表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラピスラズリと琥珀  作者: なのるほどのものではありません
8/25

第7話:年端もいかないご令嬢に宣戦布告された件

 私の母親は、アルブの生まれで、その祖父は生粋の武民だったそうだ。

 一方父は、昔から、ずーっと本に携わる家系だったらしい。

 どういうきっかけで彼らが出会い、恋をし、そして子を成したか、それは聞いたこともない物語だ。

 だけど、彼らから生まれた私は、確実に彼らの意志や、『家』の色を受け継いでいる。

 受け継がれるのは、それだけ?

 もしかして、呪いのようなものも、受け継がれているのでは?


 なんて。

「もう、随分良くなったね。」

 湿布を取り換えながら、ブレトンが言った。

「おかげさまで。」

「もう、湿布は明日からはいらないね。」

 にこっとブレトンは笑う。

「じゃ。」

 部屋を出ていこうとするブレトンを、私は止めた。

「あの。」

「ん?」

「子爵は……?」

 ここ数日、実は部屋からほとんど出ていない。

 怪我が酷くなって働けません、と訴えて、お休みをもらっていたのだ。

「ん。いつも通り。元気だよ。足は……、まぁ全快?」

「でしょうね……。」

 もともと足なんて痛めてやしなかったんだから。


 あの夜から、もう数日だ。


 子爵と出会ってから何体の死体を見ただろう。思い出すだけでも、気分悪い。

 だけど今回は、友人のものだった。

 私が勝手に、友人だと思っていただけかもしれないけど……。

 そう思うと余計悲しくなった。

 あの日以来、子爵とは会っていない。会いに来ないし、会いに行ってもないからだ。

 というか、あれだけ看病してやったのに(仮病なのに)、私が倒れた時は(ほぼ仮病に近いけど)、見舞いにも来ないのかあの人は。

「…………来るわけないか。」

 当たり前だ。あの人は子爵で、私は本物の”特別な君”でもなんでもない、ただの庶民なのだ。

 それに、どういう顔をしてどんな話をすればいいのか分からないのだ。たぶんお互いに。


 疑え。

 それを強いる、この世界。


 それでも、私は信じたい。それって、傲慢?馬鹿?子ども?

 友人くらい信用したい。切り捨てる覚悟なんて、したくない。


 ***


 ある日の午後。嵐は突然やってくる。


「ブレトン!」

「ん?……おや。」

 門の付近を歩いていたブレトンが呼ばれて振り向くと、そこには可愛らしい少女が立っていた。

「お久しぶりですね。リリス様。いつお着きに?」

「今しがたよ!」

 リリス――先日の誕生パーティの主役はふんと、笑った。

「あなたはいっつでも胡散臭い笑顔ね。ミケルお兄様みたい。」

「あはは!ミケル様みたいな甘いフェイスに生まれれば、と、何度思ったかしれませんよ。」

 歯に衣着せないリリスに、ブレトンは笑った。

「リリス様!」

 ひいひい言いながら慌てて駆けて来た、初老の男。

「おや、ウェーバさん。お久しぶりです。大変そうですねぇ。彼女のおも……おつきは。」

「おもりって言った?ねぇおもりって?」

 リリスは聞き逃さない。

「言ってませんよ。」

 ブレトンは笑ってかわす。

「本当ですよ。今も目を離したら、いなくなっていて……。」

「ふん!勝手知ったる城よ!別に迷わないわ!」

「お生意気な……。子爵に会いに来たんでしょう?お上品になさってください。」

 ウェーバは相当手を焼いているのだろう。叱り方も手慣れたものだった。

「子爵に?」

 ブレトンが訊く。

「いいえ、まずは、あの娘はどこ!?」

「え?」

「ウィル様の、特別な娘よ!」

「……ああ。ラピス?」

「私はあの娘に話があってきたのよ!」

「子爵じゃなくて?」

「もちろんウィル様にも会いによ!」

 なるほど、とブレトンが笑った。

「ちょっと、今日は……、二人とも会えるかなぁ?」

「何かご用事で?すみません、連絡なしに訪ねてしまって……。」

 ウェーバが丁寧に謝る。

「いや、いるにはいるんですけど、2人とも、すっごく落ち込んでるから……。」


 ***


「こんな感じでいいかしら?」

 メアリーが本をいくつか持ってきてくれて、見せてくれた。暇つぶしには、本が一番。と言ったら、気を使ってくれたのだ。

「うん。ありがとう。」

 それは、本を受け取った瞬間だった。


 バッターーーーーーーーーーン!


