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王国を再び  作者: 電子辞書
1/2

一人目

古びた宿の一室で彼は宿主から借りたランプを机の上に置いて地図を広げていた。


彼にはもうこれ以外やることがなかった。

剣はもう研ぎ終わってしまったうえに余り意味のなさない兜も鎧も目に見える汚れだけを拭き取るだけで終わらせてしまい完全に手持ち無沙汰な為、致し方無しに覚えてしまうほど見た地図を広げている。


「途中に様々な寄り道をしたが、まあ、いい方へ転んでくれてよかった。計画通りに行っているといえば行っているのか」


彼自身柄にもなくここに来るまで色々な問題に首を突っ込んで来た。

命令されては従わざるを得ない。


しかし嬉しい誤算もあった為よしとしている節が自分にあることを彼は自覚している。

正直なところ彼はなるべく問題に関わりたくない。

予定していた計画に乱れが出ることが、几帳面な彼には少しばかり気になるのだ。


「…………また立てるか」


あまりにもやることがない為、彼はペンを持ち何も書いていないまっさらな紙を一枚取り出し計画を立て始めた。


「ちょうど20個目か」


計画が万が一頓挫した場合を考えたものが既に十九個手元にあるのにも関わらず尽きることなく考えが湧いてくる。


夢中でペンを走らせていた彼がふと外を見ると日が昇り、足音や馬が走る音、人々の声が聞こえてきた。


「……………もう朝か」


ランプの火を消しペンや紙をしまう。

鞄を持ち剣を背負い兜を持つ。


部屋を最後一通り見渡すと扉を開け廊下に出た。

彼には隣の部屋に住んでいる主人を起こすという使命があった。

隣の部屋のドアを軽く叩く。


「王よ、ご用意は?」


「とっくに出来ているよ」


彼は少し驚いていた。

いつもならば自分が訪問する時には必ず寝ているはずの主人が起きていたうえに準備も終わっているという事が大変珍しかったからだ。


「お前らしくないな、サイよ」


「何がでしょうか?」


「今日はお前の方が遅刻だぞ」


彼の主人はそう言ってドアを開け、彼に時計を見せる。


「………失礼いたしました」


「気にするな。また計画でも立てていたんだろ?」


「…………はい」


「私はお前のことで知らないことは何もないぞ」


その言葉が嬉しくもあり、少し引っかかった。

つまりそれは、自分の性格を知ったうえで主人は面倒なことに首を突っ込んでいるということだ。

わざとやっているということになる。


「…………今日は寄り道はしませんよ」


「寄り道無くして何が旅だ。そう焦るなよ、焦っても我々に勝機はないぞ」


言われてみればそうだと思った彼は、自分よりも圧倒的に年下であるがやはり王は王であると改めて実感したと同時にそんな些末なことすら気が付かなかった自身を恥じた。


「行こうか、サイ」


「仰せのままに」


王が歩く半歩後ろを彼は歩く。

暫く歩き、階段を降りたところで彼らの仲間である一人が壁にもたれかかっていた。


「よお嬢ちゃん。気分はどうだい?」


「すこぶる良いわ。あなたは?」


「俺は普通だ。良くも悪くもいつもと変わらんぜ」


真面目な彼とは違い、いかにも不真面目そうなその男に彼はいい印象を持たないのは至極当然だろう。


「サイの旦那も調子が良さそうですねえ」


「旦那はよせと言っているだろ、セン」


「あんたの方が俺よりよっぽど長く生きてんだ、年上には旦那をつけるのが俺なりの礼儀だ」


「ひとまず行こうぞ、皆が待っておるのだろ?」


「ええ」


彼が何度言ってもセンは身なりを変えない。

ぼろぼろな服を着てぼさぼさな髪の毛を雑に後ろに纏めている。

少し背が丸まっていて、全くやる気の感じられない目を持ち、常にへらへらしている。


だが剣に関して言えば、腕もさることながら、鞘にまで手入れをする程剣を大切に扱うことだけは認めている。


「サイの旦那は、よく眠れたかい?」


「サイは珍しく寝坊をしたのだ」


いたずらっぽく笑う王を見て彼は何も言えなかった。


