屈折
「誰だあいつ!?」
戦場でまっ先に聞こえた声。
それは俺の部下の声だった。
俺こと炎の波のギルドマスター、レインガ。
俺はこの世界に来て間も無く戦争を申し込んだ。
目的は2つ。
ギルドの傘下を作っておくこと。
もう一つは俺達の名を世界に轟かせるため。
その為前回強かったというギルドに序盤から挑んだのだ。
俺達火属性の魔導士は高威力、広範囲の魔法を使える。
しかしそれらはやや単純な動きである。
要するに相手がうまく魔法を使えない序盤こそ最強である。
だが・・
本来なら目の前に敵がいる。
そしてそいつらと俺の部下たちが戦っているはずであった。
今の敵はギルド聖騎士の剣である。
少なくとも100人はいるはずであった。
だが360度どこから見ても目の前にいるのは1人。
髪は白く目は赤く、黒いコートを羽織っている。
そしてその奥にいるのが聖騎士の剣メンバーと思われる奴等。
「あいつら・・・」
完全に舐められている。
クソッ!
前回上手くいったからって調子乗りやがって!
「行け!
彼奴を灰になるまで燃やせ!」
部下の一部約300人が一斉に片手を上げた。
空には直径10メートル程の大きな火の塊。
爆炎降下の魔法。
威力は中級だが、序盤では非常に強い。
さっきも言った通り火属性の魔法は高火力の割に動作が単純。
その為このような魔法も消費魔力が少ない。
だから人一人相手でも容赦なく使える。
この魔法を300人一斉に放てば回避は不能、
威力では一溜りもない。
「「「喰らえ!!」」」
部下達が一斉に放った。
小さな太陽とも言える魔法が一気に降りかかる。
この魔法はそいつに当たった!
「ウギャー!!」
悲鳴が聞こえた。
それは一つではなかった。
「熱い熱い熱い熱い!!」
「イタイイタイ!!」
「うゲオ・・」
部下達を見ると体が溶けていく・・・
「クソっ!」
部下の誰かがそいつを切りかかりに行った。
シュッ!シュッ!シュッ!
と風が切れる音が聞こえるだけでそいつは切れない。
ボウっと音がし炎がそいつに突進していった。
だが炎はそいつの目の前でぐにゃんと曲がり、
切りかかりに行ってた部下の顔面に直撃した。
「あギャッ!」
ドサッ音と共にそいつはぶっ倒れた。
「ギガガガ!!」
部下が悲鳴を上げた。
見れば全身が炎に包まれていた。
武闘家の部下がばっとそいつを殴りかかりに行った。
部下は右手を引き
シュッと風が裂く音と共にそいつを殴った。
そいつはパンチを避けて、1歩ほど後ろに下がった。
次に俺の部下は拳に炎を包ませ殴りかかった。
身体強化の魔法だ。
威力とスピードが上がる。
だがその炎はその瞬間を狙っていたかのように部下を包み込み
やがて部下は溶けていった。
・・・誰もが唖然としていた。
中には反撃しようと炎を出す奴がいたが、そいつらはまっ先に燃え尽きた。
「クソっ
全員撤退だ!
ここは一先ず御あずけだ!」
俺が叫んだ。
全員的に背を向け逃げようとしてた。
が・・
「マスター!
逃げられません!」
これは某RPGか!?
「はあ!?
早く逃げろ!
負けるぞ!」
「違うんです!
目の前に崖が・・・」
何!?
と思って部下のところまで行った。
確かに崖があった。
しかし戦争が始まる前には崖などなかった筈だ・・
「くそ!
向こうのギルドがやったのか!?」
さあどうする!?
たった一人の敵に俺等は押されている。
誰もが恐怖を顔に出していた。
「ここまで力の差があったのか・・」
部下の誰かが呟いた。
そんなはずはない。
こちらのLvは平均70を超えている。
強さとしては此方の方が強いはずだ。
・・・だとすれば
あいつが異常なのか・・・
「全員!
全魔力で彼奴に魔法をぶつけろ!」
部下が全員炎を出した。
が、あいつはそれを待っていたかのように右手を前に突き出した。
すると炎がぐにゃぐにゃと曲がり部下全員を飲み込んだ。
部下はもう一人もいない
後ろは崖。
目の前には1人の敵。
たかが1人。
されど1人。
俺等はたった1人のそいつに全滅させられた。
そいつはさっきと同じように右手を前に突き出した。
「さあ、終わりだ。」
「くそ!」
俺は最大級の威力を持った炎を出した。
その瞬間俺は炎に包まれた・・・・
「この戦争が今で良かったな。
デスゲームと化してたら本当に死んでたよ。
お前等。」
―――――
「はい、終わらしてきたよ。」
「ありがとう御座います紫音さん・・・
でもこれって私たちの戦争だから・・」
「いいよ別に。
俺は自分の魔法を使いたかっただけだし、
それに向こうのギルドは俺が
聖騎士の剣に所属しているって思ってるだろうから、
そこんとこの心配はいらないだろうな。」
「てか兄さん誰か殴りかかりに来てたけど
大丈夫だったの?」
「結構ヒヤッとしたけど
最終的に魔法使ってくれて良かったよ。
俺の魔法人体は曲げれないからな・・」
「そういえば向こうのギルドの人たち、
撤退しなかったのはなんでですか?」
「ああ、あれは俺の魔法で目の前に崖を幻覚を作ったんだ。」
兄さんの魔法は〝空間屈折〟
これは兄さんが命名したものだが
その名の通り空間を曲げる。
正確には空間を曲げる光の壁を創る。
これを使って炎を曲げたり光を反射させて幻覚も作れる。
本人曰くこれを利用してプラズマや竜巻も創れるという。
だがこの魔法にも弱点があって、
一つは物質は直接曲げれない。
つまり動きもしない物質にこの魔法を使っても何もない。
また人間に至ってはそこに光の壁があっても何故か曲がらない。
すり抜けてしまうのだ。
もう一つは消費魔力がえげついない。
「とりあえず
聖騎士の剣はこのまま続けていけそうだな。」
「はい!
ありがとう御座います!」
・・・しまった!
俺この回何もしてない!
ヽ(´Д`)ノウワァァァン!!
戦闘書くのって難しい・・
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