「!!!」

 ドアが、めちゃくちゃ乱暴に開かれた。

「な、……な!?」

 開いたのは可愛らしく、身なりの良い少女だった。

「別れたの!?」

 そして、これが彼女の第一声。

「え?え……?」

 一体何の話をしているのかわからず、私は困惑した。

「別れたの!?」

「えっと……。何、誰。」

 全く身に覚えのない来訪者に戸惑っていると、側にいたメアリーが驚いた。

「リ、リリス様?!」

 え?リリスって、あの、この前の誕生日の?

 再び少女を見ると、なるほど、見覚えがあった。

「私が聞いているのよ!答えなさい!別れたの!?」

「え、えっと、あの……話が見えないんだけど、別れたって何ですか。」

「あなたと!ウィル様よ!」

「え!?ラピス!別れたの!?」

 メアリーも驚いて叫ぶ。


 もう、勘弁してくれ……。


 ***


「リリスが?」

 突然の訪問の知らせに子爵はやや驚いたようだった。

「はい。今しがた、ラピスの部屋に押し入って……。」

 そこまで言って、ブレトンは先刻の女子たちの大混乱を思い返し、思わず吹き出した。

「?話しながら笑わないでくれ、気味が悪いな。」

 一人楽しげな従者に子爵は呆れる。

「いやいや、見ものでしたよ。」

「だから何がだ。」

「私の主は可愛い娘に好かれたもんです。」

 子爵は少しだけ眉をひそめて困った顔をした。

「一回り若いぞ……。」

「あはは。ラピスだって。」

「あいつは19らしい。」

 ブレトンは固まった。

「…………マジで。」

「マジでだ。」

「まぁ、顔は童顔ですからね……。若く見られていいんじゃないですか?」

 その場にいもしない奴のフォローまでするブレトンは、いい奴だと思う。

「ラピスは?」

「……気になるなら行けばいいじゃないですか。」

 ブレトンは煽るように言って微笑んだ。

「……性質の悪い奴を下に持ったもんだ。」

 ブレトンはクスリと笑った。

「あなたらしくない。どうして、避けるようなことをするんです?」

 そのうえで、この従者は正論で主に殴りかかってくるのだ。子爵は、ため息をついた。

 そして、手に持っていた薬学の本を机に置く。

「……怖がられるのは、もう、こりごりだからな。」

 そういった子爵の眼は静かに孤独を見つめていた。

 素直に人に突き放されることを恐れた主を、ブレトンはこれ以上殴れずに悲しく微笑んだ。


 ***


「あなた、こんな部屋に住んでるの!?うっそでしょ!しんっじらんないわ!」

 リリスがみすぼらしい私の部屋を見渡して叫んだ。

「ほ、埃が気になるのなら、広間の方で子爵をお待ちになったらどうですか?」

 自分なりに掃除に手を抜いたことはないけど。

「部屋が汚れているって話じゃないわ!狭い!暗い!ここ、物置じゃないの!?」

 ご名答。

「自分からこの部屋を選んだって言うのが全くの意味不明だわ……!」

 ほっといてよ。

「まあいいわ。私、あなたに話があってきたのよ。」

「わ、私に?」

 私はないけど。

「はっきり言うわ!宣戦布告よ!」

 彼女は高らかに宣言し、勢いよく私を指差した。

「……は?」

「ウィル様は渡さないわ!っていうか、奪って見せるんだから!覚悟しておいて!」

「…………。はぁ……。」

 なるほど。

 こんな可愛らしいお嬢様(性格には難がありそう)にも、おモテになるのね、あの人は。

 なんだか感心して、ポカーンとしてしまった。

「ふ、ふん!自信があるようだけど、私はあなたよりもウィル様のことを知っている自信があるわ!」

 少しだけ胸が締まった。

 そりゃ、そうでしょう。

「だから負けないわ!いいこと!?覚えておくのよ!それから、お大事になさって!行くわよ、ウェーバ!」

「は……!はい!すみません。失礼いたしました。」

「……はぁ。」

 嵐のように彼女とその従者は去って行った。

 最後にきちんと気を使ってくれるあたり、悪い子ではないらしい。


 でも、なんという、見当違いをしているのだろう。

 訂正するのもめんどくさいくらい見当違っていた。

 だって私、子爵のこと何も知らないもの。愛されていないし、愛してもいない。

 そう思うと、胸が痛んだ。

 ああ、これはきっと、子爵にとって、私も『容易に切り捨てる』事ができる人間にすぎないと、思えてしまうからだ。

 あの人にとって、私は全く特別なんかじゃない。

 皆と同じ。心が繋がることのない一人なのだ。


 ああだめだ。早く、この城を出よう。

 私はきらびやかで悲しい、この世界にむいていない。


 ***


「ウィル様!」

「やあ、リリス嬢。」