「そいつは珍しいな。まさか本当に寝たのかい?」


「時間がありすぎて計画を立てていたら遅くなってしまったんだ」


「ははは!!旦那にもそんなことってあるんだな」


センは笑う。

毎度何がおかしいのかと思った彼が以前尋ねたところ、笑っていることで気分が暗くならないようにして様々な物事を乗り越えてきたせいで癖になっていると答えた。


「あなたは本当に楽しそうね」


「……楽しいのかねえ」


そんなことを話しているうちに彼らは宿を出た。


「さあさあ始まりますよ。今日もね」


センはそう言って大きく深呼吸をした。

外に出ると二人の子供が王めがけて走ってきた。


「あ!!お姉ちゃん!!」


「お姉ちゃんだ!!」


二人は彼女の服の裾を掴むと彼女はしゃがみ、二人の頭を撫でる。


「今日も元気だな、シン、キエ」


「お姉ちゃんは元気?」


「元気?」


「ああ、元気だよ」


彼女は笑みを浮かべながら二人と話し、彼らの手を引いて歩き始めた。

そんな風景をセイとセンは少し遠くから見守る。


「嬢ちゃんって本当に魔王の血族なのかい?」


「王は王だ。あの方は正真正銘、王の娘だ」


「魔王にしては優しいよねえ」


「王の一家は昔からあのようなご様子だ。戦いの時は変わるがな」


彼女と話していた二人は突然彼女から離れ、セイ達の元に向かって歩いてきた。


「首無しおじさんは元気?」


「首元気?」


セイは二人を見る。

この二人は自分をおじさんと呼ぶがおじさんよりはおじいさんの方が正しい。

むしろ死人と言われる方が正しいのではないかというぐらい長い間生きてきた為、なんだか若返った気がして彼はいつも困惑する。


せめて名前で呼ばせようとしたがなかなか呼んではくれなかった為もう諦めてひとまず好きな呼び方で呼ばせている。


「元気だ」


「お父さんは元気?」


二人はセンの方を向いて尋ねる。


「おう!!すこぶる元気だぜ!!」


彼は彼女が先程したようにしゃがみ、二人と話し始める。

流石の彼もこの時ばかりは父親の顔だ。

普段はやる気が全くない顔をしているが子供をあやす時には必ず穏やかで優しい目をする。


「お母さんはどこ行った?」


「お母さんはお馬さんを連れて来るって!」


「来るって!!」


「サイ、来い」


彼女に呼ばれたサイは彼女に元へ向かう。


「いかがされましたか?」


「あいつらがいない」


「大丈夫でしょう。いつも通りですよ」


「…………確かにそうだな」


「すいません、遅くなりました」


宿を囲む森の中から出てきたのは骨、もとい彼らの仲間の一人である。


「毎度毎度どうしてお前は森にいるんだジアよ」


「すいません。でも剣が好きなのは男の性ですよ!!」


彼はそう言ってセイに同意を求めるが、セイは何も言わなかった。


この男はとにかく剣が好きなようで、暇さえあれば剣を磨き、眺めている。


骨だけの身体であるのに鎧を着ているのだが、正しく言えば着させられている状態なのだ。

骨だけだからいらないと彼は言うが魔物にでも防具は必要であると言ってセイが着せたため、彼の前では必ず着ている。


セイに反抗するのは色々とめんどくさいというのが、彼らの中での暗黙の了解であるため、渋々着ているが戦闘になると必ず鎧を脱いで戦う。


毎回毎回なぜだとセイは思っているが、こればかりはどうしようもないと彼は半ば諦めている。


また、本人曰く動きの速度が落ちるというしっかりとした理由でもあるため、セイは余計に強く言えないのだ。


「またか、ジア」


「すいません、夢中になってしまって」


「時間には間に合っている。問題はない」


「次こそは少し前に必ず現れますよ」


「毎度毎度聞き飽きたが、期待しているぞ」


彼女を王にすることがセイの生きている意味であると彼自身は思っている。


彼女自身、若干十五歳でありながら両親から受け継いだ強靭な肉体と子供とは思えないほど成熟した考えを持ち合わせ、王妃と王から受け継いだ指輪をそれぞれ右手の親指と左の小指にはめ片時も離さずに身につけている。

