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4 話

本日、2 話目を投稿しています。



不思議な模様が浮かび上がる卵。

多くの卵を見てきたベテランの医師でも、このような模様は見たことがないと話していた。


部屋には、俺の他にエリシュとマカラ、マカラの番であるリラメラの 4 人がいる。

少し前から卵がピクピク動きをみせている。そろそろ進展があるのかもしれない。


子が自身の力で這い出てくるまで静かに見守るのが大人の義務 。すぐに出てくることはないだろうが、やはり気になりじっと見つめてしまう。



竜の子は、自力で殻を破るのが最初の大仕事なのだが、卵の殻には魔力が豊富に含まれておりかなり硬い。壊すのに一苦労だろう。


一般的に、魔力の多い子は1日~2日で出てくるが、魔力の少ない子は7日~10日かかる。


子が生まれにくくなった原因はまだ解明されていないが、個々の魔力量の減少かあるいは魔力の質に何か原因があるのではないか、というのが研究機関の見解だ。








だが、今はそんなことよりも。

俺の最重要事項はーーこの子は、俺の番なのだろうか、ということ。




俺は、今年で551歳。竜の寿命でいうと微々たる年数かもしれない。だが、番と出会えない日々の苦痛や絶望は計り知れない。今、精神が壊れていないのが不思議でならない。


書物を漁り調べてみたが、今まで番に出会えなかったという記録は存在しなかった。だから、己を保てた。希望を持っていられた。




シンは神に祈りを捧げ、願う。




ーー頼む、番であってくれ。





卵がグラグラ揺れ、ピシリとひびが入った。



ミシ……ミシミシっ……


ぽこんっ……と殻に穴があく。



「「「「 ?! 」」」」




は、はやっ!早くも殻に穴が開き、室内にいる全員が驚きを露わにした。











ーーーあぁ。




シンは、確認することもなく己の番だと分かった。

小さな穴から香り出てくる甘い匂いに胸がぎゅっと締めつけられ、暗く濁っていた感情が洗い流されていく。




ーーー俺の……俺の番。




愛が溢れて止まらない。


愛おしい。もう、離れたくない。という感情で心がいっぱいになる。



ーー長い間待たせやがって。



温かいものが頬を伝う。


俺は、泣いているのか?


…ハハっ…だが……悪くない気分だ。



「ーーシンっ」


「シン様っ!」


「シン。お前、泣いてんのか!? 俺達の子はお前の番…じゃなかったのか? 」


マカラに問われ、俺は首を横に振った。


「ーーえ、違う?!じゃあ、番だったんだな!!なんだよお前、嬉し泣きかよ!!紛らわしいな、おいっ!!」



マカラに良かったな!と、肩をバシバシ叩かれる。

エリシュとリラメラは、そっと安堵の溜息を吐く。


お前はいつも五月蝿い。

今は、幸せの余韻に浸っていたいんだから、好きに泣かせてくれ。




ーーあぁ、本当に嬉しい。



早くも卵の殻に穴を開けた俺の番。

出てくるのは明後日頃か。いや、もしかしたら明日の夜くらいには出てくるかもしれない。


シンは番が殻から出てくるまで側にいようと決意した。体力はかなり消耗しているが子が自分の番だと分かった今、側を離れるという選択肢はない。


それに 1番に挨拶したいからな『俺はお前の(もの)だ』って……。



「……シン。良かったですね。おめでとうございます」


エリシュと目を合わせ、ありがとうと深く頭を下げる。


「シン様。私達の子をーーヒナトゥナを宜しくお願い致します。幸せにしてやって下さいね」


あぁ、必ず。必ず幸せにしてみせる。

リラメラに強く頷く。


「ヒナを泣かせたら承知しねーからな」


あぁ、分かっているさ。

マカラにニヤリと笑ってみせた。





俺の番。待っているから、早く出ておいで。



ーーと思っていると。








ボコっ!ピシッ!ミシミシミシっ!


