オナニーの目覚め
お・気・に・入・り
皇新稲は超かわいい。
読み方はスメラギニイナである。
「皇」なんていう、どことなくお高くとまってワガママな雰囲気が漂っていそうな苗字ではあるが、彼女の性格は全然そんなことなくて、むしろ善意、慈愛に満ち溢れた心優しい性格をしている。
そんな彼女に心惹かれる男は数知れず、みんなあの手この手で彼女と接点を得ようとしている。
しかし見てみろ。彼女と何とかして親しくなろうとむくつけき努力を重ねている男どもの姿の無様なこと無様なこと。
チラチラと、遠巻きに彼女の一挙手一投足に気を払い、事あるごとに彼女に話しかけようと機会を伺っている様はさながらハイエナの群れのようだ。
かく言う俺も彼女と仲良くなりたいなー、なんて思ってたりする男子の一人ではあるが、
この恥ずべき願望を叶えんがため、己の品位を下げるような真似だけは絶対しない。
男はプライドが命なのだ。
その上で彼女とは健全なお付き合いをしたいと思っている。
「サトウー、起きてるかー」
授業中に寝ている生徒を起こすような口調で俺に話しかけてきたのは、我が家の隣の宅地に巣食っている妖怪、もとい幼馴染こと佐川由香里だった。今日もポニーテールを揺らして俺の機嫌を損ねてくる。
もちろん俺は起きていた。というか普通に目を開いて座っている状態なのだから寝ているわけがない。
「見てわからないか」
こんな言い方をすれば大概の女子は顔を引きつらせてたじろぐのだが、この女はいつも軽く笑うだけで、露ほどの動揺も見られない。
「そんなツンケンしなさんな、女の子に嫌われちゃうゾ」
ゾ、とかやめて欲しい。ゾッとするから。
「何の用だ?」
「用が無いと話しかけちゃダメ?」
「お前に限って言えば、そうだ」
「照れんなって~~」
うわあ、うっぜ~。
昼休みになると、この女は必ずこうして俺に話しかけてくる。
本当にいつもいつも何しにくるんだ。
取りあえず恐そうな顔をして睨みつけるが、やはり効果はない。
涼しい顔をして、俺の凶悪なレーザーのごとき視線を軽々受け止める。見つめ返してくる。
そのブラックホールのような黒い瞳に吸い込まれそうになったため、俺はあくまで戦略的に撤退することに決めた。つまり目を逸らした。
佐川由香里は目鼻立ちのスッキリとした美少女だ。例えるなら、そう、中秋の名月と玲瓏たる鈴の音......とまではいかないまでも、夏場の風鈴の音くらいの美しさはある。
そこだけは不本意ながらも認めてやろう。
当然クラスの男子にも結構人気があるのだが、俺は大っ嫌いだ。
断固としてアンチサガワニズムを唱える。
続きかきたいなー