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王女との密談とこれから

若干甘い展開がありますよ。


俺は今、再び鑑定部屋に来ている。


王女に呼ばれたからだ。


おおよそこれからの事について話すのだろう。


数分後、扉が開き王女が部屋に入ってくる。


王女は扉に詠唱し、外から開かないようにしてからこちらに来た。


「すいません、お待たせいたしましたわ」

「いえ、そこまで待ってはいませんよ?」

「…普通の話し方で結構ですわよ…」

「?そうか、ならそうさてもらう。…で、どうしたんだ?」


「ここに呼んだのは貴方のステータスについてですわ。」

「ふむ?」

「…貴方、ステータスを隠蔽してますわよね?」

「っ!」

「ちなみに司祭達は知りませんが、私は『隠蔽喝破』のスキルを持ってますの。これで貴方が隠蔽しているということを知りましたわ」

「…俺のジョブについても見えるのか?」


ジョブとは「勇者」や「聖女」など、この世界での役割を示すもののことだ。


「はい、龍神様・・・?」

彼女はほくそ笑むように言う。


「…なるほど。良くわかった。それで俺に何をする気だ?」

「いいえ、何もしませんわよ?」

「え?」


普通は脅したりして裏の仕事とかさせるんじゃないのか?


「これはあくまで私の興味の範囲ですから、それに関して何かをすることはございませんわ」


…いい人だな。

素直にそう思う。


「…そうか…なんか、ありがとう。」

「…お礼を言ってる理由がよく分かりませんが、どういたしまして?」


「そう言えば他にも何かあるのか?」

「はい。貴方が「騎士」のみしかジョブを持ってないことでこの城を出てもらうことになりました」

「はい?それは本当か?」

「はい、本当ですの。」


さすが異世界。いらないものはすぐに捨てるのか。


「…本意ではないのですけれどね。」

「それは王女さまがか?」

「ええ。それは勿論。」

「…そうか。どんな感じになるのか教えてもらえたりはするか?」


これを知っておかなければ、やばいかもしれないからな。


「明日の朝、王直々に宣告されて、補助金を少々与えられて、城下町に出されますわ。」


なら、ここにいれるのはせいぜい今日の夜か。


それまでに由紀に言っとかないとな。


絶対なんか言ってくるし。


「…由紀さんは責任を持ってお守りしますわ。」

「…ありがとう。なら大丈夫だな。」


そう言う俺の顔を見て、王女が笑みを浮かべる。


「どうした?」

「…いえ、由紀さんは羨ましいなと思いましたの。」

「どうしてだ?」

「ここまで思ってもらってるのですから、女としてはこういう男の人に憧れるものですわ。」

「そうなのか?」

俺は首を傾げる。


「ふふっ、そうですわよ。」

「…じゃあ、有難くお褒めの言葉を頂きますよ」

「はい!…では、また明日」

「ああ、また明日。」


俺は開けられた扉から自分に割り振られた部屋の方へ行く。

その背中を王女はじっと見つめつつ、


「…本当に羨ましいですわ…」


と呟いていた。


───────────────────────────


俺は部屋に戻る前に、違う部屋の扉の前に立っていた。

そして、軽くノックをする。


「…由紀いるか?」

「いるよ~」

「じゃあ、入るぞ」

「うん」


扉を開けると6畳くらいの広さの部屋の真ん中に寝間着姿の由紀が座っていた。


「どうしたの?漣くん?」

「いやな、明日ここを出ることになったんだ」


いきなりだが本命の事を話す。

長い付き合いだ、分かってくれるだろう。


「…騎士だけだったからでしょ?」

「そうだな」

「わかったよ。私も一緒に行く。って言いたいところだけど、きっと無理だよね?」

「だろうな。」

「………」


ショックからなのか、黙ってしまう。


「安心しろ、殺されるわけじゃないだろ?」

「………」


微かに嗚咽が聞こえる。

俺は無言で背中に手をあて、さすってやる。


「…いなくなるわけでもないし、強くなって自由な時間が増えたら、また会えるよ」

「…グスッ…本当に?」

「…ああ」

「絶対だよ?」

「ああ。」

「じゃあ、泣かない!」


涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げそう宣言する。


「絶対強くなって漣くんのそばにいれるようにするから、待っててね!!」


高らかに告げる彼女はとても美しかった。


「ありがとな。由紀。」

「うん、いいよ。」

「じゃあ、また明日な?」

「ちょっと待って。」

「?」


部屋を出て、自分の部屋に行こうとして、それを制止された俺は振り向く。

その口元に柔らかいものが唇にくっつく。


それは若干震える由紀の唇だった。


「…!」


突然の事に言葉が出ない。


その暖かい痕跡を残して唇が離れる。


由紀は顔を真っ赤にしながら小声で、


「…おまじないだよ。」


といって部屋に戻っていった。


俺は唇に感覚が残ったまま、しばらく立ち尽くしていた。


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