花火大会
今日は、花火大会という事で、俺はしおりを誘って今花火大会に来ているわけだが・・・
とにかく人が多くて、もみくちゃになったりで、何も出来ず、とにかく人の波から逃れて、俺たちは、近くにあったベンチに座っている。
二人ともせっかくこの日のために買った浴衣だったが、人ごみの中にいたことにより、しわがすごくついてしまった・・・
俺の黒の無地の浴衣も所々しわくちゃで、とても今日から着たなんて思えない。
しおりの浴衣は、上半身の部分が白で腹から下の部分までがピンクで、シャボン玉の模様のしゃれた感じの浴衣だが、しわがあちこちついてそれが台無しになっていた。
「すごいテンション下がるんだけど」
しわをすごい気にするしおり。
俺はそれを見て、
「なんか悪いな・・」
「そういうのやめて」
しおりは、立ち上がると、
「あそこの射的丁度すいてる感じだし行くわよ」
俺は、すいているのか確認できないまま、しおりの後をついていった。
大人から子供まで、たくさんの人たちを掻き分ける。
その時、たまたま正面にいたのが、カップルだった・・・
「ケンジ~。愛してる」
「俺もだ良子」
俺は、呆然としていた。
こんな人ごみでもイチャつくのか・・・
もはや尊敬するよ・・
いろんな意味で・・・
「龍翔、何ボーっとしてるわけ?殺すわよ」
俺は、ハッとなってしおりのほうを見ると、カップル連れによっぽど腹が立ってるんだろう・・・
顔がもう人殺しを手馴れた人のような憎悪に満ちた表情。
震えてる手を見ると、きつく握り締められた拳・・・
「おい落ち着け・・・」
俺がそういうと、しおりは吹っ切れたように言った。
「やっぱああいうの見てるとイライラすんのよ」
「いやお前が暴れると警察沙汰になるからやめろよ・・・」
「無理。2人くらいやっても罪にならない気がする」
おいおい・・・目が血走りすぎて、白目になってんじゃん・・・
俺は止めようとしたが・・
「おいてめえらイチャついてんじゃねえよ。ムカつくんだよ」
しおりは怒鳴ってそういうと殴りかかった。
さっきのイチャついてたカップルは、口を開けて硬直していた。
カップルは、しおりに思い切りぶっ飛ばされた。
周りの視線がしおりのほうに向く。
俺は、自分に視線が来ないうちに逃げようとしたんだが・・・
「龍翔ー。ちょっと殴っちゃったわ。てへっ」
満面の笑顔を浮かべたしおりが、俺のほうに来てそんな事言うもんだから、俺のほうにも視線が集中する。
俺は、これはやばいと思ったので、しおりの手を掴んで逃げる。
「お前は、なんで変なところでドジるんだよwww」
俺は嘆く。
しおりは拗ねた口調で言った。
「私だけが悪いみたいに視線が集中するの嫌じゃない」
「自己中すぎるだろ」
なんとか逃げ延びた俺たち。
もう死ぬかと思うぐらい息切れしてる俺・・・
チラッとしおりを見てみると、息一つ切らしてない・・・
「化け物かお前は・・」
「あんたこそスタミナなすぎ・・」
俺が一息ついたとき、声が聞こえてくる。
「私、アンパーマンの仮面いらない。」
「お前みたいな小学生にはお似合いだろうが」
「私高校生」
俺としおりは、木の葉と葉の隙間から見える二人の男女のやり取りを呆然と眺めていた。