇
翌日 12時15分 私立高校
「どうした網縞、オマエが授業中に寝るなんて珍しいな。昨日も珍しく保健室に行ったらしいじゃないか、調子悪いなら無理するな」
「……すいません」
翌日の目覚めも昨日の保健室の目覚めと同様に最悪の気分だった。そのせいか、今日の授業にはあまり身が入っていない。
強制的に退会となるまで残り9日。信じちゃいないけど、妙に怖い。
「今日の授業はここまでだ。みんな宿題をきちんとやってくるようにな」
先生の合図で授業が終わる。
得意科目と不得意科目では授業の時間が短く感じたり、長く感じたりといったことがあるが、やはりこの感じはそういった類のものじゃない。
お昼休みだというのに飯が喉を通らない。それどころか味もしない。
明らかに正常ではない体調、無理をしているわけではない……はずだが。
「顔色悪りぃぞ智也」
「翔太か。大丈夫だよ」
自分を心配して話しかけてきた友達を無下にはできない。
今ある自分の力でなんとか、元気な自分を演じる。
「そっか。なら単刀直入なんだけどさ、都市伝説って信じるほうか?」
「まあそこそこ」
「ならさ、『2』って知ってるか?」
「ツゥ?なにそれ」
「『カウントダウン,season2』の俗称だよ」
「season2?そんなの出るのか。初耳だな」
正直この状況でカウントダウンの話はやめて欲しい。ただでさえ良くない体調が更に悪くなりそうだ。
その上、聞いたことのないseason2。
なんとなくではあるが、おれの中では気付いていたのかもしれない。
おれが現在プレイを要求されているゲーム、それこそが『カウントダウン,season2』なのではないかと。
「つい最近聞いた情報でな。お前に話そうか迷ったんだけど、やっぱり教えとこうと思って」
「お、おう。ありがとな」
「でな、そのゲームっていうのが……
『あなたの友達、それ以上喋ったら消されるわよ』
突如響き渡る、謎の声。
もともと嫌な予感がしていたおれは声とほぼ同時に、翔太の口を塞いだ。
「──っん⁉︎」
「すまん。ちょっと喋るな」
あの声は……間違いない。あの夢の、廊下の女の子の声。
見るところ、おれ以外に聞こえてはいない。
なんというか、頭の中に直接喋りかけられているかのような感じだ。
「その話もうやめようぜ。なんか、気味が悪いしさ」
「そうか?わかったよ」
あの声が間違いじゃないのなら、おれは後9日で戸籍から抹消される……かもしれない。
対策する術は一つ、ゲームを始めること。しかも、ただのゲームじゃない。
『命をかけたゲーム』
額から汗が落ちる。
現実感というのはとても恐ろしいものだ。あるわけないという都市伝説も現実感が少しでも加わればとても恐ろしいものへとなる。
ただのイタズラだと思いたかったおれは、この現実感で押しつぶされた。
ポケットの中にあるこの携帯端末は心身をじわじわとすり減らす。
「なんなんだ」
教室から出てすぐそばにある談話室。おれはこっそりと忍び込んだ。
そして、決心をつけてもう一度スマホを開く。
開くと同時にカウントダウンの同意画面が映る。
やっぱり現実だ。と、ここで自分の置かれている状況をなんとなく理解した。
「残り15秒」
そこに表示された15秒の文字。なにが15秒か、決まっているおれの同意までの残り時間だ。
9日もあるはずの残り時間の異常なまでの短縮。
おれは15秒という短い時間の中でなんども思考する。同意か否か。
「──了解しました。ではこれよりゲーム運営委員会から挨拶がございます」
結果、おれは同意した。
やってしまったという実感を味合うこともなく、運営からの挨拶が始まる。
「ヨウコソ!カウントダウンの世界へ。運営委員会取り締まり役代行の崔咲哲郎です。あまり時間がないので、このゲームの目的について手短にお伝えします。このゲームの目的は『滅亡する世界を救う王を決める』ことです。おっともう時間だ。では新規プレイヤーのみなさん頑張って生き残ってください」
「世界を救う王?」
10秒にも満たないその挨拶は様々な疑問をふっかけた。
数分後にやっと感じるやってしまった感と運営がふっかけた世界を救う王。
この二つに挟み込まれたような今の状況は決して心地良いものではない。
『屋上に来て』
再び響く彼女の声。
やはり、彼女はこのゲームの参加者なのだろうか。だとしたらこの呼び出しは危険か?まぁいいや。
吹っ切れたように屋上へ向かうおれは少し笑みを浮かべていた。
「来ましたよ銀髪さん」
「いらっしゃいご新規さん」
ここで確定。彼女は間違い無くゲームの関係者だ。
「あなたのアビリティーはなにかしら?」
「アビリティー?あぁ、あの必ず一つは貰えるっていうやつか」
このゲームについておれの知識はゼロに近い。彼女もそれは知っているだろう。
それにしても、声色一つ変えないその冷淡な口調には恐れ入る。
「アビリティーを調べる方法は簡単よ。ゲームを開いてステータスを確認するだけ」
「ゲームを開いてステータスを確認……これか。『時間巻き戻し』らしい」
「カウントアップ?やっぱり初めて聞くわね。固有能力かしら……」
「こゆうのうりょく?」
「気にしないでこっちの話。それより、あなた名前は?」
「網縞智也」
「そっちじゃなくて、プレイヤーネームなんだけど……」
「あ、えっと……ミヤ」
「そう。わたしはエリよ。これからよろしくミヤ」
次回もお楽しみに!