そして双方から受け継いだ絶大な魔力を持ち、ほとんどの魔法を完璧に使いこなすことができる。


「しかし王はいつ見てもお美しい」


「褒めても砥ぎ石しかやれんぞ、ジアよ」


「頂けるんですか!!」


彼女は薄い灰色の肌と白い髪を持ち、父である王から鋭い目つきを受け継ぎ、母である王妃から美貌を受け継いだ。

さらに右目は王たる証の赤い目を持ち、左目には魔族たる証の青い目を持っている。


「サイさ〜ん、馬連れてきました〜」


呑気な声と共に馬に乗りながら彼らに手を振る女性が一人彼らの元へ向かって来る。


「この子ですよね?」


「ああ、ありがとう」


「おはようございます、エデさん」


「おはよう、ジア」


「お母さん!!」


遠くから彼女を呼ぶ声が聞こえる。


「今日も頑張りましょうね」


「ああ、エデ」


彼女は王にそう言うと馬から降り、センたちの元へ歩いていく。


「………あいつは幸せだな」


「そうですね」


エデはセン達と話している。

エデはセンと婚約し、シンとキエは二人の間に出来た子供である。

二人は双方によく似ていて、シンは笑顔を絶やさない心優しい女の子、キエはおとなしく穏やかな男の子である。

双方ともに小さな身体に無尽蔵の体力を持ち合わせ、左目は青く、センのようなぼさぼさな髪ではなく、エデのような美しく艶やかな髪を持っている。


「シンもキエもいい親を持ったな」


「そうですね」


「なあ、サイ。私の両親はあんな感じだったか?」


あんな感じというのはセンとエデの今の状態をさしているとセイは思った。


二人ともべたべたとくっつき話している。


時折センがエデにちょっかいをかけ、エデも応えるようにセンにちょっかいを出すその様は正直見ていられないと彼は常々感じていた。


「…………彼らよりも酷かったですよ」


「…………そうか」


彼女はよく彼に自身の両親、つまるところ王妃と王のことを尋ねる。

彼女が幼い時、勇者の侵略によって国は崩壊し、二人は亡くなったため、彼女は二人のことを全くと言っていいほど覚えていない。


だから時折こうやって、彼に尋ねるのだ。


「………そうか、見てみたかったな」


「見ないほうがよろしいですよ。私達も嫌になる程でしたから」


「それでも、見てみたかったな」


「遅れてすいませんねえ」


後ろから声をかけ、お決まりの形だけの謝罪をするのもまた彼らの仲間の一人である。


「毎度毎度お前は懲りないな、キオ」


「いやあ、お陰でいい薬草が取れましたよ」


彼女はそう言ってセイと王に自分の鞄の中身を見せる。

何が何だか彼らには全く区別がつかないが、彼らは彼女の持つ専門的な知識を持ってすれば、一目で分かるのだろうと思った。


「あれ?これいつ摘んだんだろう?」


彼らの中で彼女の評価は下がった。


「王、そろそろでは」


彼が耳打ちをすると王は周囲を見渡し口を開いた。


「全員揃ったな」


「ええ」


「集まれ、皆」


彼女がそう言うと彼らはぞろぞろと彼女の前に集まる。


「今日も頼む。何かあればすぐ言え」


「嬢ちゃんも言えよ」


「分かっている、行こう」


セイをはじめ各々が自分の馬へ跨る。シンはエデの後ろに、キエはセンの後ろへ乗る。