……ポッこんっ……コロコロコロ…








「「「「 えっ? 」」」」







ちょこん (卵から顔を出すヒナ)


「「「「 !? 」」」」


バサッ! (翼を広げるヒナ)


「「「「 !!?? 」」」」


パタパタ (飛ぶヒナ)


「「「「 ーーっ!!?? 」」」」










この時の 4 人の想いはひとつに重なっていたと思う。


『卵から1時間で出てくるなんて ありえない!!』と。


そしてーー


『なんでいきなり翼が生えてるの!?』

『えっ!?もう飛んでるし!?』


4人とも、驚愕で口が開きっぱなし。




たぶん、いや、確実に今の竜人族の中で 1 番力の強い者は 俺だろう。その俺だが、卵から這い出てくるのに 約半日。

エリシュは、1日と少しかかったらしい。



なのに、俺の番ーーヒナは約1時間。



アリエナイ。


その上、ヒナは翼を生やしたり飛んでみせたりているが……普通なら、翼を出す訓練だけで 約 3 年かかる。それが終わり、飛ぶ訓練に移って 約 5 年かけて飛ぶようになる……はずなのだ。



……ヒナがどれくらい規格外か、分かってもらえただろうか?





青みがかった銀髪に漆黒の大きな瞳と艶のある灰色の翼。

ぽてっとした愛らしい唇は吸いつきたいくらい艶めかしく顔立ちも母に似て整っている。

まだ生まれたばかりなのに、将来絶世の美女になるだろうことが想像できる。


ヒナの魂に刻まれている【愛の刻印】に顔が緩む。更にヒナの右手に刻まれた俺と全く同じ【祝福の模様】。まだ生まれたばかりで模様が薄いが、これがあれば変な害虫はよってこないだろう。


もし、いたとしても……叩き潰す。



ふらふらしながらも、一直線に俺に向かって飛んでくるヒナ。

視線も俺だけに固定されている。


両親もいるし、竜の王だっている。

なのに、ヒナの瞳は俺だけに向けられている。


まさか、俺がお前の番だって分かっているのか?


生まれてから 1 年くらいまでは 嗅覚器官が未熟なため、番が近くにいても番だと認識できないはずなのだが。


まさか、親だと思ってはいないよな?

俺はお前の番なんだぞ、ヒナトゥナ。



ヒナがぽふっと胸に飛び込んできて、満面の笑みを俺に向け、きゃっきゃと声を上げる。


あまりに小さい身体にドキリとしながら、苦しくないように慎重に優しくそっと抱きしめ、ヒナの体臭の混ざった甘い香りを肺いっぱいに吸い込む。



あぁ、なんていい香りなんだ。



エリシュとリラメラは微笑みを浮かべ、マカラは少し悔しそうな表情をしていた。




ヒナの真っ白な額にキスを落とし、シンはこの先に待っているだろう幸せな未来を想像し頬を緩ませるのであった。






《リラメラ》


あらあら。うちの子ったらすんごい美人さんね。お母さん鼻が高くなっちゃうわ〜!

シン様はイケメンだし、ヒナトゥナを溺愛しそうだし、娘を安心して預けられるわね。


まぁ、ヒナトゥナにはいろいろ聞きたいこととかあるけどそれはまた日を改めましょうか。シン様もヒナトゥナと一緒にいたいだろうし。


それにしてもこの卵の模様変わってるわ!

研究室に持ち帰って調べてみようかしら?すんごい発見があるかも!


あぁ〜ん、たのしみ!!!




おっとりな性格のリラメラ。

研究バカと呼ばれるくらい研究が大好きで、同じくらい夫であるマカラも愛している。


人前でイチャつくことに抵抗はなく、マカラと視線が絡めばキスをしている有様だ。


そして、それを度々目撃することになるヒナトゥナは、それが竜人族の普通なのだと思い込み、シンに照れながらもチュッチュするようになり、日常と化していく。


もちろん、シンはそれを嬉々として受け入れ訂正することはないのであった。






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