心に眠ってた想い
スパッ!!
ゴールにするどく突き刺さった。
「また入れた・・」
「すげえwww」
折れた3人は、感動していた。
しおりも、やれやれといった感じで言った。
「ほんとに2点目も取れなんて、やるじゃない」
「まさか入ってくれるとは、思ってなかったけど思い切ってやるものね」
少女は、手を前に差し出して、
「ありがとうございまいた。」
その顔は、涙をこらえているのか俯いていた。
しおりは、渋々と言った感じで、その手を握り、
「ありがとう。」
ホントにすごい戦いだった。
結果こそ、10対2でしおりの圧勝だったが、点差以上に二人の全てをぶつけたこの勝負は、とても迫力があって見ごたえがあった。
正直もうちょっと見たい気分だ。
ポンポン。
中村が、俺の肩を叩いて、言った。
「今、俺たちはいるべきじゃない。二人きりにしてやろうぜ」
「そうだな・・」
俺たち3人は、しおりと少女を二人きりにさせてあげることにした。
「佐藤しおり。今日お前と戦えてよかった」
俯いてそうつぶやく少女。
それを見ていると、いろいろと伝わってくる。
相当努力したんだな・・・
それだからこそ、敵の前で弱さを見せてしまうほど、悔しいんだろう。
「あんた名前何ていうの?」
少女は、「は・・」っと涙声で鼻で笑った後答えた。
「澤平優奈」
「澤平ね。覚えとくわ」
澤平は、涙を必死に踏ん張るよるな声で、聞いてきた。
「なんでバスケをやめたんだ?」
「対戦する前にも言ったでしょ?必要ないものだからよ」
「どうして!?」
澤平は、涙で溢れた目でこちらを睨み、声を荒げて聞いてきた。
私は、それを見て心が痛んだ。
真っ直ぐな少女の目が、私には眩しく感じた。
彼女の頭に手を置いていった。
「あんたは、よく頑張ってる。それは、今日戦って見て感じた。」
澤平は、頬に流れている涙を拭おうともせず、私の目をずっと見ていた。
その目を見てると、私まで泣きそうだった。
泣きそうな想いに打ち勝っていった。
「お前の強い想いを感じた。」
澤平は、目をそらさないで聞いている。
なので、最後にこう口にした。
「だから久しぶりに本気の勝負をして思った。私の選択は正しかったんだって事」
澤平は、私の胸倉を掴んで言った。
「部活に入れ。そして私とまた勝負してくれよ。私は、お前に負けて変わったんだ。お前のおかげで、バスケに真剣に向き合うことが出来たんだ!頼むお願いだ。」
澤平は、ボロボロと涙を流しながら、訴えてきた。
その目に嘘はない。
だからすごい辛かった。
私だって・・・
「私だって、お前みたいにバスケに夢中になってられるんならやってたいよ!!」
気づいたら、私は怒鳴っていた。
澤平は、驚いたような表情をしていた。
私は、涙が溢れそうになるのをこらえていった。
「でも私には、それより大切なものがあるんだ!だからもうバスケはやらない」
はっきりと彼女の目を見て、本音を言った。
「これは、誰かに言われたわけでもないし、そうしなきゃいけないってわけじゃない。」
ここで少しためた後言った。
「私が決めたことだ!バスケよりも家族との幸せな日常を私は、選んだんだ」
そこまで言うと、私の目からもポロポロと涙がこぼれてきた。
「そうか・・・。」
澤平は、寂しいような、悲しいような声でつぶやいた。
私の中で、いろんなものがよみがえってきて、それがどんどん涙になってあふれ出してきた。
楽しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと、悔しかったこと、それら全てが懐かしくて、次々と脳内再生され、涙がとめどなくあふれ出していく。
「お前は、やっぱりバスケが誰よりも好きなんだ。だから今私の前で、お前はそんな姿を見せているんだろ?」
涙で、くしゃくしゃになった情けない顔した澤平に言われて、少しカチンと来たが・・
「ああ・・。そうみたいね。私まだバスケが好きみたい・・・」
私たちは、敵同士のはずなのに、仲間同士のように、互いに泣きあっていた・・