キオは馬ではない別の動物に乗り、後ろにはジアを乗せている。

王はセイの後ろに乗って彼の胴へ手を回した。


「サイ、頼む」


「仰せのままに」


「行くぞ!!」


馬達が勢いよく走り出した。

手綱捌きは全員かなりの腕前だが、センは頭一つ抜けている。

いつも誰よりも先に先頭を走り、彼らに危機を知らせる重要な役目を担っているが、これも彼の腕が成せることである。

彼もこのことについては誇りを持っているようだ。


「また先頭行くぜ。気をつけて来いよ」


「キエは大丈夫か?」


「こいつには慣れてもらいてえからよ。それにこいつがついて行きたいって言うんだ」


キエは後ろにいる彼らの方を見て笑みを浮かべる。


「注意しろよ」


「任せろ」


返事を最後にセンとキエはどんどんと速度を上げていった。


「相変わらず、いい腕といい馬だな」


「本当ね」


「王もいつかはできるようになられたほうがよろしいのでは?」


「私はセイに乗せて貰うからいいわよ」


「できれば一人で乗るようになっていただきたいのですがね」


「うおお!!」

「どけ!!!」


後ろから叫び声と共に何かが転倒する音が聞こえ彼らは振り返る。


「止まれ!!」


「はい!!」


慌てて馬を止め、再度後ろを振り返るとキオとジアが乗っていた動物が横転し、二人は動物より少し前で倒れている。


「おい二人とも!!」


王はすぐさま降りて二人を起こす。


「大丈夫か!!?」


「痛えけどまあ大丈夫ですよ」


「こちらも大丈夫ですよ」


彼らは馬を降り二人に駆け寄る。


「何があった?」


「いきなり目の前に人型の何かが出てきてさ、どけって言ったんだけどそいつ退かなくて結果これですよ」


「私達は大丈夫ですが、キオさんの相棒は大丈夫でしょうか?」


「もう起き上がったから多分大丈夫だよ。ただまあ、一応検査したいから少し止まるね」


起き上がったキオの相棒と呼ばれる動物のしたから、人型の何かが現れた。

セイはその何かに向かって歩き始めた。

右手は剣の柄にかけ、左手では頭を抱える。


「おいお前」


反応がなかったため、うつ伏せになっていたを何かを彼は脚を使って仰向けにする。


彼は見た目からして男だと判断した。


「おい、お前」


「………ん?………首がねえ!!」


いきなり目を覚ました彼は、セイの姿を見て少し後ろに下がった。


「おい、言うことがあるだろ」


「何の話だ?勘弁してくれ腹減って死にそうなんだよ」


よろよろと立ち上がりは彼は再び森の中に入ろうとしたためセイは彼の腕を掴み、地面へ叩きつけた。


「お前、私の仲間にぶつかっておいて謝罪もなしか?」


「もう本当に腹減って死にそうなんだよ。頼むよ」


「謝れと言っているんだ」


「もう良い、サイ」


王はセイに止めるよう促した。

彼はそれを素直に聞き入れ手を離し、王の後ろへ下がった。


「お前、魔物だな?」


「だからなんだよ、殺すってか?」


「おいキオ、薬を」


「はいはい」


「王!!どうしてそのようなことを」


「まあまあ。サイ、確かにお前は正しい。これがもし人間だったなら私はこいつを始末するだろう。だが、数少ない魔物だ。もしかしたら私達の仲間になるかもしれないじゃないか」


