78.魔術士というもの・1
その藍色の伝書鳩がソルカンヌを訪れたのは、ちょうど真騎士部門の最終試合が行われる日の朝だった。
晩餐会の翌日から武楽会が始まって既に半月近くが経過している。
最初こそ警戒心もあって各自部屋に運ばれる朝食をとっていたが、初戦である正騎士部門の勝敗が決する頃――つまりレイテア滞在一週間もすれば慣れたもので、こうして雑談がてら皆が食堂で食べるようになった。
その目当てはビュッフェ形式の食事にある。
国の威信がかかる一大行事であるためか、昼夜問わず主菜副菜飲み物全てレイテア名物がところ狭しと並べられ、実に楽しい食卓なのだ。中でもここソルカンヌの特産であるディナル酒が水と同じく飲み放題となっていて、今では部屋で食事をとる者は皆無だった。
給仕を除けば食堂にはアルバリークの人間しかいない。
とはいえ、出場者だけではなく護衛の騎士や記録の文官、他にも後方支援方の人間がいるので周囲は相応にざわついている。そんな中、真澄たち神聖騎士部門の面々が陣取る一角にそれは来たのだ。
「えっ、私?」
目を丸くしたのは唯一の地方楽士イヴである。誰かを探すように宙を旋回していた鳩が、見つけたと言わんばかりに彼女の前で羽を休めたからだ。
こうして目に鮮やかな伝令が飛んでくること自体は珍しくない。
真澄にしてみれば最初こそ驚いたものの、今となっては携帯電話みたいなものだと理解した。すみれ色なら宮廷騎士団、深い緑なら第一騎士団といったようにその色で差出人の素性が判るあたりも便利なのだが、
「藍色って」
テーブルの上で羽繕いをする鳩を眺めつつ、真澄は首を捻る。
セルジュと同じ色だ。
現役世代のアークやカスミレアズの魔力はもう少し明るい空の青なので、どうも年配からのコンタクトのようである。もしかして帝都で留守番をしている指南役の誰かだろうか。考えてみるも、それならば地方楽士であるイヴに連絡があるという点が奇妙だ。
「ヴェストーファからじゃないのか」
愛くるしい鳩を前に戸惑うイヴに、横からアークが声を掛けた。
そこで思い当たったのか、「言われてみれば司令の鳩です」と合点がいったようにイヴが言う。小さなくちばしに向かって彼女が指を伸ばすと、藍色の鳩はするりと解けて一枚の封書が現れた。
封蝋を丁寧に割りイヴが中身に目を通す。
一同が注視する中、文を追うにつれてその顔は喜びに綻んだ。
「メリノの父と妹が来てくれるそうです。今日の午後にもソルカンヌに到着するとか」
来なくていいと言ったのに。
イヴはそう呟きながらも、口調に責める様子は一切ない。
「明日からの神聖騎士部門に合わせて、わざわざ……こんなことならやっぱり連絡しておけば良かった。長い滞在になってしまうわ、そういえば宿はとっているのかしら。ゆっくり羽休めを勧めただなんて司令も司令だわ」
眉を下げつつその呟きに登場しているのはヴェストーファ方面を守る地方騎士団の司令である。
そこは他でもない真澄がこの世界に召喚された記念すべき地であって、アークたちとの出会いの場でもある。かつて大規模な飢饉に襲われた辛い過去を持つかの地は、穏やかで律儀な司令が今日も守っているだろう。
彼は初対面の真澄に対しても気配りの人だった。
ウォルヴズ襲来の有事に放り出したヴァイオリンを、アーク経由で丁重に返してくれたのだ。傷一つつかずに戻ってきた愛器にその人柄が滲み出ていた。
そんな司令はやはり律儀なようだ。
イヴは確かにヴェストーファ地方騎士団の補給を担う重要な楽士だが、遠く離れていてもその動向に合わせて便りを寄越すなど中々できない濃やかさだ。
「迎えに行きたいけど、何時に到着するのかしら」
