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傘忘れ
校舎の玄関を出ると、雨は上がっていた。黒い雨雲は東の空に遠のいていた。
さめざめと泣く声はどこかへ消えていた。
僕は歩き出す。
ところどころにある水溜りは不安や迷い、僕の全てを映し出すようだった。
僕はそれらを踏み砕いて歩いていく。
パシャリ、パシャリ。
鬱屈した思いをのせて水面を音高く、割る。
そうして当てもなくさまよっているうちに川沿いの土手に出た。上ると強烈な夕日が僕を横から照らし出した。雨はいつの間にか止んでいた
遥かな稜線に夕日が沈んでいくのが見える。今日最後の輝きを放っている。
その美しさに僕は目を細める。
つぶやきが口から漏れる。
「傘、忘れちゃったなあ......」