森の居場所
鬱蒼とした森の落ち葉を踏みつけ、本を片手に少女は歩く。少女はいつもここで遊んでいる。彼女の両親がそうさせたのだ。少女の両親は彼女が知るよしもないようなことを研究し、失敗する度に落胆する。少女の周りの人間もそうだ。何をやっているのかもわからない。ただ、王の命令だということ以外は。
森の奥に進む。普段は大の大人も入りたがらないような場所に彼女の居場所があった。先にこの森に来ていた少年と別の少女もそうだ。
「遅いぞエヴァ。あんたに限って寝坊とかないよな?」
別の少女が眉をひそめ、腕を組む。きつく縛った黒髪とツリ目が威圧的だ。
「ごめんなさい...」
エヴァと呼ばれた少女は俯いた。背中まで伸ばした栗色の髪を編み込んだ彼女はとても儚く見える。
「アレクサンドラ、お互い様だろう?君だってよく寝過ごすじゃないか。」
無表情の少年がため息をついた。ずれた眼鏡を直し、髪を整える。
「あんたはエヴァの事になるとムキになるよな、イライジャ」
「からかっても何も出ないぞアレクサンドラ」
にやりと笑った彼女の言葉を素っ気なくイライジャは一蹴した。
「まさかあんた自分が貴族って事気にしてんの?」
「さっきから何を言っているんだ君は。僕は彼女に恋心を抱いた覚えはない。エヴァが大人しすぎて苛立たしいからだ。」
喧嘩が発展しそうな所をエヴァが止めに入った。
「ねえ、止めてよ。それよりも私、見てもらいたいものがあるの...」
見てもらいたいもの、にイライジャが反応した。
「それはなんだ」