右手の先
街外れか、そもそも街というものが無いかもしれない場所。見えているのは道を歩く2人の少年少女だけ。
名前を教えてあげよう。少年はコウ、少女はハネ。
コウは絵を描くのが好きだが、困ったことに目が見えない。ハネはハーモニカを吹くのが好きだが、困ったことに音が聞こえない。
たどり着いたのは1面の青色。風の音。キュウ、キュウ。
そして潮の香り。
コウが描くのは風の音。キュウ、キュウ。ハネが奏でるのは眩しい青色と空を飛ぶカモメ。
コウがハネに絵を見せた時、ハネは笑って絵を抱きしめた。ハネがハーモニカを奏でた時、コウは涙で顔を濡らした。
骨まで沁みてくるのは何か。