手紙を丁寧に畳みながらイヴが思案顔で斜め上を見た。すると、向かいに座っていたリシャールが「それなら、」と受ける。
「輸送の定期便に合わせて移動してくるはずだよ。この時期のレイテア国内は護衛がないと街道は歩けないから」
「……赤の周期ですものね。ヴェストーファではそこまで酷くなることはないですけど、レイテアは苦労しているみたいですね」
ため息混じりでイヴが手を頬に添える。言葉少なな様子が、かえって「赤の周期」とやらの深刻さを表しているようだった。
その単語、真澄が耳にするのは二回目である。
いい加減頃合いだ。知らずに痛い目を見るのはもう沢山でもある。よって、真澄はイヴたちの会話を邪魔しないよう、こっそりと隣に座るアークを肘でつついた。
「晩餐会の時にも話に出てたけど赤の周期ってなに?」
「……そうか、お前の故郷は魔獣がいないんだったな」
未だに信じられないとでも言いたげにアークが呟く。
真澄は肩を竦めるに留め、続きを促した。アークは杯に波々と注がれたディナル酒で喉を潤してから口を開く。
「平たく言うと大陸全土で魔獣が増えて危険な時期だ。大体、十年に一度来る」
「なんで増えるの?」
「繁殖期が重なるからだ」
本来であれば種ごとに繁殖期は異なる。一年に一度、春だけであったり、三年に一度だが半年続くものがいたり。
これが平時はばらついているものが、一定期間に重なることを赤の周期と呼び習わすのだ、と説明が続く。
「どの魔獣も縄張りが広がる上に攻撃性も高くなる。面倒な時期だ」
心底鬱陶しそうにしながらも、アークは真澄に「それを差っ引いてもお前は運が強すぎるが」と投げてくる。
「いくら赤の周期ったって、いきなりレヴィアタにお目にかかれるのはお前くらいのもんだ。自慢できるぞ、さすがだ」
「いやそれ全然誉めてないでしょ」
投げっぱなしすぎる評に、真澄の突っ込みも力が入らなかった。
それにしても穏やかでない話だ。
戦う術はおろか魔獣についてのまともな知識さえない真澄の頬は自然引きつる。分かりやすく警戒を露にする真澄を見て、アークはディナル酒の杯を傾けながら「心配ない」と続けた。
「レイテアが一番分かってる。お前の誘拐計画は別にして、魔獣に関しては輸送も含めた武楽会中の護衛は抜かりないだろうよ」
何かあればそれこそ事だ。
武楽会には最高来賓としてアルバリークの王太子夫妻が招かれている。要人中の要人、まかり間違えばアルバリーク帝国を本気で怒らせることになる。彼らに一切の危害が及ばないように采配すると、必然ソルカンヌ自体の警戒レベルは最高に引き上げられるわけで、ここにいる限り安全は保証されているというのがアークの弁だった。
「とかいいつつ絶対はないってのが経験則ってやつよね」
「疑り深い奴だな」
「そもそもヴェストーファで『あり得ない』を体現したのが私だったわけでしょ。あのスパイ容疑のせいで散々な目に遭ったの一生忘れないからね」
そのお陰で色々な経過を辿って今に至るのだ。
鏡を見ずとも渋い顔になっているのが分かる。今は懐かしい出逢い、ヴェストーファの騒ぎを思い出したか同じようにアークもしかめっ面になった。
「まあお前の引きが強いのは否定できん。そういう意味ではあくまでも蓋然性が低いだけであって、確かに何が起こってもおかしくはない」
可能性がゼロであると断じられる物事は早々ない。
総司令官の真面目な口調でアークが嫌すぎる同意を寄越してくる。分かってはいても、いつどこで何がどうなるかはその時になってみないと分からないのだ。
誰が日頃から「まさか誘拐されるかも」だの「神話の魔獣に出くわすかも」だの用心するというのだろう。まして「別の世界に召喚されるかも」なんてその最たる例のはずが、真澄には現実となったのだ。
