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04 決意

◇ ◇ ◇


 なんでもいいと言ったけど、確かに言ったけれど。

 それはあれだよ、数少ない語彙を絞りだした結果の過ちだよ。たとえだよ!しかも脳内会議での話だよ!だったはずなのに。なんで。こうなっているのだ。


 「形式は一応一緒だから願書は書いといてくれよ」


 …なんで!菫ヶ丘じゃなくて!帝校の!願書が!ここに!あるんだ!?


 手元にある蛍光灯に照らされた紙を破り捨てたい気持ちをなんとか飲み込む。

 ごくりと喉が音をたてた。


 「アオ」

 「なんだ」


 「これはなんだ」

 「願書だな」


 「何言ってんの、当たり前でしょ」「お前こそなんなんだよ」


 「……で、どこの?」「人の話し聞けよ」


 馬鹿みたいなやりとりしつつ、状況把握。


 「…帝校の願書だな」

 「アオの手元にあるのは?」


 「帝校の願書だな」

 「なんで?」


 「なんでだろうな」

 「どうして?」

 「どうしてだろうな」


 段々投げやりになってきたアオを手元にあったそれではたいた。すぱーん、と良い音がなった。


 「おま、それ願書!」


 「こんなもの…っ!こんなもの破り捨ててやる…!」

 「やめてやれ!」


 アオのノリがいいのでついついお馬鹿なやりとりを繰り返した。


◇ ◇ ◇


 アオはあまりなんとも思っていないのだろう。さっきから必死にシャーペンの芯を机に立たせようとしている。わざと机を揺らしてやった。


 ぐあっ!と、隣で喚く声を聞きながら願書に視線を移す。アオは高校でやりたいことはないと言っていた。だから行く場所はどこでもいいのだろう。菫ヶ丘も大分偏差値は高いが帝校はそれ以上である。帝校に行ったら勉強についていくのは大変だろうけどそれをアオはあまり気にしていない。

 こいつ、根は真面目なのだ。真面目過ぎるといえるほど。だから学生の本分は勉強だと口に出しては言わないが頭ではしっかり考えているし、勉強するのは当たりまえ、高校はそれなりに良ければどこでもいい。そういう思考結果なんだろう。立派なようだがあえて言うならば夢がないな、こいつ。


 (…はぁ)



 私はペンを取り、願書に下書きを始めた。


 私がそこまで帝校を拒否する理由を話さなくてはいけなくなる前に覚悟を決めないと。あの人も、言っていたことだ。決められた運命には逆らえない。そう、それがすべて。


 波乱を呼ぶ学園生活はまだ始まっていない。


 しかし既に歯車は回っていた───…


◇ ◇ ◇


 「願書届けましたよ。ちゃんと手土産(・・・)を持って」

 「ありがとう。親御さんに許可は頂いてるからね、あの子たちなら来るでしょ」


 いつもと違い、満面の笑みを浮かべる自分の主を見つつ、その言葉には返答は返さなかった。逃げ道をすべて塞ぐ気で動いていたくせになにを。


 …宮乃 夜宵ね。結局彼女は自分には気付かなかった。当たり前か。


 しかし少し悲観している自分に気が付いて内側で苦笑いをした。外側には微塵も感情を出さないように。


 しかしながら自分が認めた主はそれに気が付く。


 楽しそうに笑って声をかけられ、イラッとした。


 「君、宮乃くんとあれ以前に面識あるんだっけ?」


 そのため、その問いには返さない。黙秘した時点で肯定なのだろうが余計なことを口に出して揚げ足を取られるのは勘弁だ。黙秘権を行使した。


 「緑川くん、君も行けば?」

 「は?」


 いきなり何を言いだすのやら。ことが唐突であるのだ、この主は。

 すべて思い付きなのだろう。だからこそ質が悪い。



 「教師、なれば?」



 そしてそれは悪魔の囁き。



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