 子爵の書斎にやってきたリリスは、子爵に思いきり抱きついた。

「この間は挨拶もなしにひどいですわ!」

「ごめんごめん。ちょっと野暮用でね。」

「修羅場だったと聞きました。」

 ミケルに聞いたのか、と子爵は笑った。

「今日はどうして?」

「この間お会いできなかったから、私から会いにきたのよ。」

「それはそれは、わざわざ……。誕生日の贈り物は見てくれたかい?」

「あ、ええ……!すっごく美しかったわ!ありがとう!」

 リリスは本当に無邪気に、美しく笑った。

「どういたしまして。あぁ、そういえばさっき、ラピスの部屋に行ったとか?」

「ええ……。行きましたわ。」

「どうだった?」

「ウィル様には、ふさわしくないような、平凡な娘でした。」

 はっきりもの申す。

「あはは!お気に召さないか。」

「というか、どうしてあのような部屋に住みたがるのかしら?」

 彼女にはまったく理解ができないようだった。

「そうだね。あの娘は、他とは違うんだよ。」

「え?」

「無駄なことが嫌いだし。そのくせ無茶な事には躊躇しない。」

「無茶……?」

「それから、林檎がうまくむける。」

「林檎……?」

 首をかしげるリリスを見て、子爵はふっと笑った。

「此処にはいないタイプの人間なんだ。」

「……随分と、気に入っているんですね。あの娘のこと。」

「んー……。」

 子爵は少しだけ考えて、にっこり笑った。

「嫌われちゃったみたいだけどね。」


 ***


 リリス嬢が帰って屋敷が静かになり、気づいたら窓の外は真っ暗になっていた。

 無為に一日が過ぎる。じっとしてるのは、好きじゃない。

 読んでいた本を閉じて、私はベッドに転がった。

 ――明日、子爵と話をして、そして城を出よう。

 もちろんきちんとお金は返す。どこかで働いて、定期的にお金を持ってくればいい。

 多分此処で働くのが一番効率よくお金が稼げるけど。

 きっと私は此処で何にも出来やしない。怖い思いだって、たくさんだ。

 だから、此処から出て行ったほうがいい。


 コンコン!


 夜中なのに、突然部屋のノックが鳴り響いた。

「わっ、め、メアリー!?」

 驚いて身を起こす。

「私だ。」

 子爵の声だった。

 思わず体がびくっと揺れた。

 ど、どうしよう寝巻だ!

 じゃなくて!

 何を話せば!っていうかどうしてこんな時間に!

 少々混乱したが、声を発してしまった以上寝たふりなど不可能だ。

「ど、どうぞ!」

 観念して、シーツを首元まで引っ張り、着ている服を隠した。

 遠慮がちにドアが開いて、遠慮深げな子爵が中に入ってきた。

「こ、こんばんは……。ぶ、ブレトンさんは?」

「もう休んだ。」

 単身で来た、ということか。

 子爵は部屋に入ると、何も言わずそこに立ち尽くした。少しばつの悪そうな顔をして、彼はうつむいた。

 何を言っていいかわからず、私はそんな子爵をまじまじと見つめるだけだった。

 このままでは、息が詰まりそうだ。

「あの……?」

 沈黙を破ってみる。

「君に……。」

 すると子爵は話しだした。

「本当のことを喋ろうと思う。」

「……本当のこと?」

 それはもしかして、私がずっと疑問に思っていたこと?

 子爵にとって魔女の粉がなんなのか。子爵が特別ってどういうことなのか。その答え?

「私は、このブロイニュにとって、重要な地位にいる。」

「……はぁ。」

「それは、ブロイニュの魔女たちにとって、という意味だ。」

「魔女……たち?」

 彼は、まるで魔女が実在するかのように言った。私はまだ要領を得ず、首をかしげた。

「はは、信じられないかもしれないが、現代も魔女は存在する。魔女の粉の伝説は知っていたな。」

「え、はい。えっと、王妃シュイが、悪い王様に飲ませて、国を滅ぼしたっていう伝説ですよね。」

「そう。」

 子爵の頷くしぐさが、どこかはかなげで綺麗だった。

「そのシュイの末裔が、私だ。」

「……え!?」

 ちょっと待って。

「で、伝説ですよね!?」

「伝承は、多かれ少なかれ飛躍されている。だが、史実だ。」

「え!じゃ、え……!?」

「魔女の粉の秘術は、我々の先祖が作りだしたものだ。」

「……それが、魔女の粉のレシピ?」

 子爵は頷いた。

「シュイは魔女の間では英雄であり、その血を引き継ぐ私は魔女たちの上に立つ存在だ。」

「じゃあ、全ての魔女は……あなたの……?」

「勘違いしないでほしい。私は彼女たちを手駒にしているわけではない。彼女たちは私とは関係なく、独立した魔女として生きている。ただ、何か彼女たちの間で何か問題があれば私が調停役として出ていく。それだけだ。」