本当に世の中何が起こってもおかしくない。
「とりあえず独りで出歩くのはやめておけ」
「逆にその程度しかできないってのも微妙よね」
「……まあな」
そして真澄とアークは口数を若干減らしつつ、朝食の続きを胃に収めていった。
そうこうする内、最終的にイヴとリシャールの話し合いは午後に到着する予定の定期便に合わせ競技会場を抜けて街へと迎えに行くということでまとまった。
真騎士部門の最終試合途中だが、と申し訳なさそうにイヴが頭を下げる。
その意は応援観戦ができないことへの詫びなのだが、それに対してアークは「構わん」と相変わらず鷹揚に頷くのだった。
* * * *
ここにきて武楽会会場は大層な盛り上がりを見せていた。
勝負の行方が神聖騎士部門に持ち越されたからである。
最初に行われた正騎士部門はレイテアに軍配が上がった。それもアルバリーク側は五組のうちかろうじて一勝上げたに留まり、惨憺たる初戦の結果に真澄は青くなった。
いきなり背水の陣だ。
他部門がどうあれ負ける気でここに来たわけではないが、それにしてもこれほど差のある勝敗がつくとは想定外である。
続く真騎士部門も全敗か。
真澄が正直に懸念を口に出すと、しかしそれはアークによって否定された。その理由は戦闘の原則が働くからだという。防御が一だとしたら、それを崩すには三倍の力が必要となるあの法則だ。
本来は防御側が有利であることを示すそれはしかし、正騎士レベルの魔力量ではよほど巧い戦術で挑まない限り、相手の豊富な魔力に単純に押し負けて当然らしい。それほどに両者の魔力量は差がある。例年、正騎士部門はレイテアが持っていくものであって、アーク曰く「ハンデみたいなもんだ」と上から目線極まりない評だ。
真澄としては半信半疑だったが、逆に真騎士部門以上の勝敗は組み合わせ次第らしい。
魔術士の射程は長い。
彼らの持つその利点は裏を返せば近接戦闘に弱いということでもある。魔術士の猛攻をうまく躱す、あるいは防ぐなどしてその懐に入り込めば、そこから先は騎士の独壇場だ。射程圏内に踏み込めるかどうかは結局のところ経験値の差であったり、術の得手不得手の相性によるものなので、「組み合わせ次第」という言い方になるのだとか。
そして事ここに到り真騎士部門は四組が終わった。
ここではアルバリークが三勝を挙げて既に勝利が確定している。残る一戦はある意味消化試合なのだが、今日の最終組には「レイテアの至宝」と名高い魔術士アナスタシア=レイテアが登場するとあって、野外に大きく設えられた会場であるにもかかわらず満員どころか立ち見も出ている。
そういった背景の中、真澄たちは関係者席に座りながら最終試合の行方を見守っていた。
既に時刻は正午を回った。午前中に楽会は終わり、楽士同士の実力は拮抗していた。残るはそこで回復を受けた騎士と魔術士が戦う武会だ。
目の前には役者が揃っている。
レイテア側は秘蔵っ子のアナスタシアだが、アルバリークは第四騎士団――他でもないアークの部下であるネストリが対峙する。騎士の中でも大柄な彼と、平素はまったく鍛えていないであろう箱入りの細い王女。体格差だけを見れば何かの間違いのようだ。
しかし、儚そうな相手は実のところ未知数である。
ネストリ自身は力のある騎士だが、同じ魔術士であるフェルデの不吉な言葉を思い起こせば自然と緊張が走る。真澄がそっと横目で見やれば、これまで以上に真剣な眼差しのアークとカスミレアズがいた。
やがて準備を整えた審判が姿を現した時、同時にそれはやってきた。
ドン、と。
盛り上がる歓声を上回る勢いで、音が、天から降ってきた。
