戒め
やってくる やってくるよ
闇夜に乗じて やってくる
はたしてそれは 災厄か
音無く静かに やってくる
やってくる やってくるよ
闇夜と共に やってくる
それが来たら 休息は無い
恐怖を引き連れ やってくる
もしもそれから 逃げたいのなら
浄罪の聖女に 会うことだ
浄罪の聖女に 懺悔して
全ての罪を 赦してもらえ
──とある村の伝承歌──
その少女は、どこからともなく人々の前に現れる。
そしてその町に数日滞在すると、どこへともなく去っていく。
その少女を見た人々は言った。まるで天使のように清らかな少女だったと。日の下に立つ少女は、見ているだけで心が洗われていくような、そんな神々しさを持った少女だったと。
そして人々は、お天道様の下、その清らかな少女に懺悔した。
── そうして悔い改めれば、“浄罪の聖女”が、罪を浄化してくれるからだ。
その少女は聖女だった。
だから人々は、自らの罪を軽くしようと聖女に縋った。
聖女を利用して罪を軽くしようとする悪人もいたが、そういう輩の心を改めさせるだけの力を少女は持っていたため、運良く浄罪の聖女に懺悔できた者は皆、善人になった。
しかし、闇夜に現れた少女を見た者は皆、ただこう言った。
「 どうか赦しを!」
それ以上は何も言わず、その人々は何かに怯えるように ─それ以上の罪を重ねる暇も無い程に─ 一生を過ごす。
中には、闇夜に立つ少女を見てから体のどこかが不自由になった者もいた。 そしてその人々は、ただひたすらに報われることの無い懺悔をし続けた。
その少女は聖女だった。
昼と夜とで役割を変える聖女であった。
少女は罪深き人々の住む町を探して旅をした。そしてそこで、役目を果たす。
日の下の少女は、浄罪の聖女。清らかで純朴な、人々の懺悔を受け入れる者。
闇夜の少女は、断罪の聖女。戒めの神と共に夜の町に現れ、罪を背負う人々に一生の罰を与える者。
断罪の聖女は、人は何かしらの罪を負うこの世では、人々の恐怖の象徴と言えた。だから断罪の聖女は、聖女でありながら人々に恐れられていた。
戒めの神に守護されど、聖女は人間の少女だった。
神は人間との交流、特に心の交流をほとんどしないから、少女はいつも孤独だった。
ぽつりと聖女は呟く。
「 それが私への罰だから。私の背負った罪の大きさ。代わりに背負った罪の重さ。聖女の役目は私への罰で、私の報い。 ……私が罪を背負ったことで、あの人達が幸せに暮らせているのなら──それが私の救いになるの。」
今日も今日とて、聖女は人々に赦しを与え、罪深き人々を断罪する。神の戒めを背負い、聖女自身への断罪を受け続けながら。
9/24 一部の文章の修正と、一部の文章の前に空白を追加しました。
3/18 あらすじの一部を変更しました。
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