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十六話 あとがき。

 30年後。


 孝介は、最愛の妻、紗江に看取られながら、早すぎる最後の時を迎える。

不治の病を患い、もうどうすることも出来ない状態にあった。


 某日、孝介の葬式が行われた。参列を済ませ、ある一同は、バーへ向かった。

「BAR DAICHI」。一同が向かったバーの名前だ。扉の前には、貸し切りの札が下げられている。


「すみませんね、わざわざ開けてもらって。」


「いえ、孝介さんが好きな場所でしたから。こうしてまた集まれて、良かったですよ。」

この店のバーテンダー、20代の男が答える。


「孝介さんが居なかったら、私たち、こうして生きていられなかったでしょうね。」


「本当に。」

感慨深く、バーテンダーのダイチが同意する。


「孝介さんが書いた小説、読み切りました?」


 孝介は元の世界へ戻って以降、『(うぐいす) 想人(そうと)』という名前で、仕事の傍ら、小説を執筆し始めた。その小説「異世界漂流記」は、ミステリアスで残酷な世界観が受け、大ヒットを記録した。


「あぁ、まだなんですよ。なかなか長くてね。あと、色々思い出しちゃいますから。」

ダイチは答えた。元の世界へ戻った時は同じだが、異世界へ飛ばされた直前に戻るため、それぞれ異なった時間に戻ることになる。ダイチは、孝介よりもだいぶ後に飛ばされていた。


 この異世界漂流記は、異世界の果てでの事を記録したものである。


「私、考えたんですけど。」

漂流者の一人が、喪服姿で話に割って入る。


「この異世界漂流記って、またあんな感じの世界に飛ばされた人の為に書いたものじゃないかなって思うんです。」


「……確かに。あの人、他人の為に一生懸命になれる人だからな。」

そう言うと、ダイチはふと笑った。



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「異世界漂流記 下巻」のあとがきの頁を開き、最後の一文を読む。



「うぐいすへ。安らかな眠りを。」


 この意味不明な一文の解釈をめぐり、異世界漂流記のファンの間で、様々な激論が交わされたのであった。


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