あまりの大きさに、審判どころか競技者の二人まで空を仰いでいる。
会場そのものには防御壁が張り巡らされているらしく、音以外の実害はない。会場全体が低くどよめく中、見えない壁に巨体をぶつけていたのは大鷲のような魔獣だった。
「イグルスですね」
油断のない視線を宙に飛ばしつつ、カスミレアズが呟く。同じく見上げていたアークが眉間に皺を寄せた。
魔獣は大きく羽ばたきながら、くちばしで防御壁をつつき足の鉤爪を執拗に繰り出している。初めて見る真澄にも分かるほど、気が立っているようだった。
「これが赤の周期ってやつ?」
今朝方に話をしたばかりだ。
カラスでさえ繁殖期は人を襲う。魔獣の縄張りが広がってかつ攻撃的になるのなら、あのイグルスとやらの荒れようも不思議ではない。
ざわつく会場の中注視しているとやがて黒い光がイグルスを打ち据え、レイテアの運営から脅威は去ったとのアナウンスが流れた。あからさまな安堵の空気が広がる。だがその中でアークだけは不満げな表情を崩さなかった。
晩餐会の前にも見た顔だ。
この武楽会が絡んでから、アークは考え込むことが多くなったように思う。
「今度はなに?」
目の前では試合が始まった。
視線はそちらに向けながら頭の中では別のことを考えていそうなアークに、つい気が削がれる。真澄が窺っていると、カスミレアズまでもが視線を寄越してきた。
二人で待っていると、おもむろにアークが試合から目を離した。
「マスミの予言が当たったかもしれん」
「は?」
「抜かりないはずの護衛計画が、どうも破綻したらしい」
良い読みだった、と呆れ混じりでアークが言う。
「お前、楽士じゃなくて参謀になったらどうだ」
「ちょっと冗談やめてよ」
「それは俺の台詞だ。ったく、前線の魔術士どもは何やってんだ」
だらしねえな、と一刀両断である。
「アーク様。それは街道の部隊が突破されたと?」
平常運行の真澄とは異なり、途中に割って入ったカスミレアズの声には緊張が滲んでいた。
え、それって。
一拍遅れて真澄の思考が止まった。不穏すぎる内容に言葉が見つからない。固まっている真澄をよそに、第四の総司令官と近衛騎士長の会話が続く。
「突破されなきゃああはならんだろう。カスミレアズ、お前が防衛前線にいたとして、元宗主国の次期国王が滞在している街にイグルスの侵入を許すか?」
「……いいえ。ただ、強硬派が暴走したならあるいは、とも思いますが」
「実態として少数派の奴らが護衛計画に入り込む余地はない。穏健派も奴らの素行の悪さには目を瞑っても、武楽会となれば黙っちゃいない」
「そうでしょうか」
「レイテア上層部も言うほどボンクラじゃない。出立前に内々で停戦協定の申し出があったばかりだ。武楽会期間中だけじゃない、終了後も引き続き、な。台無しにされないよう穏健派の主力がそれぞれの防衛線で目を光らせているだろうよ。それなのにイグルスがここまで入り込むってことはつまり、前線で何かしら不都合があってるんだろう」
アークがため息をつきながら腕組みをする。その眼下では、ばら色と青色の光がひっきりなしにせめぎ合っていた。
試合は膠着状態とは言いがたい。
開戦早々からアナスタシアの怒濤の攻撃が続いており、対するネストリは防戦一方だ。それも真騎士部門の主席である彼だからこそまだ凌いでいるようなもので、次席以下の騎士であれば既に勝負はついているだろう。
しかしアークの懸念は自身の部下よりも、魔獣にあるようだった。カスミレアズは言葉をなくして固まっている。二人の会話に区切りがついたことを感じ取り、真澄は口を開いた。
「ねえアーク」
呼び掛けると黒曜石の目線が返ってくる。
