3.二日目
第三話です。おかしな文章等ありましたら、感想で報告していただけると幸いです。
「ねえ賢人君。賢人君は外で遊んだりしないの?」
星条とか言う女の隣の席になってから、毎日こんな調子だ。暇さえあれば、「彼女いるの?」とか「私、賢人君と友達になりたいな~」とか、とにかく話しかけてくる。
まあそんなの答える理由もないし、俺は「ああ……」とか「ふーん」とか言って適当に流していた。
だからこう聞かれた時も俺は、
「まあね……」と答えたきりだった。
すると彼女は、さらに問いただしてくる。
「どうして?他の男子みんな外に行ってるよ?賢人君暇じゃない?」
「関係無いだろ……」
俺がそう言うと、彼女はじっと俺の顔を覗きこんで、小さな声でこう言った。
「賢人君の友達って、どんな子なの?もしかしてあんまり外で遊ばな……」
彼女がここまで言った時、俺は彼女の声を遮るように怒鳴った。
「うるさい、黙れよ、何が友達だ。結局は嫌味なんだろ?お前には友達なんか居ないって言いたいんだろ?そうやって面白がってるんだろ?俺はお前らみたいに他人とつるんで、馬鹿みたいにヘラヘラ笑ってるような人間になりたくねえんだよ!」
そう叫ぶと俺は、目の前にいる彼女を殴った。周りの奴らが止めに来たけれど、構わず殴る。
「腕を押さえろ!」
誰かのそういう声が聞こえて、俺は後ろから腕を引っ張られた。肩に鈍い痛みが走る。
彼女は泣いていた。それを見ると俺はまた怒りがこみ上げてきて、今度は思いっきり彼女の胴を蹴る。彼女は椅子から落ち、床に叩きつけられた。
「何やってるんだ!」
騒ぎを聞きつけたのか、先生が野次馬の間を割って俺と彼女の前に立った。
「……ごめん、星条。」
「……いや、私こそごめんね。なんかその……傷つける様なこと言っちゃって……」
結局、野次馬の中の一人が先生に一部始終を話し、俺は罰として放課後に校内の掃除をすることになった。勿論、彼女の席と俺の席は遠く離され、彼女は窓側の席、俺は廊下側の席となった。
「せっかく近くになれたのに、残念だね。賢人君ともっと話したかったな……」
「なあ、星条。どうして俺に殴られても、同じことが言えるんだ?何が目的なんだよ。」
俺はとうとう我慢できなくなって、彼女に訊ねた。彼女はしばらく考えた後、こう言った。
「よくわかんないけど……私、賢人君を支えたいんだと思う。賢人君の強いところも弱いところも、全部支えたい。」
何言ってるんだよ、と言おうとして、俺はやめた。彼女の表情はいつにも増して真剣だった。
「私は賢人君が前までは友達とじゃれあってたことも、いつも笑ってたことも知ってるから、気になってたの。突然雰囲気が変わったから、何かあったんだと思って。」
俺は彼女を殴りたいとは思わなかった。怒りがこみ上げることもなかった。
彼女は本当に何者なのだろうか。もしかしたら、信じても良いのかもしれない。もしかしたら、彼女は俺を受け入れてくれるただ一人の存在になるのかもしれない。
俺はいつの間にか、彼女に惹かれていっていたようだ。彼女を深く知り、受け止めてほしいという思いさえ生まれていた。
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