 おとぎ話をされている雰囲気ではなかった。

 これは、歴史の重みをもった『事実』だと理解した。

「私の正体を知る者は、私を敵に回せば魔女の報復を受ける、と思っているようだが。」

 まあ、そう思うだろう。伝説を聞いた時、私も魔女だけは敵に回したくないと思ったものだ。

 いつの間にか側にいて、毒を盛られたとも気づかずじわじわと殺される。

 ひとおもいに殺されるよりも、まるで幽霊に取り殺されるような怖さがあった。

「だから、皆私を恐れる。恐れ、顔色をうかがう。もしくは下手な空想を描き、憧れの対象にする。」

 子爵の顔は、微笑んでいるようで寂しげだった。

「魔女たちの切り札である魔女の粉の秘術を守りつつ、このブロイニュの均衡を保つ。これが私の一族の役割だ。そのために武力を嫌う魔女の中で、この手で人を殺すことが許されている。だから、幾多の命も奪ってきた。」

 子爵は剣に触れた。

「!」

 ぞくっとする。

 もしかして、私、今から殺される?

「……怖いか。」

「え!」

 表情に出ていたらしい。

「君はきっと、下手な空想で憧れたりしないだろう。」

 子爵は、自嘲気味に笑っていた。

 その眼は琥珀が鈍く光るみたいで、どことなく絶望している、そんな色をしていた。

「……逃げたいと思うなら、それでもいい。私は君に秘密を明かした。それは、許してくれるとは思わないが、君の友人を躊躇なく殺した本当の理由を告げたかったからだ。」

 あの口ぶりではピピはきっと、“魔女の粉のレシピ”を盗んだのだろう。だから子爵に殺されたのだ、と理解した。

「この秘密をどうするかも、君が決めたらいい。」

「……子爵?」

 これは。

「君は、自由だ。ラピス。」


 これはお別れの言葉だと、やっと気がついた。


「ふ。」

「え?」

「ふざけないでください!」

「!!」

 叫んだ。

「何よそれ!ずるい!」

「ず……るい?」

「自己完結して、はいサヨナラって!?あなたはいいでしょうよ、あなたは!」

 ずるい。

「すっきりするもんね!せいせいするもんね!だけどねぇ!」

 ずるい。

 そんな誠意は、ずるい。

「そんな顔した子爵を、ほっぽって、簡単にどっかに行けると思わないでよ!」

 そんな悲しい顔は、ずるい。

 気づいたら涙が出てた。

「ラ、ラピス。」

 子爵が慌てて私に近寄る。

「近寄らないで!」

「!」

 子爵がびくっとする。

「寝巻だから……!」

「……はぁ?」

 涙がぽつぽつとシーツに落ちる。

「……ずっと、そうやって、人のこと信用できずに生きてきたんですか。」

 子爵は、頷かなかったが首も振らなかった。

「悲しいですね。」

 涙が出るくらい。

「そんなの……、悲しいですよ。」

「……うん。」

 子爵は悲しげに微笑んだ。

「悲しいよ。」

 そう呟いた子爵の声が優しくて、私はどういうわけか涙が止められず、嗚咽をこぼして泣いた。

 そして、決めた。

「ひとつ、条件があります。」

「……条件?」

「私のこと、信用して。」

 睨んだ、と思われても仕方ないくらい子爵の顔を見つめた。

「私のことを、信用してください。」

「ラピス?なんの……――」

「じゃないと、私はこの城飛び出して、借金を踏み倒します!」

「……は?」

 子爵はきょとんとしてまじまじと私の顔を見つめた。そしてその2秒後に、吹き出して大笑いした。

「あはははははっ……!なんだそれは……!」

「な!何がですか!いいんですか!私が此処から逃げるってことは、借金踏み倒すってことですよ!止めるところでしょう、常識的に考えて!」

「いやいや……。」

 笑いをこらえながら子爵が言った。

「分かった。莫大な借金だ。踏み倒されたらかなわない。君のことを信用しよう。」

「……本当に?」

「ああ。」

「嘘付いたら、殴りますよ!?」

「つかないよ。」

「絶対?!」

「しつこいな。」

「……絶対よ!」

「分かってる。」

 ああ、嘘かもしれないけれど。

 この時交わした約束を、私はずっと忘れない。


 貴族の世界は、魔女の世界は、子爵を取り巻く世界は窮屈だ。

 窮屈で孤独で、残酷だ。

 そんな子爵の孤独を和らげたいなんて、大それたことがしたいわけじゃない。

 でも多分、誰か一人でいい。誰かが心から自分を信じてくれたら。それはきっと、とても嬉しい。


「それじゃ、ずっと此処にいてくれるんだ?」

 子爵がそう言って、いつも通り意地悪く笑った。

「しゃ……借金が無くなるまでです!」


 そういう存在がいたことが、彼の心にいつまでも残るように。

 しばらく私は、此処に残ろうと決めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