「はいよ、王様」


キオが黒い液体が入った瓶を彼女へ渡すと彼女は受け取り、倒れている彼へ差し出す。


「さあ飲め」


彼は渡されるや否やろくに何かを確認せずに一気に中身を飲み干した。


「っ!!はあ、ありがとう」


「お前、魔物だよな?」


「ああ、俺は魔物だ。昔は人だったけど、腕を移植されたらこうなっちまった」


「ひとまず、センに知らせよう。セイ、頼む」


「仰せのままに」


彼は左手に抱えていた兜へ右手を入れる。


「何してんだ?」


「伝言用の魂を取り出す」


兜から引き抜かれた右手には青白く鈍い光を放つ球体が握られていた。


「それが魂?」


「センに伝言を頼む」


そう言って彼が右手から魂を放つと魂はセンが行った道を辿るように進んで行った。


「さて話を聞かせてもらおうか?」


「何でも答えるよ。あんたらは恩人だし、一人を除いて」


そう言って彼はセイの方を見た。


「許してくれ、彼は仲間に関してはあんなふうになってしまうんだ」


「まあこっちも悪かったから、責めないさ」


「さて、お前はどうしてここにいるんだ?」


「俺は移植されて魔物になったってことはさっき言ったじゃん?」


「ああ」


「俺に移植された奴がなのか俺が人間だったからなのか知らねえけどよ、魔力が作れないんだよ」

「魔力の生成が行われないなんて個体があるのか?」


「ありますよ。異常個体ですね」


「異常個体?」


「私がお答えします」


「頼む、セイ」


「異常個体というのはごく稀に生まれる個体であり、最大の特徴は通常とは全く違う性質を持って生まれてくるということです」


「違うというのは」


「本来持つ魔力を生成するということができない代わりに、単純な力は同種族の何倍も保有する違いや力が全くない代わりに同種族の何倍もの魔力を保有するというような違いです」


「じゃあ俺は異常個体の腕を移植されたってことか?」


「おそらくそうだろう。人間に魔物の身体を移植する例はいくつか聞いたことはあるが、基本は魔力を生成できるようになり、普通に過ごすことが可能になる」


「そうなのか。もう毎日息止めて生活してるような感じだったから、久しぶりに息したって感じだ」


「異常個体が長く生きるのは非常に稀だ。特に魔力生成ができない個体は直接摂取する以外に生きる方法は無いからな」


「ずっとまずい魔犬食って過ごしてきたよ」


「ひとまずこの薬を摂取する限りお前は生きることが可能だ」


「………その薬ってどうやったら作れるんだ?」


「作り方はこいつしか知らない」


王はそう言って、キオを指差す。


「そういうことだ。生きたければ、私たちと共に来い」


「止めなくていいのですか?」


ジアはセイに小声で尋ねる。


「王は自分を曲げないお方だ。誰に何を言われようと変えることはないだろう」


彼はもう内心諦めていた。

彼女は以前から一度決めると余程のことがない限り曲げない。

それは彼女にずっと寄り添ってきた彼だからこそ分かることだった。


「…………分かった。あんたらについていくよ」


「では早速だが、どのくらい強いのか見せてもらおう」


「え?」


「当たり前だ。我々の目的のためにどれほど君が働けるか知っておきたいんだ。君が強いことを示せば、喜んで君を仲間として迎えよう。だが、最悪、ただの荷物持ちになるがな」


「………いいぜ、やってやるよ!!どうすればいいんだ?」


「お前に今から薬をしこたま飲ませてやる。その後にお前には………この中で一番弱いのって誰?」


「私です」


手を挙げたのはジアだった。

こういう時に彼は必ず手をあげる。

彼自身がこの中で一番弱いということを自負していた。

自身のスケルトンという種族の時点で既に彼らとの差は大きい。

仮にいくら異常個体で、魔力が魔法使いと同じくらいとは言えやはりもともとの素質にも差があるため彼らの差は広がるばかりである。


しかし、彼自身全く差は気にしていない。


「ジアか。よし、お前にはジアと戦ってもらう。お前と違ってジアには薬は飲ませない」


「いいのか?」


「お前がジアに勝てるとは思わんからな」


「よし!!やってやるよ!!」


「お手柔らかに頼むよ」


彼には思惑があった。

彼自身は弱いだけで劣っているわけではないということの証明を改めてすると共に新参者が自分を見た時に見せた余裕の表情を屈辱に染めるためである。


「ジア」


「何でしょうか王よ」


「やり過ぎるなよ」


「やっぱり王には敵わないなあ」


彼自身紳士的に振舞うことを心がけているが、やはり根は恐ろしい魔物であることを見抜かれたことに彼は内心少し驚いた。


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