「魔獣も気になるけどネストリも心配よ? なんか随分押されてるみたいだけど」
指で指し示すも、アークは静かな顔で小首を傾げるだけだった。
そして、
「結果なんざ端から決まってる。心配もへったくれもない」
「は?」
「ネストリの負けだ」
あっさりと言い切られ、逆に真澄が驚いた。
試合開始前は神経質そうに注視していた割りに、見切りが早すぎやしないか。
ところがそんな真澄の疑問が聞こえたかのようにアークは理由を述べた。
「あれだけ差があるなら後はどれだけ粘れるか、一太刀でも返せるかどうか、期待できるのはそれくらいだろう」
「差って、まさか読み取ったの?」
アークの言っているのは魔力量のことだ。さすがに真澄もそれくらいは分かるようになった。
しかし魔力量の読み取りは難しいはずである。
他でもないアーク自身が苦手だと公言していて、まして味方ならまだしもおそらく簡単には読み取られないよう鍵をかけている魔術士相手にできるものなのか。つらつらと考えていると、「それ以前の問題だ」とため息混じりの評が出た。
「あの手の大掛かりな術をたて続けに放てる時点で熾火クラスだ」
フェルデの評価は相応だった。
実際に叙任もしているかもしれん、などと呟きながらアークがどこか感心したように顎を撫でる。その視線の先では一際大きなばら色の閃光が走り、轟音と共にネストリの姿がかき消えた。
「……勝負あったな」
会場脇に設けられている運営本部から、数名が担架を持って走り出ていく。割れんばかりの歓声がどっと上がった。
秋の陽光の下、国の至宝と呼ばれる王女が控えめに手を振って観客に応えている。その所作はどこまでも淑女で優雅だった。
「あれが個人戦に出てくるか。並の騎士じゃ相手にならんな。確かに何を企んでいるんだか」
フェルデの言葉をなぞりながら楽し気にアークが呟く。
その口の端には余裕の笑みが乗っているが、横に座るカスミレアズの頬は硬く引き締まっていた。
蓋を開けてみれば真騎士部門の締めくくりはあっという間だった。
* * * *
いよいよ明日から神聖騎士部門が始まる。
時刻などの案内が流れるはずがしかし、運営から予想外に開始日変更の連絡があった。理由は会場の整備をするためで、二日間を要するという。
確かにアナスタシアの放った術で競技区画の大部分の地面が無惨な姿になっている。
傍目には疑う余地はなさそうで、特に大きな混乱もなく観客は解散を始めた。
すぐに立ち上がれば人波に揉まれる。
急がずともしっかりと屋根があり全員が座れているこの関係者席で待てばいい。暗黙の了解で見るとはなしに会場全体を眺めていると、隣のレイテア関係者席がにわかに慌ただしくなり始めた。
ばたばたと運営の人間が駆け込んでくる。
彼らは控えている魔術士たちに切羽詰まった顔で何かを伝えている。耳打ちで、次から次へと。
やがて彼らの血相が変わった。そして運営を先頭に、出場者である魔術士は全員が連れ立って会場の外へと足早に走り去っていった。
労われるべき試合終わりのアナスタシアはまだ戻っていないにもかかわらず。
どうみても緊急事態である。
これは真澄の「なにか起こるのでは」懸念が見事に的中し、アークの「前線が多分やばい」予想が当たったのではなかろうか。魔術士たちの背中が見えなくなると、自然アルバリーク陣営の視線が交錯した。
ただし全員無言である。
帰る観客の喧騒が遠のいた気がする。少しの間様子を窺っていると、その肉声だけが妙にはっきりと聞こえてきた。
定期便がイグルスの大群に襲われた、と。
ば、とアルバリークの全員が後ろを振り返る。
レイテアの運営文官が二人、真っ青な顔で通路を駆けていくところだった。