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城下町の魔法少女  作者: あしま
第三章 魔獣騒乱
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そこに至るまでの経緯3

「こんな天気の良い日に雷ですか?…」


「近くに落ちたね~?」


 とぼけた事を言ってるが、顔は笑って無いエルダーヴァインご夫妻でごさいます。


 雲ひとつない青空に稲光も無く雷鳴だけが轟く訳ですから、これが魔法によるものだという事は…まあこの夫婦じゃなくても分かるというものですけれど、これが魔法使い=シバースとなると、五感からの情報だけでなく近くで魔法が使われたというのが分かるものなのです。理屈はともかくそういう事なの。


 ここ聖グリュフィス聖堂は、今まさにマリー達がバトルしてるのと同じ地域、直線距離で3㎞も離れていない…


 という訳で、雷鳴が轟くよりちょっと前から魔法を使った何かが起こってるというのを、敏感に感じ取っていた所へのこの雷鳴という事で、クルムちゃんが過剰に怯えてしまってエリエルちゃんにしがみついている。


「お姉ちゃん…」


「うん、大丈夫よ…」


 等と言ってみても慰めにもならない。


 そこで


「私、見に行きましょうか?」


 申し出てしまうのは、エリエルちゃん持ち前の正義感からだけれども


「うーん…もう少し様子を見てみようか…」


 迂闊に行動すべからずという事で、気にはなるけどもメリルさんの指示に従う事にする。


 しかし、もう談笑をしてるという雰囲気ではなくなってしまって、気まずい空気が流れてしまっております。


 それを敏感に感じたのか、不安がるクルムちゃんを心配するように、白モフ猫ロココさんがすり寄ってくるから


「ありがとう、君も心配してくれてるんだね?」


 エリエルちゃんが声をかけるけれども、ロココさんはまるで「ふ、ふん!心配なんかしてないんだからね!」とでも言ってるかのようにそっぽを向いて、でもクルムちゃんの足元にスッと優しく座り込むのでした。















「よくさ…勇敢なのと無謀なのは違うなんて言うけど、アタシはどっちも変わらないだろって思うんだよね?まあどっちにしたってそういうの嫌いなんだけどさ!」


 目の前の狂人が何か言ってますけれども、今のパーソンくんにそれを聞いてる余裕なんて全くありません。


 どうしてこうなった?…


 朝からついてない日ではあったけれども、その行き着いた先がもしかしたら今日が命日になるかも…なんてシャレにならない事になってる状況。


 相手があのヴィジェ・シェリルって事で、誰だって命は惜しいに決まってますから本当は逃げ出したくて逃げ出したくてたまらないほど恐ろしくて、剣の柄を握る手だって震えちゃっている。だけれど


「逃げてください…」


 理由はわからないけども、おそらく、この狂人に追われていたのだろう少女を無事逃がす事が、守護隊隊員である自分の使命だと割り切って、何とか踏ん張ってるけど声が震えちゃってるという状態。


 詰んでます。


「あなたの方こそ…」


 マリーの方だって、見ず知らずの相手とはいえ、自分のせいで命を落とすような事があったら申し訳ないでは済まない事です。何とかこの自分とさほど歳の変わらないように見える若い守護隊隊員に逃げてもらいたい。


 しかし、これまでの行動ですでにマリーの魔力は約半分になっているし、あの雷撃でも無傷に見えるシェリルに、対抗できるだけの魔法なんて持ち合わせてはいない。


 詰んでます。


「僕は守護隊隊員です。市民を守るのが使命です…ですからあなたは…え!?」


 自分の事は気にせず逃げてください、まで言い切る前に、ずっと視線から外していなかったはずのシェリルの姿が忽然と消える。


 迂闊に視線を動かす事の方がリスクが高いと感じ、そのままジッとして待つことにしたパーソンの目と鼻の先に次の瞬間に現れ


「お前邪魔だよ?…」


「うわっ!」


 ほぼゼロ距離…小声で喋った息が吹きかかるぐらいで言われれば、咄嗟に一歩後ろに下がらずにはいられない訳で、少しバランスを崩したところへシェリルが有無を言わさず左手の短剣を切り付けてくる。


 それを紙一重で何とかかわしたけれども、空振りした勢いで回転しながら、今度は右手の短剣を逆水平チョップよろしく切り付けてくる…


 これはかわせないと判断したパーソンは、身体を捻ってシェリルの剣筋の軌道に合わせ、鞘から剣を少しだけ抜きだし剣身でそれを受け止めた…


 受け止めた?


「はあ?」


 続けざま次の攻撃が来るかと思って身構えていたのだけれども、何故かシェリルが驚愕し動きが止まっているから、その隙に鞘から剣を居会い抜きの要領で抜いてシェリルに向かって切りつける。


 が、それはあっさり空を切り、距離を置かれる。


 距離を取ったシェリルは、なおもまだ今の攻撃を受け止められた事が納得いかない。


「お前何かやったのか?」とばかりにマリーを睨み付けるけれど、当のマリーも事実何もしてないものだから、パーソンがシェリルの攻撃をしのいだ事が、信じられないとばかりの表情をしている。


 シェリルから目を離す余裕の無いパーソンくんだけが、今しがた自分のやってのけた事の重大性に気付いていない。


 こうなるとシェリル姉さん、このパーソンくんをちょっと試してみたくなるという事で、今までだって手を抜いていたという訳ではないのだけれども、ギアを一段上げてパーソンくんに真っ直ぐ突進してくる。


 真っ直ぐ突進してくるけれど、このお姉さんが何も考えてないなんて事はちょっと考えられない。


 何かトリッキーな事を仕掛けてくるかもしれない、と最大級の警戒モードになるパーソンくん。


 それを嘲笑うかのように、シェリル姉さんパーソンくんの目の前で二つに分裂する。


 分裂ったって本当にシェリル姉さんがいきなり二つに分かれる訳もなく、これはいわゆる残像攻撃。


 とはいえ、まあ2対1の戦闘だと思えば対応できない事も無いですし、言ったって一人の人間がやってる事ですから、その剣筋には本当に本当に微妙だけれどもタイムラグがある訳です。


 タイムラグがあるのなら、剣筋を読み、最速、最短で無駄の無い完璧な動きをすれば防ぎきる事ができななくはないって理屈で、パーソンくん、先ずはシェリル1の右手短剣の一撃をかわし、次にシェリル2の左手短剣を剣で弾き、さらにシェリル2の右手短剣を紙一重で避け、最後にシェリル1の左手短剣を鉄鞘を使って受け止める…


 って訳で、シェリル姉さんの怒涛の攻撃を全部防ぎきっちゃったからさあ大変。


「はああああ?」


 とりあえずシェリル姉さんは再び距離を取った訳ですけれども、これ書くのも言うのも簡単ですけど、実際にそれをやってのけるのは人間業じゃありません。


 何しろシェリル姉さんパラノーマルです。


 たとえば避けたり受け止めるだけなら、まぐれでできない事もない。


 できない事は無いのですけどパラノーマルっていうのは、身体能力の全てにおいて常人を上回る訳です。


 それは当然腕力にも及ぶ訳でして、避けるならともかく受け止めたのなら、そのパワーで弾き飛ばす事ができるんですよ。


 それを、屈強なゴリマッチョとかならともかく、まだ身体も出来上がってないパッと見ヒョロッとしたガリガリなガキんちょがやってのけたって事から考えられる事は多くはなく


「驚いたな…お前パラノーマルか?」


 という結論に至るのです。

そこに至るまでの経緯…3回でも終わらなかった…

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